なぜなら、検診をしなくても、症状が出た段階で治療介入され、放置されないからです。「無症状のうちに治療」対「放置」ではなく、「無症状のうちに治療」対「症状が出て治療」で比較すべきです。
甲状腺がんは症状が出てから治療しても予後はよいです。おおむね死にません。放置されたら死ぬかもしれませんが、無症状で治療介入されても、症状が出た時点で治療介入されても、予後が変わらないなら、検診する意義はありません。害だけあります。
検診で発見されたがんの予後が良くても、がん検診が有効だとは言えないのはなぜか?[ natrom.hatenablog.com/entry/20170307… ]でご説明しました。疫学の教科書にも載っている基本的なことです。
福島県の子供たちが有効かどうかわからない、おそらく害の方がずっと大きい検診を受ける羽目になったのは東京電力の、ひいては国の責任だと私は考えます。福島の問題に注目するならば、がん検診の疫学についても勉強し、被ばく以外にもさまざまな害が生じていることに注目していただきたいと願います。
子宮頸がん検診は甲状腺がん検診と違って、子宮頸がん死や浸潤子宮頸がんを減らすことが示され、有効性が確認されています。国際的にも広く推奨されています。推奨年齢になったら子宮頸がん検診を受けることをお勧めします。
甲状腺がん検診に予後を改善させる効果はないかきわめて小さいことを認めざるを得なくなった検診推進派の最後のよりどころが「不安の解消」です。ただ、検診の害は大きく、「不安の解消」を目的とすると集団検診をすべきではありません。少なくとも害が大きいことがわかった時点で方針を変更しないと。 twitter.com/nek0jita/statu…
甲状腺がん検診に限らず、不安解消を口実にした介入については気をつけたほうがいいよ。単なる風邪に抗菌薬を安易に処方するヤブ医者は「だって患者さんが安心するから」と言い訳する。空間除菌を売る会社は「感染予防効果がなくても不安の解消になる」と言う。
過剰診断は有害です。「情報が多ければ多いほどいい」のであれば、まず、過剰診断の害についての情報が不足していることを心配すべきです。 twitter.com/RyuichiYoneyam…
米山隆一さんは過剰診断の害について「後程論考にまとめ」てくださるそうです。過剰診断の代表的な論文を踏まえた上で書いてくださることを期待します。もし、『「過剰診断で有害」という事は起こり得ない』ことが示されれば定説を覆す大発見ですので、しかるべき媒体でも発表されるべきです。
福岡市議会議員の森あやこ氏が、ニセ医学である新型コロナ否認主義を信じてしまった模様。「ガリヤ」という福岡のコミュニティマガジン2021年春号で、大橋眞氏の見解を好意的に(というか鵜呑みにして)紹介した。
[イソジンうがいで新型コロナの重症化予防という話はどうなったか追いかけてみた natrom.hatenablog.com/entry/2021/04/… ]。ランダム化比較試験をやる(やっている)そうです(正確にはイソジンうがいではなく『ポビドンヨードガーグル液7%「明治」』です)。
名前に聞き覚えがあったけど、青山まさゆき氏、ポビドンヨードうがいによる重症化予防にずいぶん好意的だった人でした。[ ameblo.jp/masayuki-aoyam… ]。
青山まさゆき氏は、実験室内のポビドンヨードのウイルス不活化の研究でもって「伝播低下(感染拡大防止)が期待できる」「吉村知事が会見で伝えられた通りなのだ」と持ち上げる一方で、臨床試験でもリアルワールドでも効果が確認されているワクチンに懐疑的な立場。
PRESIDENT Onlineに書きました[ president.jp/articles/-/453… ]。据え置きタイプの空間除菌製剤を幼児が誤食し気管挿管・小児集中治療室管理された事例や、38歳男性が空間除菌製剤使用後に中毒性メトヘモグロビン血症を起こした事例の報告も。
3月ぐらいまで散見されたトンデモ説「イスラエルはワクチンを接種して新型コロナ死亡者が減ったが、それはほとんどワクチンを接種していないチュニジアでも同じ。ワクチンの効果ではなく季節性の変動かなにか」を4月以降はパッタリみなくなりました。ものすごく差がついたからでしょう。
たくさんの国や地域があるので、たまたま同じような傾向の集団は探せば見つかります。自説に都合の良い集団だけを取り出して比較してみせるようなやり方はよくありません。これはワクチンの効果を否定するにも、肯定するにもです。
イスラエルの新型コロナ死亡者減少はかなりの確度でワクチンのおかげだと言えますが、ワクチンを接種後に集団の死亡者が減ったという単純な時系列の観察によるものだけでそう言っているのではありません。ワクチンとは無関係の要因で死亡者が減った可能性を否定できないからです。
ランダム化比較試験で対照群と比べてワクチン群で発症者や重症者が少ないこと、イスラエル国内の観察研究で接種が先行した年齢層でまず死亡者が減ったこと、同年代の比較でも接種者に死亡者が少ないことなど、複数の証拠がワクチン接種と新型コロナ死亡者減少の因果関係を強く示しています。
ワクチン接種が先行しているのも関わらず苦戦しているアラブ首長国連邦(UAE)やチリはどうなんだ、という意見もあるでしょう。他の要因が強くてワクチンの効果がまだ見えていないだけかもしれませんし、変異株のせいかもしれませんし、ワクチンの種類のせいかもしれません。
UAEは、シノファーム製(中国)、ファイザー製、スプートニクV(ロシア)、アストラゼネカ製の4つのワクチンを使っています。この4つのワクチンを比較した結果がそのうち報告されるのではないかと期待しています。
いずれにせよ、いまやれることは変わりないです。トンデモ情報に惑わされず、粛々とワクチン希望者にできるだけ早くワクチンを接種することです。現時点で、日本で使われているのはイスラエルで実績のあるファイザー製のワクチンです。従来の感染予防対策もしばらくは必要です。以上。
単純にグラフを重ねて「ワクチンを開始したら感染者数が増えた。感染者数の増減がワクチン接種の増減と相関している。魔の二週間だ」などと、あたかもワクチン接種のせいで感染者が増えたという主張もあります。まあ、そういう国もあるかもね。
新型コロナの防疫にものすごく成功している台湾が、昨日の新規感染者数が15人と増えていた[ sites.google.com/cdc.gov.tw/201… ]。数人だけど市中感染もある。何が起きたのか調べてみた。
ロイターの報道によると台湾最大の航空会社のパイロットが滞在した空港ホテルでアウトブレイクが発生した。 [ jp.reuters.com/article/us-hea… ]。報道時点で35人。台湾基準では大きなアウトブレイク。
海外で感染したパイロットから、ホテル内で他のパイロットやホテル従業員に感染した模様。台湾CDCによると航空会社のパイロットである40代の台湾人男性(Case #1187)が、検疫をすり抜けて感染期間中にいくつかの公共の場を訪れたとのこと。台湾でもこういうことがあるんだね。