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信濃毎日に今週の原稿を送稿。「緊急事態条項について」書きました。感染症や大規模災害のときには内閣総理大臣に緊急事態を宣言する権限を与えることに57%の国民が賛成だそうですけれど、そのうちに自民党改憲草案を読んだ人がどれほどいるのでしょうか。
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草案の「緊急事態条項」によれば、内閣総理大臣は「特に必要がある」と判断すれば緊急事態を宣言できます。事前の国会承認は要りません(100日以内の事後承認でOK)。宣言下では内閣は「法律と同一の効力を有する政令」を制定できます。予算も好きに使え、地方自治体にも命令できます。
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国会は発令後100日以内に召集され、以後100日ごとに宣言の承認を繰り返すことができます。宣言下では選挙は行われませんので、発令時に政権与党が過半数であれば、宣言はそれ以後未来永劫に延長可能であり、議員は「終身議員」となります。
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緊急事態の延長が不合理であるとして国民が不満を訴えても、それがデモやストライキでも、ネット上のアピールでも、内閣総理大臣によって「社会秩序の混乱」に認定されれば、それ自体が緊急事態宣言延長の根拠となります。完全に「出口なし」です。
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無期限に憲法が停止され、行政府が独裁的な権力を持ち続ける政体は理屈の上ではたしかに効率的にパンデミックや大規模災害に対応できるかも知れません。しかし、これほど巨大な権力を手にしたのち反対者をも含めた全国民の利益を配慮できるほどに公正で度量の大きな政治家が今の日本にいるでしょうか?
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自宅で容体が急変して救急搬送された後に死亡した患者、ホテルや施設で医師らの往診を一度でも受けた患者は「医療管理下にあった患者」として、この集計からは除かれているそうです。
mainichi.jp/articles/20210…
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僕は「中止」を求める立場ですが、このままだと東京五輪は中止されないかもしれません。歴史的惨事としての東京五輪が終わった後に「私は開催に個人的に反対だったのだが、とても『中止』を言い出せる空気ではなかった」と責任者たちが口々に言い訳するありさまが目に浮かびます。
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その点でも大日本帝国戦争指導部とよく似ています。客観的に判断したら戦争に勝てるはずはないことはわかっていたが、ここで「講和」を言い出せば「敗北主義者、非国民」と非難されることがわかっていたので誰も言い出せなかった。責任者たちに東京裁判の記録をそのまま読み聞かせてあげたいです。
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五輪中止以外に合理的選択はありません。中止は「コロナに打ち勝った証」ではなく「対コロナの負け幅を抑えたことの証」でしかありませんが、ここでいう「負け幅」というのは死者数のことです。国威や経済効果の話をしているわけじゃない。
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1942年のミッドウェイ海戦の敗北時点で負けを認めて講和していれば、310万人の死者のほとんどは死なずに済みました。南方での餓死戦病死も東京大阪大空襲も原爆投下もなかった。北方領土も残り、沖縄の米軍駐留もなかった。「負けを認める」ことを拒んだせいでどれだけのものを失ったか。
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日本人は「戦況もはや好転せず」の分岐点を見切って、被害を最少化したことの成功体験を過去に持っていません。だから「負け幅を抑え込んだ」功績を評価する文化がない。それよりは「すべてがうまくゆけば皇軍大勝利」というタイプの超楽観的なシナリオに飛びつく。そのせいで帝国は瓦解したのに。
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僕もGotchに同意します。競争の勝者は勝者ゆえにルールを作る側に回ります。彼らが作るルールはどうしても「勝者にさらに手厚く、敗者にさらに過酷に」というものになります。より活動的で、より社会的影響力を持つ人間の自由をどうやって抑制するか。これはミルの『自由論』の重要なテーマでした。
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日本人は市民革命を通じて自力で自由を勝ち取った経験がありません。だから、市民の中のより活動的で影響力の大きい人間が相対的弱者の自由を損なうことの意味がわからない。winner takes all が「当たり前」だと思っている。それは単に自由について真剣に考えた経験が貧しいということに過ぎません。
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おうちにたどりついてすぐに平川君とZOOMでおしゃべり。五輪はやれば大惨事とわかっていてもたぶん実施されるという「五輪=インパール説」に二人とも傾いてきました。今の日本の指導層には五輪を中止できるだけの実力も見識ももうないという診立てです。😰
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無事にワクチン接種の予約ができました。第一回が7月19日、二回目が8月9日でした。7月末までワクチン接種完了って無理みたいですね。
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最終的には国連かWHOかホワイトハウスが「五輪中止」と言い出すと予想しておりましたけれど、米国政府がまず「日本への渡航中止」を宣言して、続いて国連事務総長が「もうやめなはれ」と肩を叩いております。この機を逃して、いつ止めるつもりなんでしょう。
news.yahoo.co.jp/articles/66bc2…
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内閣支持率16%というのは僕の実感と一致します。マーケティング用語での「ラガード(新製品、サービスがどれほど普及しても採用しない層」のパーセンテージと同じですから、これが支持率の下限ではないかと思います。 twitter.com/miraisyakai/st…
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朝日新聞が「東京五輪中止を求める」社説を掲げてくれました。「遅いよ」とも思いますが「改むるに憚ること勿れ」です。他の大手紙もこれに足並みを揃えて「五輪中止」の世論を確かなものにして欲しいと思います。
asahi.com/articles/DA3S1…
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「いま、世間から『常識人』『人道派』『人権派』『人格者』と思ってもらえる、簡単な方法がある。それは、東京五輪の開催に反対することだ」という文字列を見てちょっとくらくらしました。五輪反対を叫んではや8年。ようやくようやく僕たちの主張が「世の常識」に登録されたんですね。😭
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平尾さん、とても勇気のある発言だと思います。彼がどれくらいのリスクを背負って語っているかを僕たちは想像する必要があると思います。 twitter.com/ChooselifePj/s…
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しかし自公政権は次から次へとよくろくでもない法律を思いつくものです。すべてに共通しているのは「権力による監視管理を強化して、市民的自由を制約すること」です。問題なのは、起案した人たちの多くがそうすればこの世の中が「よくなる」と本気で信じているということです。
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今の日本が政治的にも経済的にも文化的にも落ち目であることは彼らだって(たぶん)認識していると思います。ただ、その理由を「権力による監視と管理が足りないせいで、市民が野放図に動き回っているから」と解釈している。だから、あらゆる手立てを使って市民的自由を阻害することを目指している。
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1966年から70年の日本は大学は全共闘運動でカオス状態、ベトナム反戦運動が激化し、67年には知事7人が革新系となり、国民4500万人が革新自治体で暮らしていましたが、この時期の日本は平均10.9%という驚異的な成長率を記録して、1968年GDO世界第二位になりました。
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人は管理されていない方があらゆる領域で創発的になる。日本人は歴史的経験からそのことを学んでよいはずなのですが、なぜかそれとは逆のことが久しく信じられている。予言しますけれど、監視と管理を最優先する政治が続く限り日本の没落は終りませんよ。
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「五輪のせいで感染した人」たちは次の選挙では自民党に絶対投票しないだろうというくらいのことは官邸だって推論できるはずです。それでも開催強行ということは「五輪開催を喜ぶ人>五輪開催で不利益をこうむる人」という予測が立っているということです。