226
山姥切
「……達者でな。」
門が閉まる直前
「っ、もし、もしまた、」
門が閉まる
「もし、あんたがまた審神者をするなら……また俺を、選んでくれ……っ!」
227
陸奥守
「ほな、元気での。そがあな暗い顔しんと、胸張って帰りゃえい。なぁんも心配はいらんき、大丈夫じゃ。」
門が閉まってから
「これでえい。主には、優しい世界が似合うちょる。これで、良かったんじゃ……!」
男泣き。
228
歌仙
「向こうに着いて落ち着いたら、季節を感じてみると良い。季節の変化は、きっと君に何かを与えてくれるはずだから。……では、息災で。」
門が閉まってから
「……聞いて欲しい歌が、まだたくさんあったんだけどね。」
暫く、門の前から動こうとしない。
229
審神者として働いて、十五年。あっという間におっさんの仲間入りを果たしていた俺は、ひょんなことから娘を育てる事になった。
娘と書いたが、正確には俺の子ではない。俺の、妹の子だ。妹は、二ヶ月前に他界した。元々身体の弱い奴だったから、むしろ娘を六歳になるまで育てられた事は幸運だった。
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アテクシ、恋愛感情どころかクソデカ感情をぶつけ合ってるような、しかし恋人ではない腐れ縁とかそんな関係の二人が、何かの拍子にしたくなったからという理由のみでキスしてそれ以降お互いをがっつり独占するけどやっぱり付き合ってないし、でも一線超えるまで秒読みみたいなの大好きです。
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ポイントは、付き合ってないけど独占する所です。相手の部屋に私物は置くし、休日は当たり前のように相手の時間が自分のもんになると思ってる。お互いそう思ってる。そのくせ恋人ではないのです。だから手を繋いだりはしない。でもしたくなったらキスは普通にする。離れ難いとは思ってる。
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顕現しなきゃ良かったと思ったのは、これが初めてだった。
「お願い、もう来ないで。私はもう審神者じゃないの。」
何度もそう訴えた。
けれど、あの子は聞く耳を持たなかった。涼し気な瞳はそのままに、怒ってる様子もない。しかし彼は、何度追い返そうとも私の所へと来てしまう。
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これ本当に、無理をしてはいけない。
出せるお金にも注げる時間にも使える体力にも人それぞれの限界点がある。
油田でも掘り当ててんならともかく、一般人が企業並の大盤振る舞いは不可能。出来る範囲で安全な範囲でやった方が絶対に良いし、次に繋がる。 twitter.com/1000_3/status/…
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初鍛刀の薬研は、卵焼きが好きだったらしい。それを知ったのは偶然で、ならばと思い立ったのはなんとなくだった。
が、しかし。
俺は自分の不器用さをあまり理解していなかったらしい。
「……卵って、割るの難しいんだな。」
初手の初手、卵を割る段階で俺は早々に躓いていた。
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歌って踊る江のすていじの知らせを受けた老審神者。しかし流行りの曲はどうにも耳が追いつかず、きっと自分が客では盛り上げられないだろうなと参加を諦める。そんな様子を見ていた老審神者の篭手切が一念発起し、マツケンサンバとまつりで本丸の全刀剣男士を投入して盛大な乱舞祭が始まる。
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「誰より主に楽しんでもらいたいんです。流行りの曲が無理なら、主のよく知る曲を歌って踊るまでです。」
彼はそう言うと、照れたように笑う。
「なんて……偉そうに言いましたが、まだまだ私は見習いです。」
しかし、彼のすていじを見る老審神者の目は、確かに輝いていた。
(プロフェ〇ショナル風)
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拝啓、主殿
こうして改まって手紙を書くのはなんとも気恥しいが、どうか読んで欲しい。
君は、俺達を人と混同していないだろうか。俺達は人の身を得てはいるが、人ではない。骨が折れようと腕がもげようと痛みはあれど手入れで全てなかった事になる。
だから、たかだか中傷で引き返すな。
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私が審神者になったのは、十五の春。中学を卒業してすぐだった。当時はまだ高校へ行かずに就職する人も多かったけど、それでも審神者になれる人なんてそう多くはなくて、近所でも随分と大きな話題になった事を覚えてる。
初期刀は加州。初鍛刀は前田だった。
239
はじめてのおつかいに挑戦する審神者の子(5)、生まれてからずっとそばに居た長谷部、堀川と初めて離れる事になる。開始早々ダッシュを決めて転び、二振りを泣きながら呼ぶその声に耐えられるのか。何を買うか忘れて泣いてしまう背中に耐えられるのか。本丸を巻き込んだ一日が、今、始まる。
240
幼くして死んだ審神者、賽の河原で石積みをする。
だが、積んでも積んでも、あと少しという所で鬼が石を蹴飛ばしていく。抵抗したくとも、なかなかどうして非力な様ではどうにもならぬ。えんえん泣きながら、今日も一つ積み、二つ積み、終わりの見えぬ作業をする。
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学生時代に青春を全部置いてきたと笑う老審神者。その少し寂しそうな顔を見て、みんなで学生時代をやってみようと考える刀達。
身の丈の大きなものは先生を、身の丈の小さなものは各々に合う生徒役。一番広い大広間に机を運んで、黒板は万屋から借りてきた。席順を決めて、日直なるものも決めた。
242
人は老いる。
刀剣男士は変わらない。
人は心変わりする。
刀剣男士は変わらない。
ある本丸に、とても純粋な刀剣男士が居た。彼は素直だった。素直に、人である審神者を大切にしていた。審神者が大好きだったのだ。
だから、彼は審神者の願いを叶えたかった。
「ずうっと一緒に居たい」
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「私、あなたと番えるのなら、虫になったって良い。」
審神者のその言葉に、刀は静かに笑うだけだった。実際、審神者の言葉は本心でもあり、僅かな冗談でもあった。虫になるなぞ、誰も信じてはいない。
だから言えたのだ。このような馬鹿げた言葉を。
244
「ねえ大般若、今日は何をしてるの?」
審神者は毎日、そう尋ねる。
「そうだなぁ、今日は空でも飛んでみようか。」
そうすると、大般若はいつもそんな冗談を返してきた。
あんまりにも普通のトーンで言うから、審神者はそれがおかしくて笑ってしまうのだ。
「ふふっ、嘘ばっかり。」
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刀剣男士の中で一番少食なの誰かな……私の中では江雪左文字なんだけど、どうかな……あいつお小夜から貰った柿を二時間かけて食べてそうですらあるんだけど……。
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これは、とある本丸の話である。
その本丸の近侍は、長い事一期一振が務めている。初期刀である陸奥守は事務仕事を好まず、初期刀の愛染も同様の上最近は夜戦に出ずっぱり。その後顕現した鯰尾、獅子王、和泉守も近侍仕事より体を動かす方が良いと主張した結果であった。
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マイナーなら、毎日書いて数を増やせばいいのよ。
毎日、書いて、増やせば、良いのよ。
一年で多分300は増えるわよ。
私はそうした。
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これはある一人の審神者の、いや、一人の母親の話である。
その人には、一人の子どもが居た。審神者として生きる女性にとって、結婚と出産は容易な覚悟では出来ない。なんせ、普通の形では家庭に入れないのだ。それでもその人は結婚をし、子どもを成した。三十代半ばの事である。
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これは、とある小さな審神者ちゃんの話である。
審神者ちゃんの本丸には、沢山のレアな刀と、少しの普通の刀が居る。みんなみんな、審神者ちゃんの大切な刀達だ。審神者ちゃんは、この凄い刀達が大好きだった。
けれど、最近少しだけ、大好きに差が出来てしまっている。
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#twstプラス
帰れなかった監督生。賢者の島で社会人として働き始めたある日唐突に、自分はいずれ誰にも思い出されなくなる日が来るのかと思うようになり、寂しさが沸き上がる。現に、あんなに仲の良かった同学年達からも、最近では年に一度義理のようなメッセージしか来なくなった。