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過去の例を見ると、「標本化を見据えて埋めたけれど、予算が確保できずに掘り起こせないまま」というケースは結構あるようです。その場合は、そのまま時がたち、いずれは分解されて土に戻ることになります。8/12
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で、骨格標本にする場合は、数年後に掘り起こす必要があるのですが、当然ここからは処理とは別に費用がかかります。詳細な金額は存じ上げませんが、主に重機や運搬車両の費用が必要になるかと思います。7/12
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骨格標本を見据えての埋設の場合、上記のような解体作業については、近隣の水族館の方々、各地の博物館関係者が集結し、基本的にボランティアで作業します。埋設処理の場合、骨格標本にするか否かで作業内容はさほど変わらないので、腐肉や皮膚の焼却処理費が多少変わるくらいかと思います。6/12
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実は、博物館が所有する骨格標本の大半は、前者のバラバラの形で保管されています。後者(交連骨格と言います)は展示には良いのですが、骨を様々な方向から観察したり計測したりはしにくいので、研究には不向きです。交連骨格は保管スペースもくうので、研究用の資料は①の形で保管されます。10/12
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無事に掘り起こしが済んだ場合、博物館などに持ち帰って洗浄し、綺麗な骨格にする作業をします。そしてそのあとは、①このままバラバラの状態で骨格を保管する、②生きていた時の姿がわかるように骨を組み上げて保管(展示)する、という二つの選択肢があります。9/12
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①の場合は洗浄した骨格を保管庫に入れて終了です。が、もし②の形で保管しようとすると、バラバラの骨を組み上げる費用が別途かかります。科博に保管されている体長12mのツノシマクジラ(ヒゲクジラの一種)の交連骨格の制作には、1000万円以上かかったそうです。11/12
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というわけで、まとめると、骨格標本化を見据えて埋設→埋めている間に予算の確保を試みる→予算が取れたら掘り起こし→交連骨格として展示する場合はさらに改めて予算獲得を目指す、という形です。たとえ掘り起こせなくても、処理費用に無駄がでるわけではないかと思います。12/12
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餅は餅屋!ということで、ご興味持った方は「海獣学者、クジラを解剖する」を手に取ってみてください。リンクは↓ twitter.com/hiro_takai/sta…
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このツイート関連で「素人はだまってろ案件ですよね!」というリプをいただくのですが、そんな風には思っていません。私が色々解説するのは、大学院時代の指導教官に「大学や博物館で生きていくならば、生涯学習の担い手になるという意識をもつように」と言われ続けたことの影響です。 twitter.com/AnatomyGiraffe…
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知らなくても疑問を呈して良いと思います。普通に生きていたら知る機会がない知識はあらゆる分野にたくさんあるので、その都度新たに知って、考えて、その上でまた疑問や意見を言っていいんですよ。よくないのは、知らないまま・知ろうともしないままで他者を批判・攻撃することです。
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科博のストランディングデータベースを見ると、どれくらいの頻度で、どんな種がどこに打ち上がり、どういった機関が協力して作業にあたったかがわかるので、気になった方は是非。自治体・水族館・大学・研究機関の共同作業です。kahaku.go.jp/research/db/zo…
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過去の例がたくさんまとまっているので、めちゃくちゃ興味深いですよ。画像は、1949年6月5日に八戸港沖で発見されたマッコウクジラの事例。kahaku.go.jp/research/db/zo…
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「漂着したクジラの為に動いている方々を応援したい!」という方は、下記の団体が寄付を受け付けています。
ストランディングネットワーク北海道:kujira110.com(支援するのページをクリック!)
富士ストランディングネットワーク:kujira110.net(入会案内等をクリック!)
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誤解がないように補足すると、「埋設あるいは海洋投棄」という死体処理に関わる費用は自治体が負担し、「掘り起こし以降」の標本作成に係る費用は博物館等の標本所有機関が負担する、というのが最も一般的だと思います。(なお、現場にかけつける移動費はそれぞれの機関や個人の負担だと思います)
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淀川のクジラの爆発を心配する方の中に、爆弾のような大規模な爆発を想像していそうな方がいるな?と不思議に思っていたのですが、クジラの爆発をまとめた動画の中に「1970年に米オレゴン州で、クジラの死体を500kgのダイナマイトで爆破処理した時の映像」が紛れ込んでて、なるほどねとなりました。
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もう一点補足すると、博物館側が「骨格標本にします」と発言するケースの99%は「バラバラの状態で保管する研究用の骨格標本にする」ことを意味します。おそらく多くの方は「骨格標本にします」と聞くと展示用の交連骨格を想像すると思うので、予算関係についてはだいぶすれ違うことになりますね。
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キリンの角は骨なので、めっちゃ硬いです。ぶつかるとひどい青あざになります。結構よく質問されることなので、多くの方が不思議に思うようです。何も恥ずかしくないですよ🦒
もう少し詳しく知りたければこちらのツイートをどうぞ〜→twitter.com/anatomygiraffe… twitter.com/iwakunily/stat…
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気にかけていない限り、街中で動物の遺骸が目に止まることなんて滅多にないので、「動物の死体なんて放っておいたらすぐ自然に返って無くなるでしょ」という感覚になってしまうのかもなぁ。中々遺骸を見かけないのは、自治体や博物館の方々などが発見次第迅速に回収し、処理しているからなのです。
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仕事がら、腐敗していく動物の遺骸を間近にみる機会が多いのですが、少しずつ腐敗していく様子を見ていると、ふと「数十kgの肉塊である自分の体が腐敗せずに何十年も存在しているって割とすごいことだな」と当たり前のことに感動してしまうことがある。
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きっとこういうのが「”命の尊さ”は、生きている動物を見ているだけじゃわからないだろう?(川田伸一郎「標本バカ」より)」ってことなんだろうなと思う。
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「マッコウクジラの死体が漂着したけれども、様々な事情ですぐに処理することができず、埋設が完了するまで2ヶ月間放置することになってしまったケース」における腐敗状況の経過観察報告、非常に興味深い。2ヶ月で随分分解されたが、2ヶ月間ずっと悪臭被害があったとのこと。
dc.ogb.go.jp/Kyoku/kengyo/k…
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2002年に鹿児島で海洋投棄されたマッコウクジラについては、その後2003-2005年にかけて、無人探査機ハイパードルフィンによる調査が行われ、鯨骨生物群集の形成に関する研究の一端を担ったそうです。今回のマッコウも、その後の経過観察ができるといいですよね。
参考文献→jstage.jst.go.jp/article/kagaku… twitter.com/anatomygiraffe…
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博物館には、100年以上前に収集された標本が保管されていることも多い。そんな標本を見るために、頑張って予算を取って遠路はるばる海外まで出向くこともあります。19世紀に集められた標本を宝物のように扱う研究者たちを知っているから、「標本として残してあげたかった」と思ってしまうんだろうな。
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淀川のマッコウクジラの一件をきっかけに、鯨骨生物群集について調べ学習をしたので、少しまとめてみようと思います。今回の海洋投棄について、「それが自然な状態だよね」と思った方にぜひ読んでいただきたいです。というのも、マッコウクジラは本来『沈まぬクジラ』と考えられているからです。1/12
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私は知らなかったのですが、クジラの仲間には、死後沈むクジラと沈まないクジラがいるそうです。多くのクジラ類は死後その場で沈降しますが、マッコウはすぐには沈まず、海上を浮遊しながら分解されていきます。ヒゲクジラでは、セミクジラとホッキョククジラが沈まないと言われているとのこと。2/12