暇十朗#140字小説(@himajuro)さんの人気ツイート(新しい順)

「今回は世界に一個しかないこちらの卵を使って、美味しい料理を作っていきたいと思います」 「あまりにも希少すぎる」 「まずは醤油と赤ワインを8対8の割合で混ぜ合わせた液に」 「つまり1対1」 「卵の黄身を三ヶ月ほど漬け込みます」 「長いなあ」 「既に漬けておいたものがこちらです」 「二個目」
なんと妻の前職が魔女だった。「もう200年ぐらい前の話よ。薬局に客を取られたから廃業したの」なんてしれっと言う。そういえば彼女と結婚してから体調不良になったことが一度もない。まさか僕にもなにか薬を盛っているのか?と訊ねると、「180年も生きてる自分を疑問に思わなかった?」と呆れられた。
屋敷に泥棒が入ったと女中から連絡を受けた。仕事を切り上げ帰ると、蒐集していた骨董品が何点かなくなっている。「犯人は目が利く人間のようで、高価なものばかり盗っていると警察の方が……」なるほど、選別したのか。そうかそうか。「あの、旦那様……?」不謹慎にも頬が緩む。自作の掛け軸がない。
『心霊スポットに100人のマッチョを投入し、カラオケ大会を行ってみた』という企画を撮った。まさか15時間以上もかかるとは思わなかったが。編集作業がまったく終わらない。「……ん?」都合8回目の『お願いマッスル』を聴いた辺りで違和感に気づく。どういうことだ。何回数えても力こぶが202個ある。
「田中?やめた方がいいよあいつは。ろくでもない男だからね」 「えー?お洒落だしロマンチストで格好いいじゃない。気になるわ」 「ないない。だって世界を花で満たしたいとか真面目な顔で言うんだよ?」 「え、素敵!私も花は大好きなの!」 「どこを歩いても花を踏めるからって」 「唾棄すべき悪」
「物語の中盤でDNA鑑定をするんだけど、そこで初めて主人公と妹に血の繋がりがないとわかるんだよ」「義理の妹だったってことね」オススメらしい漫画のストーリーを力説する友人。ラブコメだとありがちだよな、義妹設定。「で、実は主人公のDNA配列が人間ではありえないっていう」「あ、ホラーなの?」
魔法使いの学校に入って最初の授業は健康魔法についてだった。「いやね、わかるよ君たちの落胆も。もっとカッコいい魔法を覚えたいんでしょ。でも健康魔法はなによりも重要だから。動かずなんでもできるようになるとさ、利便性と引き換えに死が迫るのよね」ほぼ球体の先生がふわふわと浮きながら言う。
『身体を強化する能力』を持つ父と、 『なにとでも会話できる能力』を持つ母の間に産まれた俺は『自分の身体と会話できる能力』を備えていた。若い頃はポンコツ能力とやさぐれたが、『脳は海馬より伝達。洗剤を買い忘れていますよ』『御主人!肝臓が疲労で号泣してます!』歳を取ると使い勝手がいい。
「『豆腐の角に頭をぶつけて死ね』って言葉あるじゃん。俺さ、あれをずっと投げつけるときの決め台詞だと勘違いしてて」 「豆腐を?」 「豆腐を。で、実際に叫びながら投げてみたんだけど」 「叫びながら?」 「叫びながら」 「投げたの?」 「投げた。今は後処理に困ってる」 「豆腐の?」 「死体の」
「さっきタンスの角に小指をぶつけちゃったんだけどさ」 「痛そう」 「タンス側の代理人から連絡きて」 「ほう」 「要するに『被害者ぶるな』と。『微動だにしていないタンスにぶつかってきたのはお前だろう』と」 「正論ではある」 「10対0で過失はこちらにあるらしい」 「相手は止まってたからなあ」
散歩中、誰かの財布が落ちているのを見つけた。途端に頭の中で二つの影が現れる。 「私は天使です。この財布は近隣の交番に届けましょう!」 それが人として一番正しい選択だよな。さすがは天使。 「俺はもう一人のお前だ」 悪魔として出てこいよ。 「燃やして遊ぼうぜ!」 悪魔でもそこまでしねえよ。
華々しい都会のキャンパスライフ、昼はお洒落な友達と遊んで、夜は仲良くなったサークルの男の子と二人きりでディナー。私はいま、ずっと憧れてきた夢のシチュエーションを体験しているのだ。頬の火照りを感じながらぽそりと呟く。 「終電、なくなっちゃったね……」 「まだ20時だろ。東京を舐めるな」
『おいたわしや山神様』 #140字小説 #140字ss ※この話は創作です。
やめろと言っているのに、麓の村はまだ我に生贄の生娘を捧げてくる。そういう時代じゃないからと何度断っても。やってきた娘たちも「村八分にされるから帰ることはできない」と泣き出す始末。仕方ないので金を包んで上京させているが、村の爺婆から『過疎化解決』を祈られたときはさすがに耳を疑った。
「見ろよあのカップル。女の方はめっちゃ美人なのに、男がパッとしなさすぎじゃね」「ホントだ」喫茶店で聞こえてきた声に、俺は内心でムッとする。たしかに彼女とは釣り合ってないけど、お前らに関係ないだろ。このバカ「内面がすごい魅力的なんだろうな」「間違いない」バカしい世界に平和と幸福を。
恵まれた体格に並外れた運動神経。各界から『何のスポーツでも大成する』と絶賛された少年は、期待通り複数の競技で偉大な記録を打ち立てた。それから数十年後、老いた彼に記者が問う。「貴方の最も幸福だった瞬間はいつですか」彼は小さく笑って「こっそり描いた絵が小さな賞を貰ったとき」と答えた。
「聞いたぜタナカ。病気のファンを勇気づける為、今日の試合でホームランを約束したんだろ」ボブの言葉に俺は笑顔で頷く。「え?彼女との結婚がかかってるんじゃないの?」「俺はボスに賃上げ交渉する為って聞いたけど」集まってきたチームメイトに、俺は親指を立てる。「どうせ打つから全部約束した」
肝試しをしてから肩が重い。ときおり奇声のような笑い声も聞こえる。「……8人憑いてますね」有名な霊媒師に助けを求めると、冷静にそう伝えられた。まさか私は死ぬのだろうか。 「大丈夫。貴方はただの会場です」 会場。 「合コンしてます」 合コン。 「王様ゲームで盛り上がってます」 王様ゲーム。
裏路地に倒れた仲間を発見。治療に入ろうとする私を、血塗れの手が止めた。「俺はもうダメだ……最期に伝えたいことがあ」「黙れ」無視して手当てを始める。 「なんで喋らせてあげないんですか!」 うるさいな。部下に説明する時間も惜しい。長話できそうなやつは、全速力で処置すれば間に合うんだよ。
『おもしれーとかつまらないとか』 #140字小説 #140字ss ※この話は創作です。
「たまに『おもしれー女』みたいな表現を見るけどさ。いくら相手が超絶イケメンだとしても、おもしれーとか言われたら嫌じゃない?女の子ってああいうの本当に嬉しいのかね」 「わからん。でも『つまらない男……』って超絶美人の年上お姉さんに言われたら俺はすげえ嬉しい」 「それはめっちゃ嬉しい」
「勇者よ、我が軍門に下れ。貴様は殺すには惜しい人材だ」 「ふざけたことを!」 「幹部候補として厚遇するぞ」 「え、マジで?」 「マジ。どうよ」 「年間休日は?」 「福利厚生はしっかりしてる」 「年間休日を訊いてんだよ」 「……52日」 「民と平和の為にお前を討つ!」 「かかってこい勇者よ!」
「このシュートが入ったら、僕と付き合ってほしい」体育館に呼び出され、私はそう告白された。相手はバスケ部のエースだ。別にこんなことしなくても、答えはOKなのに。外したらどうするの──「あ、やべ」嘘でしょ。即座に跳んだ私は、弾かれたボールをリングに直接叩き込む。よかった。ダンクできて。
勇者以外は抜けない聖剣。前勇者が突き刺してから約百年、定期的に試しの場が用意されるも、成功者は皆無。汗が滲む手で、俺は柄を掴んだ。「マジか」ゆるっゆる。赤ん坊でも抜けるぐらい、ゆるっゆる。そりゃそうか。前勇者の末路があれじゃ、抜きたい奴なんていないよな。俺はそっと奥に押し込んだ。
「それではカットしていきますけど、とっても豊かな黒髪ですね!お仕事はなにをされてるんですか?」 「ええと、映像系?ですかね」 「テレビ出る感じの?」 「はい」 「やっぱり!色白でお綺麗ですし、もしかして芸能人さんかなって!」 「ああいえ、テレビに出るというか、テレビから出る感じです」