26
17歳で発症して、怠薬により5回入退院を繰り返し約40年間入院していた統合失調症の患者が、先日退院した。病状が良くなって退院したのではない。人格が荒廃して、陰性症状がメインとなり、寝たきりとなり施設に入所したのである。おめでたい退院ではない。退院時要約を書き終わり、感慨にふける私。
27
25年前のことだ。息子の誕生日会で息子の友達5人を自宅に招いて、会は盛り上がった。食べ盛りの子供達のために妻が稲荷寿司をたくさん作った。子供達は全部食べきれず寿司が22個余った。子供たちが二階に上がり、ちょっと目を離したら寿司はなくなっていた。横には満足そうな飼い犬がいた。
28
精神疾患の当事者ではよく「治る、治らない」という話題になるが、病状を持ったまま新しい自分を見つけることも大切である。病は全て「負の遺産」ではない。右肩上がりの人生でなくても良い。山登りにおいても、急傾斜の道を急いで登るよりも、回り道をした方が美しい景色を見ることができるように。
29
うつ病の患者さんに伝えたいこと。
「元気の蓄えが少ない時に頑張り過ぎると、残っていた分を使い果たしてしまいます」
30
「暗い」のではなくて「優しい」のだ。
「のろま」ではなくて「丁寧」なのだ。
「失敗ばかり」なのではなくて「たくさんチャレンジしている」のだ。
31
「時薬」という言葉がある。悲しみを癒す一番の薬は「時間」である。どんな悲しみも、時間が経つうち、次第に薄れていく。人によって、悲しみの大きさによって、その時間は様々である。しかし、時間と共に、痛んだ心は少しずつ再生されていく。これは確か。待つんだ。ひたすら待つんだ。
32
精神病(特に統合失調症)を薬を使わずにカウンセリングだけで治して欲しいという家族からの希望がある。この気持ちは良く分かる。家族はストレス論を重視するから。ちなみに、私も精神科医になる前は、カウセリングで治ると思っていた。標準治療は薬物治療である。カウセリングだけでは治らない。
33
統合失調症の平均寿命は一般人と比べて5〜10年短いと言われている。先日診察した中年女性の患者さん、乳癌だった。乳房にしこりがあるという段階ではなく、乳房全体が腫れ上がっていた。既にあちこちのリンパ節と肺に転移していた。自身の健康状態に無頓着すぎる。放置しすぎる。寿命が短い訳だ。
34
「心の病」というのは「脳の病」なのだ。
うつ病:セロトニン・ノルアドレナリン欠乏脳症
統合失調症:ドパミン出過ぎ病
パニック障害:突然襲うパニック脳病
強迫性障害:脳神経細胞クルクル回る病
心は脳にあり、心の病は脳の機能障害なんだよ。
35
愛する人との何気ない日常が一番幸せだ。ただ、一緒にテレビを観る、美味しいものを食べる、いやいや、お喋りするだけでも良い。いや、傍にいるだけでも良い。お金も、名誉も何もいらない。変な損得感情や打算はないだろう。愛することは幸せだ。大切にしなければ。
36
精神疾患の当事者ではよく「治る、治らない」という話題になるが、病状を持ったまま新しい自分を見つけることも大切である。病は全て「負の遺産」ではない。右肩上がりの人生でなくても良い。山登りにおいても、急傾斜の道を急いで登るよりも、回り道をした方が美しい景色を見ることができるように。
37
適応障害について。
仕事には4種類ある。
①簡単にできる
②少し努力するとできる
③できるけど疲れ果てる
④全くできない
③が多いと、適応障害になる。
38
病院で処方された睡眠薬や精神安定剤(抗不安薬)を他人に譲ってはいけません。他人から貰って内服してもいけません。麻薬及び向精神薬取締法違反です。
39
メンタル不調時の心得
・不調を克服しようと、あれこれ手を出さない
・「不調なんだから仕方がない」と諦める
・ユックリ休んで、ボケーと過ごす時間を作る
・好きなことを優先的にやる
・面白い、素敵と思うことは調べてみる、やってみる
・気が向いたら人と会い、とりとめのない無駄話をする
40
医師になる前は、病気になると確実に治す方法があると思っていた。医師になってみて、確実に治す方法が如何に少ないかと目の当たりにして呆然とした。そして、医師になって30年近く経って、人間の自然治癒能力の凄まじさを実感した。基本的には治すよりも、治ることに手を貸す大切さを感じるこの頃。
41
最近の研究結果から。うつ病と双極性障害はかなりかけ離れている。遺伝子的に双極性障害は統合失調症に近い疾患です。ラツーダやエビリファイ、ラミクタールという薬が候補にあがります。とにかく、正しい薬物治療を受けるべきです。リーマス投与で、血中濃度が0.4なんて論外です。
42
うつ病は脳病である。意欲が低下することをうつ病では思考制止と呼ぶ(統合失調症では意欲減退と呼ぶ)。何故そう呼ぶか?健康な時にはきちんと情報を処理して思考することができるが、うつ病になると思考が前に進まない(制止)のだ。いかに脳が疲弊して機能が低下しているかを物語る現象である。
43
認知症の看護について。認知症患者が入院すると、必ず「家に帰る」と口にする。夜になるに連れ訴えは顕著になる。暗くなり寂しくなるからだ。どう対応するか?「入院したので帰れません」との声掛けは駄目だ。益々、不穏になる。「今、家族が迎えにきます。お茶でも飲んで待っていて下さい」が正解。
44
ヤクルト1000が売れている。これには理由がある。「腸脳軸」という言葉を覚えよう。下痢、便秘、腹痛などの腸の機能性疾患の患者を診察して気づく。腸の症状だけでなく、眠れない、落ち着かない、頭痛、食欲がない、意欲がないなどの精神症状を訴える患者が沢山いる。腸の不調で精神を病む訳だ。
45
メンタル不調時の心得
・不調を克服しようと、あれこれ手を出さない
・「不調なんだから仕方がない」と諦める
・ユックリ休んで、ボケーと過ごす時間を作る
・好きなことを優先的にやる
・面白い、素敵と思うことは調べてみる、やってみる
・気が向いたら人と会い、とりとめのない無駄話をする
47
病院で処方された睡眠薬や精神安定剤(抗不安薬)を他人に譲ってはいけません。他人から貰って内服してもいけません。麻薬及び向精神薬取締法違反です。
48
疲れた時に大切なこと
①選択肢を減らす
②今するべきか後に回しても良いことかを見極める
③遠回りしても良いとの覚悟
④人に迷惑をかけるって怯えるな、調子が良い時に恩返し
⑤人に頼れば良い。そして本当に人が困った時に頼られる人になれ
⑥休養は人生に必要と悟る、じっと勝機を待つ
49
病気を克服して逞しく生きる。こういう考え方は好きじゃない。凹んでいる貴方が好きだ。病気と共存する、上手く付き合うことが必要。うつ病、統合失調症などの精神疾患は慢性疾患。今、悩んでいる人に言いたい。焦らずにちょっとづつ進め。3歩進んで、2歩下がっても、1歩進んでいる。休みながら歩け。
50
ストレスにさらされた時の身体症状について
①吐き気、嘔吐型→受け入れられない現実を外に吐き出したい
②頭痛型→筋緊張性頭痛が多い。ストレスで全身ピリピリ
③動悸・息切れ型→心臓が鼓動するまで頑張った。せっかちで負けず嫌い
④下痢・便秘型→断腸の思い
⑤目眩型→足元不安定でフラフラ