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今から考えるとこれら学者叩きの動きは、まるで初めから社会の分断とデマの固定化を意識的に目指していたかのようである。放射線問題で、科学者・専門家が萎縮してしまうと、社会はその問題に対応する専門的能力を失う。全ての専門家に敵意と不信をもつことは、人々が自らの右腕をもぐ作業に等しい。
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昨日の記事で研究の歴史を紹介したが、(もう一人の受賞者アリソンが研究した)CTLA-4を遺伝子レベルで阻害すると、全身に自己免疫炎症が起きてマウスは心筋炎で死亡する。それゆえCTLA-4抗体を臨床応用するにあたって第一に心配されたのが、自己免疫炎症の副作用だった。
news.yahoo.co.jp/byline/onomasa…
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匿名オンライン調査による論文というトンデモ研究に頼る反ワクチン活動(小野昌弘) - Y!ニュース news.yahoo.co.jp/byline/onomasa…
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2006年にCTLA-4抗体の臨床試験の第一報を震える気持ちで見た記憶がある。相当数の患者に自己免疫反応が誘導され、その反応があった患者の一部で、がん免疫反応が強化されて抗腫瘍効果が認められた。マウスの実験で予想されていた通りである。身を切らせて骨を断つ新治療が成立した瞬間である。
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自己免疫炎症はどの臓器に起きても深刻だが心臓に起きると速やかに致死になりえる。それでも、転移した悪性黒色腫(メラノーマ)のような他に打つ手が全くない癌のためならば、「身を切らせて骨を断つ」つもりで適応が許されるだろうという理解でCTLA4抗体の臨床試験がはじまった。2003年開始
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抗PD-1抗体はCTLA-4抗体より副作用の頻度がやや少ないが、がん免疫と自己免疫がセットなのは人間の免疫系の特質。この危険性を踏まえたうえで、臨床研究者が尽力し、免疫チェックポイント阻害薬という新治療法がどのようながんの種類・患者の状態にプラスになるかを慎重に選んで標準治療を確立してきた
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放射線のデマ問題は気付いてはいたが、あまりに荒唐無稽なデマは自然消退するとタカをくくり、私自身も放ってしまっていた。実際どこまでがデマでどこからが科学で未解明であるかの境に、漠然と気づく人は増えているはず。
しかし反省している。目撃したのに証人にならないのは罪深いことなのだから。
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STAP細胞は実際には通常のES細胞由来であったことをゲノム解析で証明した論文と、複数研究グループの追試によりSTAP現象の存在を否定する論文がNatureに掲載された。STAP論文での主張は全て否定され、科学界として区切りがついた twitter.com/NatureNews/sta…
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ちなみに科学者の盗癖・モラルの底抜けは、特に日本で酷い。私自身、様々な形で研究を盗用された経験があるが、犯人は全て日本人。日英の研究キャリアがほぼ同年数なので、これは残念ながら日本の研究者に質の悪い人が多いことを示す。米国にもある話だが、いまや日本のほうがモラルは低いのでは。