101
日本の農地が外国資本によって買収され続けている。このまま進むと、将来の農業の姿が、地主が外国人で、小作が日本人や在留外国人になりかねない。実際、ニュージーランドでは土地の所有者が中国人、労働者はアフリカ人という牧場がいくつもある。同じ風景が日本の過疎地で起きる可能性がある。
102
外国人または外国資本が日本の土地を買収すると、「所有者不明」になることが多い。そうなると、税金の徴収ができなくなる。国税庁や徴税吏員が持つ権限は、海外ではほぼ通用しない。所有者が不明になれば、所得税、不動産取得税、登録免許税等のほか、固定資産税も免れてしまう。
103
外国資本による土地買収で問題なのは、所有者が不明になることである。例えば、外国人が土地を購入し、海外に居住して連絡がとれない場合は「所有者不明」の扱いになる。また、外国人が法人名義で買収し、登記はそのままにして海外で土地の転売を繰り返すと、所有者は確実に不明になってしまう。
104
農地の売買については、農業委員会が管理していて一定の縛りがある。しかし、農業委員会が管理するのは農地だけである。耕作放棄地や遊休地に草木が生えて荒れると農地とみなされなくなり、雑種地に地目変更されることがある。こうなると外国資本がその土地を買っても問題ないことになる。
105
外国資本が日本の農地を買収することは合法である。2009年の農地法改正で「一般法人の貸借での参入規制の緩和」が盛り込まれた。さらに2016年の改正で、農地を所有できる法人は「農業生産法人」から「農地所有適格法人」に変更された。この「農地所有適格法人」には外資も含まれるとされたのである。
106
外国人や外国資本が日本の土地を買収することは合法である。しかし、問題はないのだろうか。2011年以降、農地46.7ha、森林7560haが外国資本によって買収されている。このほか、太陽光発電用地として6万ha、リゾート地等として3万〜4万haが買収されている。水源地、温泉、離島なども含まれている。
107
フランス破棄院(最高裁に相当)は10月21日、モンサント(現・独バイエル)の農薬がフランス国内の農家に被害を与えたとして、バイエルに賠償を命じる判決を下した。賠償請求額は100万ユーロ(約1億2200万円)だったが、判決での賠償金額は未定。バイエルは同様の裁判で世界中で敗訴し続けている。
108
カナダの農民パーシー・シュマイザーさんは、50年来、自家採種でナタネを栽培していた。ある日突然、モンサントから「あなたの畑で我が社の遺伝子組み換えナタネが無許可で栽培されている」と巨額の損害賠償を請求された。10年にわたる裁判の結果、カナダ最高裁はモンサント社の訴えを退けた。
109
除草剤グリホサートは人間の生殖機能にも悪影響を及ぼす。コロンビアのバジエ大学とNGO「性と生殖に関する権利センター」は、コロンビア政府がコカ畑への除草剤空中散布を準備していたことに対して、強く中止するよう求めた。グリホサートは生殖能力に悪影響を及ぼすというのが、その理由だった。
110
すでに日本では、大規模農家や法人格を持つ農家にしか補助金が出ない仕組みになりつつある。小さい農家が小さいままで生き延びるのは難しい。しかし、農家が減るということは、地域の文化まで含めた資源がなくなるということである。日本はいったい、どんな国をつくろうとしているのだろう。
111
昔は、農地面積が全部で100ha位という村が普通にあった。でも今は、農水省は100haなら農家一軒で足りると言う。一軒の農家になったら、おそらく外国から来た労働者が5〜10人働くような形になるだろう。「強い農家」はつくれるが、村落は崩壊、農地はケミカル漬け。こんなことをしていいのだろうか。
112
種苗法改正の問題点。これまでは登録品種であっても、農家が自家増殖(採種)することは合法だったが、改正法では違反すると10年以下の懲役または1000万円(法人では3億円)以下の罰金となる。また有機農業農家などはよく種苗交換会をやるが、種苗を持ち寄れば種苗法違反となる可能性がある。
113
種苗法改正の問題は、種や苗の自家増殖(採種)が一律に許諾性となることである。農家が自家増殖(採種)するには、これまで必要なかった手続きや許諾料の支払いが新たに必要となる。政府は、「許諾料はわずかだから心配ない」と言うが、価格や許諾を決定する権利は育成者にあり、当てにならない。
114
種(被子植物)が地球上に出現したのは約1億4000年前と言われる。それは人間が作り出すことのできない命の源だった。工業製品のように生命に特許を与え、特定の企業や個人が莫大な利益を得ることは生命に対する冒涜ではないのか。生命世界への謙虚さを失ってはならない。種苗法改正に反対します。
115
なぜいま種苗法を改正する必要があるのか。現行の種苗法でも、種や苗を自家増殖(採種)してそれを販売することはできない。譲渡する場合も許諾が必要である。また、登録品種を最終消費以外の目的で海外に輸出することも禁じている。つまり、海外流出を防ぐための改正など必要ないのである。
116
政府は、種苗法改正の理由として「優良品種の海外流出を防ぐため」を挙げている。しかし、これは詭弁ではないのか。国内法を強化しても、海外流出を防ぐことは原則できない。だが、条約または協定で規制するか、海外で育種登録をすれば対抗できるのだ。現行の種苗法で十分に対応できるはずである。
117
種苗法改正案が今国会で審議される。この改正は、規制改革の名の下、種子ビジネスへの民間企業の参入をさらに進めることを狙いとしている。自家採種を禁じ、多国籍企業による種子支配への道を開くこの流れは、まさにインドや南米をはじめ世界で問題となっている「モンサント法」そのものである。
118
大規模農業が世界の食料を支えているというのは誤解である。国連の報告によれば、小規模家族農業は世界の農業資源(土地、水、化石燃料)の25%の利用で世界の70%の食料を生産している。一方、工業的大規模農業は、資源の75%を浪費して30%の食料しか提供していない。しかも環境破壊を招いている。
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日本の食料自給率はわずか37%。将来、世界的な食料危機が起こったような場合、国民の多くは飢えに瀕してしまうことになる。実際、TPP協定の第2章24条には、締約国は食料危機を防ぐために食料の輸出を前日までの通告で禁止することができる、とある。政府はなぜ、自給率を上げる努力をしないのか。
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種子法廃止は、日本農業に重大な影響を与えるだろう。実際、インドでは今世紀に入ってから公的種子事業の予算が削られ、種苗研究が民間に委ねられた結果、コットンの種が多国籍企業の遺伝子組み換え種へと統一された。そのため価格が上がり、多くの農民が生活苦から自殺を追い込まれたと言われる。
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種子法が廃止され、都道府県が種子生産や管理に関わらなくなれば、農家が購入する種子が高騰し、農家の経営が苦しくなると予想された。例えば、民間の三井化学の「みつひかり」は、種子の販売価格が20キロ8万円で、都道府県が開発した米の品種の約10倍の価格である。なぜ種子法を廃止したのか。
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2018年に廃止された種子法は、米、麦、大豆などの主要農作物について、国や都道府県の管理のもと、各地域にあった品種を開発したり、優良品種を指定したりする役割を果たしてきた。その結果、農家に優良で安価な種子が提供され続けてきたのである。そんな種子法をなぜ廃止したのだろう。不可解だ。
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2017年、スイスは憲法を改正した。新しく書き加えられたのは「食の安全保障」だった。国民へ安定的食料供給を維持する、農地を保全し、地域の資源が最も生かされる形で食料を生産する、フードロスを減らし、国際貿易は農業を持続可能な形で維持するように行う、等が書き加えられた。日本も学びたい。
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ロシアは全ての種子を国内自給することに決めた。先の国会で先送りになった種苗法改正案を、日本政府は次の国会に再び上程しようとしている。種子を外国に依存することは、自国の「食の安全保障」が脅かされることだと、プーチン大統領は断言している。なぜいま種苗法を改正する必要があるのか。
125
ロシアは2017年から、全ての種子を国内自給することにした。2014年のクリミア危機以来、西側諸国から経済制裁されているロシアにとって、自家採種できない外国企業の種子を毎年買わなければならないのは、大きな負担だった。また、種子を外国に依存すれば食の安全保障を守れなくなると考えたのだ。