ずっと好きだった人に恋人ができた。まったく騙されたような気分だ。恋愛には興味ないかな、といつも言っていたのに。昔から遅刻癖があるから心配だけれど「相手の子は気が長いから大丈夫」なんて君はいい気なものだ。今日も「5分遅れる」と通知が来る。まあ確かに、5年に比べれば5分なんて一瞬だ。
朝、瞼を開けた彼はまだ眠そうだった。「よく寝た」呑気な顔で欠伸なんかして。私は親指と人差し指の腹でその頬を摘みながらほんとだよ、と笑った。「ごめん、もしかして出かける約束してたっけ?」「うん、そうだったね。今思い出したよ」そこから先は声にならなかった。彼が目覚めたのは二年ぶりだ。