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ただこの、負け組層でも、グラデーションは異なる。
負け組(ルーザー)と呼ばれる者たちの中には、ナード・・・いわゆるオタクや、サブカルマニアなども含まれる。奇人変人と類される者たちだ。
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彼らは確かに、学校内の基準では下に見られるが、自分独自の世界を見つけ、校外のコミュニティを見つける。
その上で新たな自分の才能を発揮できる機会を得る。
海外において「ナード(オタク)をバカにしてはいけない」という言説が生まれるのは、そういった背景があるからだ。
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容姿が優れているわけでも、マッチョなわけでもない。
学力に優れているわけでも、カリスマ的な人間性を持っているわけでもない。金持ちの家の生まれでもなく、腕っぷしが強いわけでもなく、オタクになるほどなにかに熱中しているわけでもない・・・そんな者たち。
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海外のこの手の問題を語る際、出てくるのが「プロム」である。学校主催のダンスパーティー。
このパーティーで、宴の中心に立つか、少なくとも恋人連れでなければ、壁の花としてぬるくなった酒を舐める人生が、卒業後も決してしまう。
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僕らのクラスのリーダーを中心に、取り巻きとその取り巻きで、弾かれた外郭にいる者たち。
オタクや不良は最初からそんなところに行かない。
彼らには無理してそんなところに入らなくても、学校外の世界で楽しくやれる。
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「学校内にしか居場所はないが、低い」そんな「下の上」な者たち。「オタクや不良よりはマシ」という消去法でしか自分を価値付けることができない者たちが、時に抑圧の果てに暴走するというのは、意外と多い。
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しかし、当たり前だが、こんな凶行に走るのは一部の一部である。とはいえ、抑圧下にいるのは違いない。
彼らはなんとかして、別の方法で、自分たちの階層を覆す手段を模索する。
その彼らの前に現れた、「わかりやすい方法」が、昨今の過激な社会運動ではないか、と。
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本来なら自分たちの「上」にいる、美女やマッチョ、金持ちや優等生たちに、凡庸な自分が、
「お前たちは間違っている!」といえる。
彼らが根拠とし、自分が従属していた、階級階層の構造そのものを否定できるのだから、これほどすばらしいものはない。
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名画でも文化遺産でもいい。
自分たちの「上位」とされている者たちが大切にしている権威を汚すことで、彼らよりも「上」になったと感激する。
また同時に、ヒエラルキーというものは、下に行くほど多い。
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そういった階層の者たちはどうしても多くなる。
分母が多ければ、「そういう選択」をする数も増える。
彼らはそこで、「その他大勢」ではなく、「目覚めた同志」という仲間と連帯感、「あいつらより俺たちの方が優れている」という選民の快楽まで得る。
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ここまで述べて、浮かんだ言葉は「カルトじゃねぇか」だと思う。実際、構図としてはカルト宗教のそれと変わらない。というか、本来は彼らは、昔ならば宗教が救っていた者たちなのだ。
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宗教において多くある。
「虐げられているあなた達こそ正しいのです。神様は見てらっしゃいます。いずれ必ず裁きは訪れ、あなた達は救われ、愚か者共は罰されるでしょう」
どこの宗教でも大なり小なりあるものです。
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昔ならそれで耐えられたんです。
今はだめでも、死後に救いがあると、信じることで、救われた。
だがその宗教が力を失ったことで、寄辺をなくなった者たちがすがったのが、「美しいイデオロギー」なのかもしれません。
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だから彼らには批判は通じませんし、非難は却って油を注ぎます。
聖書物語でいちばん人気なのは「ノアの箱舟」です。
「正しいノアが、バカにされながら作った方舟が、ノアたち”だけ”を救う」物語です。
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本当に世界を変えるために必要な、天才的な発明もできない、新技術に投資する金もない、政治家になって人を動かす才覚も人気もない、一芸を磨き発言力を上げる根性もない。
そんな者たちが手に取れたのはトマトスープの缶詰程度。それでお手軽に聖者になったつもりなのでしょう。
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銃の乱射に比べればまだマシとは言え、救えない話でもありますが、もっと救えない事実もあります。
昨今、これらのパフォーマンスが流行っているのは、それらに資金援助をしているシンパがいるからで、その中の超大物は、誰あろう米国の石油財閥の一族です。
news.yahoo.co.jp/articles/738c2…
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毎年何万ドルという大金を寄付し、彼らの活動を支援しているこの女性、祖父は石油王と呼ばれた人物なのですが、歴史上まれに見る「ケチ」だったことで有名です。例えば「広大な屋敷の中に公衆電話を作った」などがあります。どういうことかというと・・・
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屋敷で働く使用人や客人が、私用で電話を使えば、使用料を自分が払わなければならない。
だから、「自分の電話代は自分で払え」と、わざわざ公衆電話を自宅内に作らせたのです。
世界有数の金持ちが、です。
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この石油王のエピソードで有名なのは、「自分の孫が誘拐された」にもかかわらず、なんと「身代金を値切った」というものです。
件の女性はその孫ではありませんが、自分の兄弟にされた、祖父の悪辣な行為は、彼女に与えた影響は小さなものではないでしょう。