651
日本に竹中氏が現れたのは、返す返すも日本の民にとって不幸なことになってしまった。竹中氏は安倍氏銃撃事件を見て引っ込んだのかと思ったら、自分の仲間が思いの外元気なのにつられて、またぞろ顔を出しているようだ。もう、取り返しがつかなくなったかもしれない。嗚呼!
652
子どもが本音を話しているときに、絶対に言ってはいけないことがあります。 正論です。「お前の考えは間違っている」 「未成年なのにタバコを吸うことは許されない。 身体にも悪い」や「このままだと、いい学校に行けなくなる」などといった説諭です。 →
653
NHKスペシャル「中流危機を超えて」は、実に腹立たしい内容だった。番組に登場した駒村とかいう慶応大教授は、竹中平蔵氏と寸分違わぬ主張で、ここ二十年の日本の有様から何も学んでいないようだ。
nhk.jp/p/special/ts/2…
654
拝啓 岸田首相
首相が「新しい資本主義」と主張された時、正直、私は期待しました。新自由主義で痛めつけられてきた日本。貧富の格差が拡大し、貧しい人は這いあがれず、新型コロナで生活がままならなくなった人が増えました。そうした人たちに光を当てる経済政策がついに始まるのだ、と。
655
しかし、首相が「資産所得倍増計画」と言われた時、耳を疑い、呆気にとられました。「それでは『新しい資本主義』どころか、新自由主義、あるいは株主資本主義そのままではないか」と。その時の衝撃は、私ばかりではなく、多くの人たちも感じたようです。
656
首相が5月にロンドンの金融街シティーで講演され、「資産所得倍増」を唱え、だから「日本に投資してほしい」と述べたこと、私は次のように解釈しました。首相は、「もし『新しい資本主義』で労働者に手厚く配分し、富裕層に課税するようなら、日本株を売り浴びせるぞ!」と脅されたのではないか、と。
657
しかも、株主資本主義の先進国だった英米が、見直しを始めていると聞いています。そんな中、日本まで株主資本主義の見直しがなされれば、海外投資家は金儲けする場所を失ってしまいます。そこで岸田首相に働きかけ、「新しい資本主義」を改めさせようとしたのではないでしょうか。
658
「資産所得倍増計画」なら、理屈としては、国民全員が株などの資産を持ちさえすれば、国民も資産所得を得る立場となり、首相が訴えてきた「新しい資本主義」とも理屈の上では整合する、と、首相に入れ知恵した方がいらっしゃるのでしょう。そうでもないと、この変貌ぶりは説明できません。
659
しかし、首相もすでにご存じでしょう。2019年の調査では、日本人の半分以上の家計で、貯蓄が100万円以下しかございません。この人たちは、突発的なことがあれば貯蓄をすべて吐き出さねばなりません。株を買う余裕が一切ない方たちです。それが国民の半数以上です。
atpress.ne.jp/news/190356
660
新型コロナでさらに困窮した家庭が多いことを考えると、この数値はさらに悪化している恐れがあります。株などの資産を買うには、何年も使わずに済ませられる現金が必要です。しかし、そんな余裕もなく、新型コロナでそのわずかな貯蓄も使い果たした方が大勢いらっしゃるようです。
661
従って、残念ながら、「資産所得倍増計画」は、国民の半数以上には、一切無関係な政策となる恐れがございます。もし、首相が全国民に日本の株を分配するというのなら別ですが、首相のこれまでのご発言から拝察するに、自らの貯蓄で資産を買うように、というご意図のようです。だとすれば。
662
国民の半数には、「資産所得倍増計画」は無意味なものになり、資産を形成できる、多少なりとも余裕のある人たち、あるいは富裕層だけが所得を倍増させ、豊かな生活を送れる、ということになります。つまり、貧富の格差をますます拡大することになります。
663
日本の労働者のうち、年収200万円以下が28.3%、男性は12.3%、女性は49.7%が年収200万円未満です。私の知人でも、関関同立の、関西では有名な私立大学出でも、200万を超えると「けっこうもらっているね」という感想になるそうです。低所得化が非常に進みました。
mhlw.go.jp/shingi/2010/02…
664
低賃金層が多く、貯蓄が100万円もない社会状況で「資産所得倍増計画」を推し進めれば、格差は広がるばかりです。しかも、「資産所得」のお金はどこからひねり出すのでしょう?それは、働く労働者が稼ぎ出したお金ということになるでしょう。株主は、労働者から搾取する形となります。
665
となると、「資産所得倍増計画」とは、労働者からさらに搾り取り、低賃金化し、それで浮いたお金を株主に配分する、という、株主資本主義そのままとなります。それが果たして首相の望んでいた「新しい資本主義」なのでしょうか?首相への国民の期待は、裏切られたと申すべきではないでしょうか。
666
しかし、先日のNHKスペシャル「中流危機を超えて」を視聴し、首相への信頼は、完全に崩れ去ってしまいました。この番組で登場した駒村教授(慶応大)は、低賃金の中でも必死になって働いてきた労働者さえ「企業依存」だとし、新しい仕事に順応できないなら解雇できる社会に変えることを示唆しました。
667
成長分野に人材を集め、成長分野に順応できない人材は切り捨て、国が用意するセーフティーネットで救う、と駒村教授は提言していました。しかしこの主張は、たとえば竹中平蔵氏が20年来主張し、日本企業と政府が実践し、現在の日本にしてしまった政策と、瓜二つです。
668
その結果、日本企業はイノベーションが起きず、雇用も増えず、賃金も増えず、イノベーションもだから起きない、という悪循環を続けてきました。竹中氏の路線がこの悪循環を生んだわけですが、番組で登場した駒村教授は、この政策をさらに強化せよ、と主張したわけです。
669
このNHKスペシャルは、「政府寄り」と感じる方が少なくなかったようです。ということは、駒村教授に述べさせたのは、岸田首相など、政府首脳の方針なのでしょう。「新しい資本主義」は、派遣社員や契約社員の形であろうとなんとか雇用してきたのを、全員解雇するものということになります。
670
しかし、こんなことをしたら、「有能」とされたわずかな労働者と経営者、そして株主(富裕層)だけがお金を手にし、貧しい人は仕事も得られず、国から与えられるわずかな「お恵み」で生きていく、そんな社会にしよう、ということになります。ですが、この社会は成り立たないように思います。
671
駒村教授の主張は、これまでの竹中平蔵氏の主張と違いが見えないくらいに一致しています。ということは、竹中氏と同様、「成長分野の邪魔をしないように、この分野には減税すべきだ」と主張することでしょう。すると、「有能」とされた労働者、経営者、株主はたくさんの利益を得ますが、国には。
672
経済という言葉は、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う(経世済民)」からきている、ということは、首相もよくご存じでしょう。しかし、駒村教授の提言をもし実現すれば、富裕層はますます富み、貧しい人はますます困窮し、貧しい人の憎悪は政府に向かい、社会不安は増幅するでしょう。
673
つまり、駒村教授の提言は、「世を乱し民を棄(す)てる」、乱世棄民の政策だと言えます。しかし駒村教授がNHKスペシャルに出演したということは、政府の考えでもあるのでしょう。だから、私は首相に抱いていた信頼が失われてしまった、と申し上げたわけです。
674
戦後昭和の日本が、2000年代に突入するまで、数多くの世界的商品を開発し続けられたのは、全国民的に生活にゆとりを持てたからだと考えます。しかし竹中平蔵氏による政策が2000年代初頭に始まってから以降、日本は世界で強みのある産業を次々に失いました。
675
ということは、竹中・駒村路線は、結果的に日本を弱体化させる政策だと、歴史が示していると言えます。もうこんな政策は、続けるべきではありません。首相が「新しい資本主義」と語り始めていたころの初心に戻り、日本の強みを取り戻すべきです。伏してお願い申し上げます。