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やはり、絵画の鑑賞はいいものだな。特に風景画には、この私を惹き付ける作品がいくつかあるようだ。
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例えば先程鑑賞してきた絵画では、繊細な青の色が印象的であった。あの美しい色合いを出すのに、描き手は一体どれほどの時間を費やしたのだろうな。
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マフラーが、ない。
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ないぞ。シン、今どこにいる。早く戻れ。
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ならば、なおさら早く戻れ。マフラーも生ハムも今すぐ手にしたいのだ。
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ここはどこだ。シン、迎えに来い。
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おい、まだか
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今宵は、古代ケルト人の祭の日か。
比べるまでもなく、私が望むものは貴様だけだ。
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明日はクリスマスイブか。
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当然だが、貴様は私と過ごせ。それ以外の選択肢を与えるつもりはない。
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特に何をするつもりもないが、共に過ごすことで特別感を味わえるだろう。貴様もそれを望んでいるはずだ。違うか?
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人間の催し事に興味はないが、郷に入っては郷に従え、という言葉もあることだ。貴様が楽しみにしているのなら仕方があるまい。
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明日の夜は存分に可愛がってやろう。私の寵愛を、その身でよく味わうといい。
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おい貴様。今どこにいる。屋敷の中にいるのか。
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貴様がオーブン内に放置していったチキンがいい匂いをさせているぞ。直に焼き上がるのではないか?
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それから、この部屋の飾り付けはこれで終了か?もう少し絢爛としたほうがよいのではないか。使い魔に命じよう。
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別に私は楽しんでなどいない。貴様がクリスマスパーティーとやらを行いたいと言うから好きにさせているだけだ。だから、これ以上この始祖王の手を煩わせるようなことはするな。
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それに、いつまで準備に追われているつもりだ。貴様が一番に気にかけるべきは私だろう。今すぐに顔を見せに来い。それが、今日という特別な日を過ごす正しい姿なのではないか?
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きよしこの夜
貴様と過ごせたこと、嬉しく思う。とても思い出深い日になった。人間の催しも悪くはない。貴様といると気付かされてばかりだな。
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始祖たるもの、人間の風習にも精通していなくてはならない。シンにお年玉を与えたのもそのためだ。しかし、これで終わりではない。まだやらねばならないことがある。
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これより鏡開きを行う。シン、用意をしろ。くれぐれも生ハムを忘れるなよ。
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なんだ、この包みは。……ほう、チョコだと?確かに、想い人にこのようなものを渡すという人間の風習を聞いたことがある。浮ついたくだらない行事だと思っていたが、案外悪くないものだな。貴様の気持ち、有り難く受け取ろう。
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今から髪を切りに行こうと思う。
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嘘だ。騙されたか?
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早く帰れ。今日のことで意見を求めたい。