これらを踏まえ、ATS-Pはより列車本数を多くしたい首都圏の各路線において導入しています。例えば、特急や貨物列車、快速など多くの種別の列車が混在する路線で大きな効果を発揮しています。首都圏の多くの路線は、この高機能なATS-Pにより高い安全性を確保しながら高密度な列車本数を実現しています。
一方、現示アップして列車本数を増やす必要のない路線については、この現示アップ機能などの付加機能がなく、自動列車停止装置としての機能に特化したATS-P(N)を導入しています。どちらも、本来の自動列車停止装置としての安全性は変わりません。
ATS-Pは高機能であるため信号機ごとに符号処理機(エンコーダ:EC)を設けて、ECで情報処理を行い、それぞれの地上子を経由して列車に情報を送っている(列車からも情報を受けている)のに対して、ATS-P(N)は地上子自体に情報が入っているためECがありません。
ATS-PがECからの情報を常に地上子から列車に送り出しているのに対し、ATS-P(N)は地上子にコイルを設け、列車側から発生する電波によってコイルで電源を発生させ、その電源により列車に情報を送っています。コイルを内蔵しているため、ATS-P(左)よりもATS-P(N)(右)の地上子の方が少し大きいのが特徴です
列車を他のレール上に分岐させるための装置を「分岐器」、分岐器を転換させる装置を転てつ機といい、特に電気で動かしているものを「電気転てつ機」と呼んでいます。そして、分岐器を含めてレールの方向を切り替える装置全体のことを「転てつ器(ポイント)」と呼びます。
2日目は、多くの駅や分岐部に用いられているNS形電気転てつ機についてご紹介します。NSはN形(Nihon,New)レール分岐器に取り付けるStandard(標準)から来ています。#電気SIO #NS形電気転てつ機
NS形電気転てつ機は電気転てつ機の標準品として規格化され、今日現在でも標準形として広く使用されています。NS形には長い歴史がありますが、クラッチ部分に電磁力を活用したマグネットクラッチ化や、より転換力の強いモーターを開発導入するといった、機能面の強化を継続的に行っています。
ちなみに、一般的なNS形の転換時間は6秒程度ですが、頻繁に列車が入線・出線する中央本線東京駅に設置されているHCW形は転換時間が約半分の3.5秒程度と、環境やニーズにあわせた電気転てつ機も導入されています。
3日目は、ES形電気転てつ機についてご紹介します。ESはEast(JR東日本)のStandard(標準)から来ています。ES形電気転てつ機は首都圏を中心に設置され、メンテナンスの軽減や軽量(約99kgとNSの約1/3程度)・小型・高速転換を盛り込んで低コスト化を図りました。#電気SIO #ES形電気転てつ機
ES形電気転てつ機は、欧州製の小型で軽量な転てつ機に対抗する日本製転てつ機を目指して開発に取り組みました。ES形転てつ機にはES形とESⅡ形があり、当初開発導入されたES形に対して、現在は耐雷性能や安全・安定稼働の改良を行ったESⅡ形の導入展開を進めています。
ES形転てつ機はNS形転てつ機とは異なり、分岐器もES形専用の構造として剛性を高めたマクラギなどの特別な機構を導入しており、より安定的な稼働と保守性の向上を実現しています。
TS形電気転てつ機は、転換力が強いためにサイズの大きな新幹線分岐器を転換することができます。また、新幹線は分岐器を高速で通過するため、ノーズ部分(図中赤色部)を可動させて車輪をスムーズに通過させるようにしており、このノーズ部分にも転てつ機を設置しています。
5日目は、本線以外の車両基地構内等に用いられるYS形電気転てつ機について、ご紹介します。YSはYard(構内)のStandard(標準)から来ています。YS形電気転てつ機はその用途から、これまでに紹介した転てつ機とは外観や機能において異なった機構となっています。#電気SIO #YS形電気転てつ機
YS形転てつ機は、車両基地構内等で用いられる特徴から、構内における車両入換において頻繁に転てつ機の転換が発生するため、転てつ機の転換回数を抑えるために 車両が背向からの進入でも破損しない機構を有しているのが大きな特徴です。(原則として、現在当社ではそういった運用は行っておりません。)
頻繁に列車が入線・出線する中央本線東京駅への設置に対して、転換時間3.5秒という高速転換ができる特徴を踏まえて導入を決定しております。HCW形転てつ機は耐水性を基本機能として開発されているものの、転換時間に着目してそのまま東京駅に導入しております。 twitter.com/hidabe3120/sta…
高減速列車はブレーキ圧を増圧改良した各駅停車列車、低減速列車は客車列車や貨物列車を示しています。また、ブレーキ性能が高くても「特別快速」や「特急」列車は車間の詰めすぎによるブレーキ回数増加を防ぐ目的で、中減速列車として現示アップを高減速列車(各停)より抑えた制御をしています。 twitter.com/FBIjobs_Japan/…
信号機の現示は列車同士の車間(閉そく数)に合わせて各列車に適切な速度を示し、何閉そく先に列車がいるということは示していません。例えば、YGの次はまたYGということもあり、YGが必ずしも3閉そく先に列車がいるということは示していません)場合によっては、G-YG-YG-Y-YY-Rなんてこともあります)。
前述の高減速列車の話と通じるところがありますが、車両性能により減速信号や注意信号に対して運転速度を向上して走行してよい区間を定めており、例えば東海道本線の東京-来宮間を走行する電車列車及び気動車列車は、減速信号は75km/h、注意信号は55km/hで走行してよいとしています。
本日から5日間、ATS-P導入 を題材として簡単な工事の流れについて投稿を行っていきます! まず、工事を進めていくにあたり、工事の基本計画を策定します。基本計画においては、どこにどうやって設備を導入するか、費用はどの程度かかるかといった基本的な情報をまとめ、工事の構想を練ります。
現地測量が終了したら「ATS-P制御図表」を作成します。制御図表は設置箇所となる線区や駅名、信号機名称の他、信号現示やポイントの向きに対してATS-P地上子からブレーキパターンを形成するための情報が記載されています。ATS-P地上子を設置する信号機一つ一つに対して制御図表を1枚ずつ作成します。
ここでいうブレーキパターンとは、デジタル(1or0)1の電文データで信号機までの距離情報等を基に車上で作成した信号機がR現示の際に安全に止まることができる速度を示す曲線のことを言います。ちなみに、ATS-Pの「P」は「パターン(Pattern)」から来ています。
ATS-P制御図表が完成したら、実際にそれを電気的に実現するための配線ロジックを示す図面を作成していきます。これを「電気結線図」といいます。リレーと呼ばれるスイッチデバイスを組み合わせて電気的なロジックを組みますが、この結線図作成のノウハウこそが鉄道信号技術の肝となっています。
実は2022年11月20日深夜、多くの特急列車などが泊まる東大宮操車場の連動装置(鉄道信号 システムの頭脳・経年54年)の電子化切換を実施しました。この日のために黙々と取り組んだ成果を報告します。
連動装置に指示を出す連動制御盤を使って、列車が東大宮操車場内を移動する際に、どこを通るかの”進路”を確保します。通常の駅は、てこ(スイッチ)と着点ボタンを扱って進路を決定しますが、東大宮操車場の古い制御盤はさらに発点ボタンも扱う非常に珍しいものでした。
あんなに大きかった制御盤が、電子化によってPC1台で連動装置を制御できるようになりました!自動で進路を設定する機能がふえ、保守がしやすくなると共に、てこやボタンを人が直接扱うことはなくなりましたが、過去の技術は着実に蓄積されてより安全な設備へと進化を遂げています。