暇十朗#140字小説(@himajuro)さんの人気ツイート(リツイート順)

意中の彼から突然LINEがきた。 『今夜はとても月が綺麗だね』 これは、どっちだ……?無知なだけか、それとも脈があるのか。彼は夏目漱石を知らない気がする。だけど、もしもそういう意味だとしたら大チャンスだ。難しい顔で唸っていると、またスマホが鳴った。 『By 夏目龍之介』 無知で脈があった。
『私に会いたくば強くなれ』 そう言い残して家族を捨てた父に復讐する為、俺は地下格闘技場で戦い続けてきた。今日の相手は300戦無敗、正体不明の絶対王者。この日を俺が何年待ったことか。 「よう。クソ親父」 殺意を込めて王者を睨み付ける。 「よくぞ来た。我が息子よ」 真横でレフェリーが答えた。
とある絶滅種の生存が確認されたと聞きつけ、私はすぐに某県の山中に飛んだ。「私も目を疑いました。なにせ十年以上見ていませんでしたから」発見者から事情を聞いていたそのとき、遠くの茂みががさりと揺れた。現れたのは特徴的な角、謎の黄色い服。まさか本当に生きていたなんて。「地デジカだ……」
私はファンタジー小説を投稿しているのだが、あまり反応がよくない。故郷が燃えたり、酷い迫害を受けたり、主人公に辛い試練を与えすぎているのが原因だろうか。四苦八苦していると、なんとコメントがついた。うきうきしながら見に行く。『貴方は辛い人生を送ってきたのですね……』自叙伝じゃねえわ。
「お前んとこ、兄妹仲いいよな。『兄さん』って呼ばれてるやつ初めて見た」俺の素朴な感想に友人は苦笑する。「いろいろあってね。呼び方も最初は『にぃに』から始まり、『お兄ちゃん』『兄貴』『お前』『ゴミ』『我が神』を経てようやく『兄さん』に落ち着いたところで」反抗期のあとになにがあった。
「今の若い子たちはゲーム実況なんて見て面白いのか?お父さんは好きだけども」飲んでいたお茶を吹く。聞き間違いだよな。「親父、ゲーム実況好きなの?」「は?昔から見てるだろ」不思議そうにしながら、親父はテレビのチャンネルを変えた。『先手、7六歩。堅実な立ち上がりです』将棋中継が映った。
午前六時半。けたたましい悲鳴で俺は目を覚ました。かつてこの部屋で亡くなった女性の声とのことで、どういう理屈か入居者にしか聞こえないらしい。俺は欠伸をしながら起き上がると、出勤の準備を始める。「明日は休みなんで9時半頃にお願いします」照明が二回点滅した。了承の合図だ。本当に助かる。
「お母さんもな、昔は美人だったんだよ」お猪口を片手に、しみじみと親父が呟く。既にかなり酔いが回っているらしい。お袋がこの場にいなくて本当によかった。げんなりしながら俺は釘を刺す。「その話はもういいから。それ以上は絶対にやめろよ」「今は美の女神だけど」「やめろって言ったじゃん……」
裏路地に倒れた仲間を発見。治療に入ろうとする私を、血塗れの手が止めた。「俺はもうダメだ……最期に伝えたいことがあ」「黙れ」無視して手当てを始める。 「なんで喋らせてあげないんですか!」 うるさいな。部下に説明する時間も惜しい。長話できそうなやつは、全速力で処置すれば間に合うんだよ。
コンビニでバイト中、着物にちょんまげの男がすごい勢いで詰め寄ってきた。「つ、つかぬことをお聞きする!今はいったい何年でござるか?」なんだこいつ。なにかの罰ゲームだろうか。「2022年ですが」それを聞いた男は崩れ落ちる。迫真だけど、まさか本物の侍? 「に、二百年前だと……」 未来人……?
「『豆腐の角に頭をぶつけて死ね』って言葉あるじゃん。俺さ、あれをずっと投げつけるときの決め台詞だと勘違いしてて」 「豆腐を?」 「豆腐を。で、実際に叫びながら投げてみたんだけど」 「叫びながら?」 「叫びながら」 「投げたの?」 「投げた。今は後処理に困ってる」 「豆腐の?」 「死体の」
「物語の中盤でDNA鑑定をするんだけど、そこで初めて主人公と妹に血の繋がりがないとわかるんだよ」「義理の妹だったってことね」オススメらしい漫画のストーリーを力説する友人。ラブコメだとありがちだよな、義妹設定。「で、実は主人公のDNA配列が人間ではありえないっていう」「あ、ホラーなの?」
歴史上の偉人を召喚し、戦わせ合う魔術の戦争。名高い英雄が次々と現れる中、ついに俺も召喚に成功した。「君が私の主人か?」魔方陣から出てきたのは凄く普通な人。武将とかではなさそうだし、学者や芸術家にも見えない。「『初めてナマコを食べた人』だ。よろしく頼む」初めてナマコを食べた人……?
古い霊峰に住む竜は、世話係として遣わされた少女に問いかける。「私が怖くないのか」少女は震え声で「はい」と答えた。なんとわかりやすい嘘か。もし役立たずなら、寄越した村の連中ごと灰にしてやる。そう決めてから一年。働く少女に、竜は再び問いかける。「私が怖」「気が散るので黙ってて」はい。
『おいたわしや山神様』 #140字小説 #140字ss ※この話は創作です。
「俺も高校のとき、どっちが先に恋人作るかで幼馴染みと勝負したなぁ」学園ドラマを見ながら呟くと、娘から「興味ない」とツッコミが来る。我が子ながら手厳しい。「……お父さん勝ったの」「気になるんじゃん」「うっさい」苦笑しつつちらりと台所を見る。後ろ姿だが、妻の耳は真っ赤だ。「引き分け」
友人のアパートへ遊びにいくと、引っ越しの相談をされた。正直この部屋のなにが不満なのかまるでわからない。立地もいいし、家賃も安い。それにさっき見かけたが、隣室は美人な女性だった。男子大学生の一人暮らしには理想的すぎるだろ。しかし、友人は首を横に振る。 「隣、空き部屋のはずなんだよ」
散歩中、誰かの財布が落ちているのを見つけた。途端に頭の中で二つの影が現れる。 「私は天使です。この財布は近隣の交番に届けましょう!」 それが人として一番正しい選択だよな。さすがは天使。 「俺はもう一人のお前だ」 悪魔として出てこいよ。 「燃やして遊ぼうぜ!」 悪魔でもそこまでしねえよ。
小さいとき、夢は世界征服だと言ったら笑われた。大学時代、願望は世界征服だと話したら苦笑された。企業した頃、目標は世界征服だと語ったら嘲笑された。それから四十年、すべての準備は整った。会見に詰めかけた記者たちへ告げる。 「これより世界征服を始めます」 音の失せた会見場で、私は笑った。
「この前、凄い長髪のお客様が来てさ。『諸事情で短くしたい』って言うからサイドを刈り上げたら、右のこめかみに『殺』ってタトゥーが入ってて。ビビりながら左も刈り上げたんだけど、そしたら今度は『不』って彫られてて。なんだ『不殺』かってホッとしちゃったよ」 なんにせよカタギではなくない?
『身体を強化する能力』を持つ父と、 『なにとでも会話できる能力』を持つ母の間に産まれた俺は『自分の身体と会話できる能力』を備えていた。若い頃はポンコツ能力とやさぐれたが、『脳は海馬より伝達。洗剤を買い忘れていますよ』『御主人!肝臓が疲労で号泣してます!』歳を取ると使い勝手がいい。
「実はね。あなたと私たちは血が繋がってないの」両親は大事な話があると切り出したが、そのことはとっくに気づいていた。俺だけツノ生えてるし。最近は火も吹けるし。「俺の本当の親ってなに?龍とか?」「いや普通に人間。亡くなった友人夫婦から託された。『なんで龍っぽく育つのか』が今日の議題」
屋敷に泥棒が入ったと女中から連絡を受けた。仕事を切り上げ帰ると、蒐集していた骨董品が何点かなくなっている。「犯人は目が利く人間のようで、高価なものばかり盗っていると警察の方が……」なるほど、選別したのか。そうかそうか。「あの、旦那様……?」不謹慎にも頬が緩む。自作の掛け軸がない。
「聞いたぜタナカ。病気のファンを勇気づける為、今日の試合でホームランを約束したんだろ」ボブの言葉に俺は笑顔で頷く。「え?彼女との結婚がかかってるんじゃないの?」「俺はボスに賃上げ交渉する為って聞いたけど」集まってきたチームメイトに、俺は親指を立てる。「どうせ打つから全部約束した」