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最後はPR会社です。「社長、パーパスで社員の心を一つにしましょう。社史に未来永劫残りますよ」これを聞いた社長のメンタルペニスは絶頂を迎えます。歴史という、その甘美な響き。家庭を顧みず働き、同期を蹴落とし、上司にゴマを擦って長く辛い出世レースを先頭で駆け抜けた者にのみ与えられる褒賞。
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男性社員からは不満続出です。今まで男だからと理不尽なパワハラや転勤に耐えてきたのは、一体何のため?一方、女性社員も困りました。経験を積む機会がないまま下駄をはかされ、肩書きだけ変わっても急にマネジメントなんてできません。その頃、社長は女性活用セミナーで雄弁に語っていました。
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社内はまたしても大混乱。そもそも、氷河期世代の女性社員は少なく、候補者が足りないのです。のんびり働きたいワーママを拝み倒し、中途採用者をかき集め、何をするんだか分からない部署をたくさん作り、立派な肩書きを次々と与えました。ニューヨークやロンドンなど先進国の駐在枠も女性優先です。
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次は広告代理店の番です。「社長、ウーマノミクスの推進が鍵です。女性活用で会社のイメージを大胆に変えましょう」。広告マンがこう語りかけると、社長は深く頷きました。女性管理職3割という目標が高らかに掲げられます。もちろん、社外取締役に元女子アナを起用したことは言うまでもありません。
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取引先企業も大困りです。「すこーぷ3?なんじゃそりゃ?」現場の社員も対応にてんてこまい。投資をせず、精神論だけに頼った環境経営なんて絵空事だと誰も言い出せない中、社長は大満足です。社有車のクラウンハイブリッドの後部座席で、フルカラー印刷の環境報告書を読んではニコニコしています。
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困ったのは現場の社員です。賢いコンサルがエクセルのマクロをいじって作った温暖化ガス削減目標は、到底実現不可能な代物でした。でも、ノリノリの社長を止められる人間はいません。気がつけばオフィスのコピー機の台数は半減し、電気は薄暗くなり、エアコンの温度は夏は暑く、冬は寒くなりました。
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「社長、なんといっても時代は環境経営です。競合他社に先駆けてカーボンニュートラル宣言を発表し、SDGsで ESGでサステナブルな会社であることを世間にアピールしましょう!」コンサルタントが耳元で囁きます。それだ!社長は思わず大興奮。言われるがままに17色のSDGsバッジを全社員分発注しました。
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そこへ、コンサルタントと広告代理店マンとPR会社の営業がやってきました。3人は「社長、我々なら御社をピカピカに輝かせることができます。将来、私の履歴書を連載することも可能です」と言ったものだから、大喜び。年功序列の社内には上に物を言えない人間しか残っておらず、誰も口を挟めません。
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むかしむかし、ある所に世間体が大好きな社長がいました。社長は「もっと注目されたい!カンブリア宮殿で小池栄子と対談したい!」と嘆いては、経営企画室の社員達を困らせていました。ある日、社長が「今までにないアプローチで我が社を世間にアピールしたい」と言い出したものだから、会社は大騒ぎ。
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昨夜は「タワマンも流山ももう古い、時代は守谷です!茨城に住んで広々した家でフルリモートで働きながら週末はコストコで過ごすのが人類にプログラミングされた本当の幸せなのです!」と寿司屋で絶叫してたら、こなれた感じの姉ちゃんを連れた男が嫌そうな顔でこちらを見つめていた。ごめんなさい。
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東工大に筆記なしで入学できる女子枠ができた結果、オタサーの姫と「性欲に基づかない優しさ」でWebテストを代行してくれる甲斐甲斐しい彼くんが量産されると思うと胸が熱くなるな。女子枠を作るなら、せめて学力に基づく選抜はちゃんとした方が…と思ったが私文卒だから何も文句言う資格はなかった。
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28歳OLです✨ひろゆきが「円はオワコン」と言っていたので、入社以来コツコツ貯めてきた500万円を1ドル150円の時点で全部ドルに変えました💵為替も経済もよく分からないけど、超低金利に慣れきった日本企業が利上げに耐えられると思わないし、日銀も世界の流れに追随できずYCCを解除できないかなって💦
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子豚や孫豚たちの奮闘ぶりを、お母さん豚は目を細めて見ています。賃貸が賢い、一軒家が安心、タワマンこそ至高ーー。そんな単純な「正解」はないと、最初から知っていたのです。大事なのはどこに住むかではなく、そこでどう暮らすかです。大切なことに気づいた子豚達の将来に、幸多からんことを(完
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では、子豚達の人生は失敗だったのでしょうか?いえ、そんなことはありません。母豚が子豚達に贈ったのは立派な学歴でもマンションの頭金でもなく、困難に直面し傷つき倒れても、歯を食いしばって立ち上がる姿勢でした。SDGsでも謳われる、レジリエンス(強靱性)。子豚達は、決してへこたれません。
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嫉妬、悪意、無関心、優越感。人の心の暗部に潜む、後ろ暗い感情。そう、現実世界に狼なんていません。私たちの心に巣食う、暗闇を好む狼が子豚達の家を襲ったのです。下劣で扇情的なタワマン文学を書く私の心にも、そんな低俗なものを喜んで拡散するあなたの心にも、狼は住んでいます。違いますか?
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「昼から酒飲んで年収1200万とか、クビになって当然ww」インターネット上では、自分より恵まれた人間の転落劇に拍手喝采を送り溜飲を下げる哀れなTweeps達の投稿がバズり散らかしています。嫉妬と悪意が渦巻く、混沌のるつぼTwitter。人々の声を世界に届けるSNSをこんな醜い場所にしたのは、一体誰?
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しかし我々が想像している以上に、現代社会における「成功」とは薄氷の上に成り立つような、頼りなく不安定なものでした。キャリアアップを目論み外資系IT企業に転職した三男でしたが、突如、米国本社が買収されます。私文卒でソースコードを書けない三男の子豚は、瞬く間にクビになってしまいました。
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最初に異変が訪れたのは長男の子豚でした。なんと、社内婚した一般職の妻が「子育てに向き合いたい」と言って仕事を辞めてしまったのです。専業主婦で暇を持て余すようになり、堅実だった妻は変わってしまいました。「吉祥寺に住みたいな」「娘は私立小学校に通わせたい」。浪費欲が止まりません。
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三男の子豚はパリピ。慶應ではテニサーの副代表を務め、博報堂に就職後ほどなくデキ婚して湾岸にタワマンを買いました。「どうせ五輪後に暴落するぞ」「住宅ローンは年収の5倍におさめたら」という、兄たちの助言はガン無視です。「刹那的に今を生きる」、それが福沢諭吉が教えてくれた学問のすゝめ。
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次男の子豚は明治卒でNTT子会社勤務。おっとりした性格で「周りのみんなも買ってるし」と、流されるがまま六郷土手駅徒歩9分の戸建を買いました。20坪の狭小邸宅は少し窮屈ですが、贅沢言っても仕方ありません。晩酌は発泡酒、子供の習い事は公文と少年野球。休日は少年野球のコーチで大忙しです。
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長男の子豚は賢く、東工大を卒業し日本生命でアクチュアリーとして働いてます。「人口減少が続く日本で借金を背負って家を買うなんて馬鹿、空き家問題とか知らないの?」と、購入ではなく賃貸を選択しました。本棚には橘玲や榊淳司の本が並んでおり、つみたてNISAとiDeCoで資産形成もバッチリです。
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むかしむかし、ある所にお母さん豚と3匹の子豚がいました。お母さん豚は「あなたたち、そろそろ家を出なさい。実家で暮らす男は婚活市場で地雷扱いされるし、子供部屋おじさんになられても困るわよ」と、子供たちの独立を促しました。愛する我が子をあえて突き放す、それが彼女なりの愛情表現です。
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イーロンマスクが「とりあえず社員半分に減らそう。混乱するかもしれんけど走りながら考えよう」とやってる間、俺たちの日本企業は仕事量そのままで社員数を減らして現場の負荷を高めつつ、更に新卒採用を絞ることで転職市場で価値がない働かないオジサンの介護を若手にさせる鉄壁の布陣を敷いた。
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男性が悲しそうにスマホをポケットにしまった、その時です。ベントレーが突っ込んできました。「ああっ!」男性は転びました。「馬鹿野郎、ひかれたいのか!」運転席から黒光りした男が怒鳴ります。金銭的な成功こそが人の価値だと信じて疑わぬ人間だけが出せる、己の非を認めぬ傲慢な声。資本の暴力。
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むかしむかし、あるところに情報商材売りの男性がいました。「副業で月収100万円を稼ぐ有料noteはいりませんか?あなたもFIREしたくないですか?」男性はTwitterで声を枯らし、インスタで拾ったホテルや高級腕時計の写真を貼り付けた投稿を繰り返します。でも、4950円の有料noteはちっとも売れません。