2011年の福島原発事故によって福島県民に健康影響がおきたかの調査がなされてきました(県民健康調査).事故後10年以上がたって,妊産婦や子どもについてはまったく影響がなかったことが結論づけられました.現在焦点になっているのが,事故当時20歳未満だったこどもたちの甲状腺への影響です.
甲状腺調査は現在5巡目にはいって,これまでに悪性ないしは悪性疑いが250名以上みつかっています.しかし今年4月にだされたUNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)の最終報告書では,福島ではチェルノブイリのように多数の放射線誘発甲状腺がんが発生するとは考えられないと結論されました
福島県の住民の甲状腺吸収線量はチェルノブイリ事故後の線量より大幅に低いためです.また無症状者にたいして,超音波による(高精度)スクリーニングをおこなうことは,過剰診断によるデメリットをまねく可能性が高いのでやるべきでないと、現行の甲状腺調査を間接的に批判しています。
最後にUNSCEARとおなじ見解にたちますが,甲状腺調査でみつかる「甲状腺がん」は,甲状腺のなかに一生そのまま存在しているもので,とくに悪さをするものではない.超音波スクリーニングによってそれをみつけだすのは「過剰診断」であり,外科的手術をするのはむしろ「過剰治療」となります.
検診をうけることはむしろデメリットを引きおこすため,甲状腺調査はここで終了とすべきであるという考えです.少数派の委員の意見であり,わたしもこの立場にたちます.おおくのかたに福島県県民健康調査について関心をもっていただき,甲状腺調査の問題点についてご理解いただければと願っています.
本日の押谷教授の講演でいちばんおもしろかった話.米英はPCRだけで行動制限を積極的に行わず,コロナ政策は大失敗でした.その高い死亡率を日本人口にあてはめると40万人弱になります.これは20年4月に発表された「行動制限なしなら42万人死亡」にせまる数字で,西浦先生の予言がまさに証明されました
西浦博先生は正しかったのです.当時ショッキングなこの数字に社会はおおきな衝撃をうけ,緊急事態宣言や接触制限導入のきっかけになりました.同時に多くの識者などが反発し「青年将校」「マッドサイエンティスト」といった罵詈雑言をあびせ,反専門家の世論を扇動したのも記憶にあたらしいところです
アジア太平洋では日本の死亡率は一時期最上位でしたが,今では香港,濠州,台湾,韓国,ニュージーランドが上で,日本より下はシンガポールだけです(最下位の中国は今後爆発的増加が予想される).PCRスクリーニングせず接触制限を行いつつワクチン接種を進めた日本の政策は概ね正しかったといえます.
もうひとつ印象に残ったのは,これまでなんとか堰きとめてきたダムがまさに決壊しかかっている中国の話です.本来ならばロックダウンでかせいだ時間で,やらなければならなかったワクチン接種や医療機関の整備をおこたってきたため,2-3か月後には数十万から数百万人のコロナ死者をだすのではないかと.
中国ではいま爆発的にコロナが拡大しているようですが,政府がすでに実数把握を放棄し状況が不明です.ワクチン接種率が低く医療体制も貧弱な地域が多いため,悲惨な事態になることが予測されます.影響は中国国内にとどまらず,多数の感染者が流入して,日本もそれにまきこまれるおそれがあります.
ワクチンの有効性はまちがいなく高いです。いまは第8波のピークなので、人口1億人以上の日本の感染者数は一時的に多くみえますが、人口あたりの累積死亡率は米英の7分の1以下で、アジア太平洋でもシンガポールとならんで最低クラスです。これはおもにワクチン接種率の高さによるものと考えられます。 twitter.com/NAdGShMeDGn4hz…
マスクをしているのは世界で日本だけとか、5類にすれば医療崩壊しないとか、PCRを全員にすれば感染はおさまるとか、政治家というのはツイッターでよくみる浅はかな意見のレベルで政策を決めているんだなあ。 yomiuri.co.jp/politics/20230…
あのとき政府も専門家もだいじょうぶと呼びかけたはずです。政府のいうことだから、御用学者のいうことだからと、「自主的に」避難されたのでしょう。結果的に健康被害はなかった。そのことの振り返りがまったくなく、小学生あいてにただ脅しを繰り返しているわけです。 kobe-np.co.jp/news/hanshin/2…
韓国で甲状腺がん検診がはじまって発見数が15倍になったのに、死亡率はまったくかわらなかったというお話。すなわち過剰診断です。「どんながんも早期発見・早期治療が望ましい」と信じるひとが多いですが、それはあきらかなまちがいです。甲状腺がん検診はやってはいけない。synodos.jp/fukushima-repo…
BSE「全頭検査」を覚えていますか? 一般に「狂牛病」の名で知られた牛海綿状脳症(BSE)の騒ぎが2000年代にあったことを覚えていますか? BSEを発症した牛を経口摂取した英国の人間が,異常プリオンにおかされて死亡というニュースがきっかけで,世界的にパニックをひきおこしたできごとでした.
結局のところ日本人でBSEを発症したのはひとりだけで,それも英国滞在歴が長く,そのあいだに感染したと推定されたかただけでした.世界で唯一,日本だけがおこなった非科学的な全頭検査は,国民自身におおきな損失をあたえただけでなく,米国など国際的にも大きな摩擦を引きおこす結果になりました.
あれっ,ここまでお読みになってなにか思い浮かべませんか? いつもおなじことを繰りかえしますね.福島県民甲状腺調査もそう.新型コロナのPCR全員検査もそうです.科学的にまったく根拠はないのに,国民やメディアはパニックになって安全ではなく安心を求め,「全員検査」をはじめようとするのです.
名古屋市大の鈴木貞夫教授が,世田谷や愛知,広島でおこなわれた大規模PCR事業の失敗を総括しています.日本公衆衛生学会「新型コロナウイルス感染症対応記録」263ページより. jpha.or.jp/sub/topics/202…
福島原発事故後に8年かけた調査で、母子にはなにも影響がなかったことが判明しました。全国紙に記事にしてほしいとお願いしたところ、デスクのひとに「影響があった」ならば一面トップにするが、「影響がなかった」にはニュースバリューがないと言われました。このどこに「育てる」要素がありますか? twitter.com/yoitateiwa/sta…
朝起きたら炎上していてびっくり.現場の記者さんたちの名誉のために記しますが,それでも押しきって小さいけど記事にしてくれました.デスクの世代は,反権威に反科学のイデオロギーが結びつき,ワクチン,薬害,被爆,最近では全員PCRなど非科学的な誤りが目立ちます.だから未来には希望はあります. twitter.com/junmurot/statu…
「福島原発事故による健康害問題」とはなにを指しているのでしょうか? 原発事故による直接死亡は存在していません.多くはさまざまな形の避難生活によっておこった間接死亡でした.そこには報道による影響も見すごせません.「非愛国的」だからではなく「事実ではない」からわたしは批判しています. twitter.com/aokiaoki1111/s…
夜中の救急搬送,緊急帝切,出血で寝不足の目に「amazonでお産」という字が飛びこんで,とうとうお坊さんのつぎに,医者助産師の宅配サービスがはじまるんだなと思ってしまった.
主観的なリスク、すなわち「不安」というやつがいちばんやっかいなんですね。たとえば遺伝子組換え作物(大豆やトウモロコシなど)について千本の文献をレビューした結果があり、健康や環境に害を与えたというエビデンスはゼロでした。それでも遺伝子組換え食品はなんとなくイヤという思い込みがあります
専門家はほぼ全員が遺伝子組換え食品は安全と考えていますが,一般市民ではその割合は37%という調査結果があります.これはあきらかにリスク認知の問題です.科学的な客観リスクと,一般市民の思う主観リスクのあいだにおおきな乖離があり,いくら専門家が科学的な説明をしても通じないという問題です.
これは福島原発事故後におきていることにも共通していて,たとえば処理水放出が科学的にまったく問題なくても,それに主観的に納得しないひとがいます.コロナパンデミックで無症状のひと全員にPCRをおこなうことが医学的に無意味と説明しても,不安だから検査をさせよと主張するのもその裏返しです.