26
私の彼氏は死神から時間停止の能力を貰ったらしい。
「運命の人の前で初めて時間停止を使えるようになるらしい」
「なにそれw今使えるか試してみて?」
目を閉じて集中する彼。期待を込めたが何も起きない。
「私は運命の人じゃないんだね…」
落ち込む私の左手薬指に見覚えのない指輪がはまっていた。
27
毎晩泥酔して帰ってくる息子を叱ると
「一度も泥酔したことないクソ真面目人間に何がわかんの?」
と言われ、大学生相手を納得させるには自分も経験すべきと思った。
『父さん今どこ!?』
電話で怒る息子。それは俺が聞きたい。死ぬほど飲んだ結果、広大な海に浮かぶ船の上で1人、拳銃片手に目覚めた。
28
「#死と打って文章が終わるまでやってください で何になる?」
友人に言われ試す俺。
「昨日検索した小説『死の秘宝』。お前は?」
すると友人は虚ろな目で、
「い、行かなきゃ…」
と言って立ち去った。数日後、未踏の谷で『死の谷の方』という文字を表示したスマホを握る、大量の自殺体が発見された。
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「非HSS型HSPぴえん♪」
「全人口の12%♪」
SNS上ではHSPアピールをする人が増えた。ブランド品のような希少価値があると思っているみたい。
「またジャムのフタがない…」
それに比例して私の悩みも軽くあしらわれることが増えた。お願い。自分を着飾る道具に使わないで。荒れた部屋を前に一人思う。
30
中学生の私はフリマアプリで使用済みマスクを売っている。パパとママには内緒だ。
『唾液つけてね♪』
購入者にDMで頼まれる私。気持ち悪いけどネット上だし大丈夫!
「匿名配送できた!」
アプリの機能でお互いの住所も非公開で送れて安心!
「これ何!?」
パパを怒るママ。私のマスクが家に届いた…
31
「嘘でしょ…」
連続殺人事件の速報を見た私の体は震える。これで被害者は8人目らしい。逃亡中の犯人は30代だと予想されていた。
「人を何だと思っているの!」
私は被害者でないし、被害者面をするつもりはないがあまりにも酷い。これで記念すべき10人目だし、私は20代よ。ナイフと共に私は家を出た。
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「お前らのせいでガンプラ高騰だ」
男は言う。家で寝ていたのに…ここはどこだ?
「転売の稼ぎは月10万円以上か。俺は月1億だ」
ナイフを取り出す男。
「何する気だ!?」
「人間を安く仕入れて中身を高く売る。お前らとやってることは同じだろ?」
気付けば俺の体はプラモデルの部品のようになった。
34
20XY年。○▽国の王の俺は国民の個人情報が入ったUSBメモリを紛失した。
「パスワードは簡単ですか!?」
記者会見でリポーターに聞かれる。
「英数字13桁だから大丈夫だ」
俺の発言にネット騒然したが問題ない。本当は15桁。13桁を打てば警報とGPS機能が作動する。
ビー!
突然リポーターのPCが鳴った。
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「キスマーク+100円っと」
私はフリマアプリに書き込む。大学生で一人暮らしの私はお金がなく、使用済みマスクの売買をしていた。
『唾液も垂らして?』
「仕方ないなぁ」
アプリのDMで購入者に頼まれ、要望に応える。
「できた!送ろっと!」
アプリで相手の住所を確認した私は驚く。
「私の実家…」