暇十朗#140字小説(@himajuro)さんの人気ツイート(いいね順)

コンビニでバイト中、着物にちょんまげの男がすごい勢いで詰め寄ってきた。「つ、つかぬことをお聞きする!今はいったい何年でござるか?」なんだこいつ。なにかの罰ゲームだろうか。「2022年ですが」それを聞いた男は崩れ落ちる。迫真だけど、まさか本物の侍? 「に、二百年前だと……」 未来人……?
なんと妻の前職が魔女だった。「もう200年ぐらい前の話よ。薬局に客を取られたから廃業したの」なんてしれっと言う。そういえば彼女と結婚してから体調不良になったことが一度もない。まさか僕にもなにか薬を盛っているのか?と訊ねると、「180年も生きてる自分を疑問に思わなかった?」と呆れられた。
「地元が少し特殊で、大家にバレると入居を拒否されちゃうんですよ」サークルの後輩は苦笑するが、そんなのまったく笑えない。出身地で人を差別するなんて、悪しき風習もいいところだ。「じゃあ今は実家から通ってんの?」「はい。若干遠いですけど、米花町から──なんでちょっと距離取ったんですか」
裏路地に倒れた仲間を発見。治療に入ろうとする私を、血塗れの手が止めた。「俺はもうダメだ……最期に伝えたいことがあ」「黙れ」無視して手当てを始める。 「なんで喋らせてあげないんですか!」 うるさいな。部下に説明する時間も惜しい。長話できそうなやつは、全速力で処置すれば間に合うんだよ。
「お前んとこ、兄妹仲いいよな。『兄さん』って呼ばれてるやつ初めて見た」俺の素朴な感想に友人は苦笑する。「いろいろあってね。呼び方も最初は『にぃに』から始まり、『お兄ちゃん』『兄貴』『お前』『ゴミ』『我が神』を経てようやく『兄さん』に落ち着いたところで」反抗期のあとになにがあった。
とある絶滅種の生存が確認されたと聞きつけ、私はすぐに某県の山中に飛んだ。「私も目を疑いました。なにせ十年以上見ていませんでしたから」発見者から事情を聞いていたそのとき、遠くの茂みががさりと揺れた。現れたのは特徴的な角、謎の黄色い服。まさか本当に生きていたなんて。「地デジカだ……」
村では何年も何年も手酷い迫害を受け続け、やっと逃げ出せたかと思えば山賊に捕まる。俺の人生はいったいなんだったのだろう。檻の中で自身の運命を嘆いていると、山賊の頭領が野太い声で脅してくる。 「妙な気は起こすなよ。少しでも怪しい動きをしたら、お前の故郷を火の海にしてやる」踊りますね。
「この前、凄い長髪のお客様が来てさ。『諸事情で短くしたい』って言うからサイドを刈り上げたら、右のこめかみに『殺』ってタトゥーが入ってて。ビビりながら左も刈り上げたんだけど、そしたら今度は『不』って彫られてて。なんだ『不殺』かってホッとしちゃったよ」 なんにせよカタギではなくない?
「物語の中盤でDNA鑑定をするんだけど、そこで初めて主人公と妹に血の繋がりがないとわかるんだよ」「義理の妹だったってことね」オススメらしい漫画のストーリーを力説する友人。ラブコメだとありがちだよな、義妹設定。「で、実は主人公のDNA配列が人間ではありえないっていう」「あ、ホラーなの?」
午前六時半。けたたましい悲鳴で俺は目を覚ました。かつてこの部屋で亡くなった女性の声とのことで、どういう理屈か入居者にしか聞こえないらしい。俺は欠伸をしながら起き上がると、出勤の準備を始める。「明日は休みなんで9時半頃にお願いします」照明が二回点滅した。了承の合図だ。本当に助かる。
『もう死にたい』という小さなメモが、図書室の本に挟まっていた。不穏な文章の下には名前も書いてある。どこか既視感のある名前だが、紙は随分と色褪せ古い。昔の学生のものだろう。「作業に集中!」司書教諭の一喝で我に帰る。元気なおばさんだなと一瞥し、名札を見、メモを見、もう一度名札を見た。
恵まれた体格に並外れた運動神経。各界から『何のスポーツでも大成する』と絶賛された少年は、期待通り複数の競技で偉大な記録を打ち立てた。それから数十年後、老いた彼に記者が問う。「貴方の最も幸福だった瞬間はいつですか」彼は小さく笑って「こっそり描いた絵が小さな賞を貰ったとき」と答えた。
小さいとき、夢は世界征服だと言ったら笑われた。大学時代、願望は世界征服だと話したら苦笑された。企業した頃、目標は世界征服だと語ったら嘲笑された。それから四十年、すべての準備は整った。会見に詰めかけた記者たちへ告げる。 「これより世界征服を始めます」 音の失せた会見場で、私は笑った。
『心霊スポットに100人のマッチョを投入し、カラオケ大会を行ってみた』という企画を撮った。まさか15時間以上もかかるとは思わなかったが。編集作業がまったく終わらない。「……ん?」都合8回目の『お願いマッスル』を聴いた辺りで違和感に気づく。どういうことだ。何回数えても力こぶが202個ある。
私はファンタジー小説を投稿しているのだが、あまり反応がよくない。故郷が燃えたり、酷い迫害を受けたり、主人公に辛い試練を与えすぎているのが原因だろうか。四苦八苦していると、なんとコメントがついた。うきうきしながら見に行く。『貴方は辛い人生を送ってきたのですね……』自叙伝じゃねえわ。
「『豆腐の角に頭をぶつけて死ね』って言葉あるじゃん。俺さ、あれをずっと投げつけるときの決め台詞だと勘違いしてて」 「豆腐を?」 「豆腐を。で、実際に叫びながら投げてみたんだけど」 「叫びながら?」 「叫びながら」 「投げたの?」 「投げた。今は後処理に困ってる」 「豆腐の?」 「死体の」
「文房具にコンパスってあるだろ。小学生の頃、あれを両方とも針に改造されたことがあってさ」技術力が必要なイタズラされてるな。時間かかるだろうに。「円は引けないし、犯人もわからないし、途方にくれてたら隣の席の女子が貸してくれたんだよ」女神じゃん。「両方とも鉛筆のコンパス」犯人じゃん。
「今の若い子たちはゲーム実況なんて見て面白いのか?お父さんは好きだけども」飲んでいたお茶を吹く。聞き間違いだよな。「親父、ゲーム実況好きなの?」「は?昔から見てるだろ」不思議そうにしながら、親父はテレビのチャンネルを変えた。『先手、7六歩。堅実な立ち上がりです』将棋中継が映った。
『私に会いたくば強くなれ』 そう言い残して家族を捨てた父に復讐する為、俺は地下格闘技場で戦い続けてきた。今日の相手は300戦無敗、正体不明の絶対王者。この日を俺が何年待ったことか。 「よう。クソ親父」 殺意を込めて王者を睨み付ける。 「よくぞ来た。我が息子よ」 真横でレフェリーが答えた。
『おもしれーとかつまらないとか』 #140字小説 #140字ss ※この話は創作です。
「見ろよあのカップル。女の方はめっちゃ美人なのに、男がパッとしなさすぎじゃね」「ホントだ」喫茶店で聞こえてきた声に、俺は内心でムッとする。たしかに彼女とは釣り合ってないけど、お前らに関係ないだろ。このバカ「内面がすごい魅力的なんだろうな」「間違いない」バカしい世界に平和と幸福を。
「俺も高校のとき、どっちが先に恋人作るかで幼馴染みと勝負したなぁ」学園ドラマを見ながら呟くと、娘から「興味ない」とツッコミが来る。我が子ながら手厳しい。「……お父さん勝ったの」「気になるんじゃん」「うっさい」苦笑しつつちらりと台所を見る。後ろ姿だが、妻の耳は真っ赤だ。「引き分け」
「聞いたぜタナカ。病気のファンを勇気づける為、今日の試合でホームランを約束したんだろ」ボブの言葉に俺は笑顔で頷く。「え?彼女との結婚がかかってるんじゃないの?」「俺はボスに賃上げ交渉する為って聞いたけど」集まってきたチームメイトに、俺は親指を立てる。「どうせ打つから全部約束した」
『身体を強化する能力』を持つ父と、 『なにとでも会話できる能力』を持つ母の間に産まれた俺は『自分の身体と会話できる能力』を備えていた。若い頃はポンコツ能力とやさぐれたが、『脳は海馬より伝達。洗剤を買い忘れていますよ』『御主人!肝臓が疲労で号泣してます!』歳を取ると使い勝手がいい。
肝試しをしてから肩が重い。ときおり奇声のような笑い声も聞こえる。「……8人憑いてますね」有名な霊媒師に助けを求めると、冷静にそう伝えられた。まさか私は死ぬのだろうか。 「大丈夫。貴方はただの会場です」 会場。 「合コンしてます」 合コン。 「王様ゲームで盛り上がってます」 王様ゲーム。