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「絶対にバレない状況でも悪事を犯さないか?」というプラトン『国家』での「ギュゲスの指輪」という思考実験.「罰への恐怖」よりも「良心の疚しさ」を感じることで悪事を犯さないと考える人は,この思考実験がピンとこないかもしれませんが,ではこの「良心」というのは誰の発明か?
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古代ギリシャ料理はおせちです😂😂😂
#謹賀新年
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「歴史研究者はタイムマシンがないから“仕方なく”史料を元に研究しているのではない」という話をしたところ「タイムマシンがあればより詳しく研究ができる」という方がいました.そこで考えてほしいのはタイムマシンで出会ったプラトンが史料にあるプラトンと同一人物であるとどうやって担保するのか?
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タイムマシンを使って前四世紀のアテナイで「プラトン」と名乗る人に出会ったとして,その人が史料にあるアカデメイアの創設者プラトンと同一人物であると確認するには,伝記史料と一致すればいいのか?もしも一致しない部分があればそれは史料が間違っていたのか?同名の違う人に出会っているのか?
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このように考えるとタイムマシンが発明されたからといっても「史料が実は間違っていた」と指摘するのは結構難しそうですし「更なる発見」を史料に追加するのも容易ではなさそうです.プラトンほどの著名人でさえもこのような難題があるのですから,これがマイナーな人物や事件,災害であれば尚更です.
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この難題はタイムマシンに関係なく現時点で難題です.例えばタレス,プラトン,アルキメデスらが「エジプトへ行った」と史料にある場合,そのエジプトは同じエジプトなのか?「これらの史料にある『エジプト』を同じエジプトであると史料の作者は考えている」という解釈に合意するしかなさそうです.
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繰り返しになりますが,プラトンと名乗る人物をタイムマシンで尾行し,彼がエジプトへ行かなかったことを「観察」したとします.この「観察」をもとに「プラトンはエジプトへ行った」という史料を否定できたといってよいのか?そのためには「観察」を裏付ける別の史料と解釈が必要ではないのか?
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ここはかなり際どい部分で,そもそも「過去とはなにか?」ということに関係するのですが,タイムマシンによる「観察」を史料として扱うとしても,最初に提起した,それは史料にある人物や事件と同一であると誰が担保するのか?という難題があるため,結局は史料を読む者の解釈の問題になります.
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タイムマシンという突飛な(そして矛盾をはらむ)思考実験は「歴史」=「史料編纂」ではなく,「史料」=「過去の(常に不足気味の)近似」ではないよ,ということをいいたいわけですが,この突飛な思考実験によりあまりにも自明である「歴史」を再考するヒントになれば嬉しいです.
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厳しいことをいいますが,「学校では習わない〇〇」や「学校では教えない〇〇」といったタイトルの本に警戒心を持つようになると一人前です☺️
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