暇十朗#140字小説(@himajuro)さんの人気ツイート(リツイート順)

『おもしれーとかつまらないとか』 #140字小説 #140字ss ※この話は創作です。
「文房具にコンパスってあるだろ。小学生の頃、あれを両方とも針に改造されたことがあってさ」技術力が必要なイタズラされてるな。時間かかるだろうに。「円は引けないし、犯人もわからないし、途方にくれてたら隣の席の女子が貸してくれたんだよ」女神じゃん。「両方とも鉛筆のコンパス」犯人じゃん。
「プロデューサーとかマスターとか、ソシャゲの主人公が務めそうな役職ってもうネタ切れしてるよな」 キャラに呼ばれても違和感なく、加えて特別感のある名称。指揮官や先生は既にあるよなあ。唸る俺の横で友人が呟く。 「……教祖?」 「ログインボーナスが笑えなくなるし、金を払うのは俺らじゃん」
「え、元ヤンなんすか」ジムでの世間話中、驚いた俺に先輩が頷く。「敵対してたチームの総長をぶん殴りたくて、ボクシング始めたんだがよ」先輩は照れたように笑った。「これが楽しくてなぁ。リング以外じゃ、殴りたくなくなっちまった」人に歴史あり、か。良い話だ。「仕方ねえからバイクで轢いたよ」
『もう死にたい』という小さなメモが、図書室の本に挟まっていた。不穏な文章の下には名前も書いてある。どこか既視感のある名前だが、紙は随分と色褪せ古い。昔の学生のものだろう。「作業に集中!」司書教諭の一喝で我に帰る。元気なおばさんだなと一瞥し、名札を見、メモを見、もう一度名札を見た。
魔法使いの学校に入って最初の授業は健康魔法についてだった。「いやね、わかるよ君たちの落胆も。もっとカッコいい魔法を覚えたいんでしょ。でも健康魔法はなによりも重要だから。動かずなんでもできるようになるとさ、利便性と引き換えに死が迫るのよね」ほぼ球体の先生がふわふわと浮きながら言う。
「それではカットしていきますけど、とっても豊かな黒髪ですね!お仕事はなにをされてるんですか?」 「ええと、映像系?ですかね」 「テレビ出る感じの?」 「はい」 「やっぱり!色白でお綺麗ですし、もしかして芸能人さんかなって!」 「ああいえ、テレビに出るというか、テレビから出る感じです」
大金持ちになったものの、正直やることがない。物欲も薄い。だからなんとなく、家の地下に『漫画とかで奴隷がグルグル回す棒のやつ』を作った。回すと地下室の電球が点く。これがまさかの大ウケ。遊びに来るとみんな大喜びで回している。「やっぱ大金持ちの家ってこういうのあるんだな!」ないと思う。
「犯人の犯したミス。それは被害者である田中さんの身体を見れば一目でわかります。──そう、田中さんはマッチョだったんです。この彫像のような腹筋に包丁など刺さるわけがない。しかし現に田中さんは亡くなっている。いったいなぜか?──あまりにも簡単な話ですよ。犯人もまたマッチョだからです」
『美男×美女』 #140字小説 #140文字小説 #140字ss ※この話は創作です。
警察に任せるべきだった。探偵の胸に後悔が押し寄せる。村に伝わる奇妙な手鞠歌、謎を匂わせ消える住人たち、狐のお面を付けた黒衣の男。まさかこの三つに繋がりがなく、それぞれ別個の問題だったとは。 村起こしの為に歌を捏造するな。 ただの旅行を意味深に言うな。 マスク代わりにお面をかぶるな。
「今回は世界に一個しかないこちらの卵を使って、美味しい料理を作っていきたいと思います」 「あまりにも希少すぎる」 「まずは醤油と赤ワインを8対8の割合で混ぜ合わせた液に」 「つまり1対1」 「卵の黄身を三ヶ月ほど漬け込みます」 「長いなあ」 「既に漬けておいたものがこちらです」 「二個目」
ついに人間のほとんどから仕事を奪うAIが完成した。「私は幼い頃より働くことが大嫌いでした。だから10年だけ頑張って、このAIを創り上げたのです。さあ、新たな時代を迎えましょう」開発者の言葉通り世界は一変、遊び呆けるだけの人生に人々は歓喜した。尚、開発者はメンテナンス等で今も働いている。
『レンタル父の仇』を始めたら思いの外ウケた。基本的には依頼者の行動範囲を事前に聞き、その周辺を厳つい格好でうろつくだけだ。私を見つけた依頼者たちは楽しそうに「父の仇!」と叫んでくる。そばの人間が「復讐はなにも生まない!」と止めることも多い。「あの日のガキか」と返すのも大事な仕事。
「見ろよあのカップル。女の方はめっちゃ美人なのに、男がパッとしなさすぎじゃね」「ホントだ」喫茶店で聞こえてきた声に、俺は内心でムッとする。たしかに彼女とは釣り合ってないけど、お前らに関係ないだろ。このバカ「内面がすごい魅力的なんだろうな」「間違いない」バカしい世界に平和と幸福を。
肝試しをしてから肩が重い。ときおり奇声のような笑い声も聞こえる。「……8人憑いてますね」有名な霊媒師に助けを求めると、冷静にそう伝えられた。まさか私は死ぬのだろうか。 「大丈夫。貴方はただの会場です」 会場。 「合コンしてます」 合コン。 「王様ゲームで盛り上がってます」 王様ゲーム。
幼い頃、未来の俺と夢で話したことがある。「いいか?小遣いは全部カードの購入に使え。そして開けずに綺麗な状態で保管しろ」言葉通りに動いた結果、十年後にカードは小遣いの何十倍もの金となった。ただ、心は満たされない。その日の夜、夢で幼い俺と会った。「友達とカードで遊んどけ。今を楽しめ」
私が使えたのは『他者の身体を操る』魔法だけ。それもほんの数秒、一部を軽く動かす程度のものだ。しかし魔女は存在するだけで罪らしく、私は火炙りの刑に処された。赦せない。赦せるわけがない。その傲慢が自らを滅ぼすと知れ。見物する村人たちの前で、村長の喉が動く。『魔女はまだいるぞ。探せ!』
華々しい都会のキャンパスライフ、昼はお洒落な友達と遊んで、夜は仲良くなったサークルの男の子と二人きりでディナー。私はいま、ずっと憧れてきた夢のシチュエーションを体験しているのだ。頬の火照りを感じながらぽそりと呟く。 「終電、なくなっちゃったね……」 「まだ20時だろ。東京を舐めるな」
「『三回見たら死ぬ絵』って知ってるか?」海外のナントカって画家が描いたやつか。たまにネットで話題になるよな。信じてはいないけど、不気味だなとは思うよ。「そうそう。あれじゃ効率が悪いなって昔から思っててさ」……効率?「なので、あの絵でスロットマシンを製作してみました」即死を狙うな。
「田中?やめた方がいいよあいつは。ろくでもない男だからね」 「えー?お洒落だしロマンチストで格好いいじゃない。気になるわ」 「ないない。だって世界を花で満たしたいとか真面目な顔で言うんだよ?」 「え、素敵!私も花は大好きなの!」 「どこを歩いても花を踏めるからって」 「唾棄すべき悪」
勇者以外は抜けない聖剣。前勇者が突き刺してから約百年、定期的に試しの場が用意されるも、成功者は皆無。汗が滲む手で、俺は柄を掴んだ。「マジか」ゆるっゆる。赤ん坊でも抜けるぐらい、ゆるっゆる。そりゃそうか。前勇者の末路があれじゃ、抜きたい奴なんていないよな。俺はそっと奥に押し込んだ。
興味のない方は知らなくても当然だが、昨今のカメラには『霊の自動消去機能』が搭載されている。素人でも精細な写真が撮れる現代と霊の相性は非常に悪く、この機能がなくては発狂する者も後を絶たなかっただろう。心霊写真は技術者たちの努力によって滅んだのである。 (民霊書房刊『霊を解体す』より)
幼い頃に『大きくなったら結婚しよう』と約束した女の子を探している。名前は忘れて顔も朧気、そもそも俺は既婚者だが、思い出してからは気になって仕方ないのだ。「好きにすれば。今さら約束なんて、とは思うけど」妻はそう言って呆れていた。その耳が赤い理由に気づいたのは、それから少し先のこと。
恵まれた体格に並外れた運動神経。各界から『何のスポーツでも大成する』と絶賛された少年は、期待通り複数の競技で偉大な記録を打ち立てた。それから数十年後、老いた彼に記者が問う。「貴方の最も幸福だった瞬間はいつですか」彼は小さく笑って「こっそり描いた絵が小さな賞を貰ったとき」と答えた。