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医師になる前は、病気になると確実に治す方法があると思っていた。医師になってみて、確実に治す方法が如何に少ないかと目の当たりにして呆然とした。そして、医師になって30年近く経って、人間の自然治癒能力の凄まじさを実感した。基本的には治すよりも、治ることに手を貸す大切さを感じるこの頃。
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名指しでハルシオンを処方してくれ、デパスを処方してくれと強固に希望する場合、依存薬物の入手目的だけでなく、ネットで高額に転売する意図があると勘ぐる。ネット転売される向精神薬の多くはとハルシオンとデパスだからだ。金を稼ぐ為の受診にも警戒している。
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「心の病」というのは「脳の病」なのだ。
うつ病:セロトニン・ノルアドレナリン欠乏脳症
統合失調症:ドパミン出過ぎ病
パニック障害:パニック脳病
強迫性障害:神経細胞クルクル回る病
心は脳にあり、心の病は脳の機能障害なんだよ。
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メンタル不調時の心得
・不調を克服しようと、あれこれ手を出さない
・「不調なんだから仕方がない」と諦める
・ユックリ休んで、ボケーと過ごす時間を作る
・好きなことを優先的にやる
・面白い、素敵と思うことは調べてみる、やってみる
・気が向いたら人と会い、とりとめのない無駄話をする
5
精神病(特に統合失調症)を薬を使わずにカウンセリングだけで治して欲しいという家族からの希望がある。この気持ちは良く分かる。家族はストレス論を重視するから。ちなみに、私も精神科医になる前は、カウセリングで治ると思っていた。標準治療は薬物治療である。カウセリングだけでは治らない。
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疲れた時に大切なこと
①選択肢を減らす
②今するべきか後に回しても良いことかを見極める
③遠回りしても良いとの覚悟
④人に迷惑をかけるって怯えるな、調子が良い時に恩返し
⑤人に頼れば良い。そして本当に人が困った時に頼られる人になれ
⑥休養は人生に必要と悟る、じっと勝機を待つ
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精神疾患の当事者ではよく「治る、治らない」という話題になるが、病状を持ったまま新しい自分を見つけることも大切である。病は全て「負の遺産」ではない。右肩上がりの人生でなくても良い。山登りにおいても、急傾斜の道を急いで登るよりも、回り道をした方が美しい景色を見ることができるように。
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ストレスにさらされた時の身体症状について
①吐き気、嘔吐型→受け入れられない現実を外に吐き出したい
②頭痛型→筋緊張性頭痛が多い。ストレスで全身ピリピリ
③動悸・息切れ型→心臓が鼓動するまで頑張った。せっかちで負けず嫌い
④下痢・便秘型→断腸の思い
⑤目眩型→足元不安定でフラフラ
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病院で処方された睡眠薬や精神安定剤(抗不安薬)を他人に譲ってはいけません。他人から貰って内服してもいけません。麻薬及び向精神薬取締法違反です。
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双極性障害の患者さんに贈る言葉。
「エンジンが調子良く回転する時期にはアクセルを控え目にし、回転数が上がらない時期には積荷の量を控え目にしましょう」
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精神疾患の当事者ではよく「治る、治らない」という話題になるが、病状を持ったまま新しい自分を見つけることも大切である。病は全て「負の遺産」ではない。右肩上がりの人生でなくても良い。山登りにおいても、急傾斜の道を急いで登るよりも、回り道をした方が美しい景色を見ることができるように。
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ストレスに強い私の娘。悩んだ時に一番大切なことはひたすら眠ることだと言う。15時間近く眠ることがある。夢の中で悩みの答えがある。起きた時に「もう、終わった」と悟ること。睡眠不足の時に悩みの波はMaxで、良く眠るとMinimumになる。睡眠は「浄化」である。
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認知症の看護について。認知症患者が入院すると、必ず「家に帰る」と口にする。夜になるに連れ訴えは顕著になる。暗くなり寂しくなるからだ。どう対応するか?「入院したので帰れません」との声掛けは駄目だ。益々、不穏になる。「今、家族が迎えにきます。お茶でも飲んで待っていて下さい」が正解。
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虐待や戦争などによって心的外傷(トラウマ)を負った人の脳をMRIで撮影するとトラウマを負ったことのない人に比べて平均で1割ほど海馬が縮小している。脳の血流も海馬周辺で滞ることがあり、海馬の萎縮は副腎皮質ホルモンや脳内麻薬様物質の過剰放出によるものと言われている。深刻な疾患である。
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医師になる前は、病気になると確実に治す方法があると思っていた。医師になってみて、確実に治す方法が如何に少ないかと目の当たりにして呆然とした。そして、医師になって30年近く経って、人間の自然治癒能力の凄まじさを実感した。基本的には治すよりも、治ることに手を貸す大切さを感じるこの頃。
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精神疾患から卒業できる時期は、その人なりの生き方を見出した時。誰しも病気に罹らなかったら良かったと思うはず。しかし、一生病気を経験しない人はいないし、人生においてストレスのない生活はあり得ない。病気やストレスがあっても、その人らしい生き方を模索することが病気に負けないことである。
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中学生の時は、小学生の頃が良かったと言う。
高校生の時は、中学生の頃が良かったと言う。
大学生の時は、高校生の頃が良かったと言う。
働いている時は、学生の頃が良かったと言う。
退職したら、働いている頃が良かったと言う。
いい加減に気づけよ。
今が一番楽しいってことに。
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脳の機能障害が精神疾患である
脳の機能が異常に低下する→うつ病
脳の機能が高まったり低下したりする→双極性障害
脳の一部が壊れている→統合失調症
脳の一部がなくなっている→認知症
脳の回路がクルクル回る→強迫性障害
脳の警報装置の誤動作→パニック障害
生来的に脳の発達が遅れる→発達障害
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メンタル不調時の心得
・不調を克服しようと、あれこれ手を出さない
・「不調なんだから仕方がない」と諦める
・ユックリ休んで、ボケーと過ごす時間を作る
・好きなことを優先的にやる
・面白い、素敵と思うことは調べてみる、やってみる
・気が向いたら人と会い、とりとめのない無駄話をする
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最近、精神科医として思ったこと。
悩める人を見ると助言を与えたくなる。何とかその人を立ち直らせたいからだ。その人が自分に必要なものと必要でないものとを取捨選択する脳力がない時には、その助言はお節介になるだけ。そうなると、嫌がらせに近くなる。そっとしておくのが一番良いこともある。
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精神科医が精神疾患を自ら経験したら患者さんの気持ちが分かることがある。私的なことだが、大学生の時、北海道旅行に行って、車ごと崖から転落して生死を彷徨う経験をしてPTSDになった。フラッシュバックや悪夢、車に乗れない状態が続いた。完治まで10年近くかかった。PTSDは大変な疾患だ。
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精神病(特に統合失調症)を薬を使わずにカウンセリングだけで治して欲しいという家族からの希望がある。この気持ちは良く分かる。家族はストレス論を重視するから。ちなみに、私も精神科医になる前は、カウセリングで治ると思っていた。標準治療は薬物治療である。カウセリングだけでは治らない。
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数時間待ちの5分間医療。当然、揶揄される。5分間診察するだけじゃない。カルテに要点を記入する、処方箋を書く、次回の予約をとる、検査オーダーをする。様々なやることがある。実は10分かかる。診察したら、次の患者を呼ぶまでに時間がかかり過ぎると言われるが、裏事情があることを理解して欲しい。