考えたこともない質問で、先生は「血流量が十分に補助されているので幸せだと思う」と答えるしかできなかったと言います。 この出来事は先生に“先端技術"への執着と慢心に気づかせ、医療機器開発の本来の目的である「患者さんの幸せ」のために技術はどうあるべきかを考えさせるきっかけとなりました。
梅津先生は日本でも数少ない医学、工学の博士で早くから「工学による臨床現場への貢献」を目指し、まさに日本の医工連携の先駆けとなった方です。 間違いなく世界の人工心臓開発を最前線で開拓し続けたパイオニアの一人であり、先生がいなければ今の人工心臓研究は無いと言って過言ではないでしょう。
むしろ恥ずかしがって頑なに拒んでいるようでした。 たぶんオトナなら誰もが「せっかくの機会なのに!」とむず痒くなる場面だと思います。「そこに書いてあることを聞けばいいんだよ!」と。 質問を急かす両親に、BENは怒りを滲ませながら「聞きたいことはもう全部わかった!」と言いました。
さすがに恥ずかしくて震えますが、唯一の救いは彼が「『野球へ行こう』けっこーいい曲だねえ、これ好きだわあ」と言ってくれていたらしいということ。 BEN、やっぱり君は優しいね。 そんなこんなで安久工機の見学はもう少し先になります。 ※ちなみに彼はTwitterでの反響のことを知りません。
最後に、最近BENが気になって仕方ないのは 「 3 音 ギ ャ ロ ッ プ 」 だそうです。なんのこっちゃ! つづく
全てのモノづくりにはドラマがあります。 そんなドラマの先にまさかBENのような小学生が突如現れる“つづき”があったなんて。しかもBENと安久工機が実は出会う前から出会っていたなんて。 私からしたらまさに奇跡です。 これがどれだけ素敵な気持ちか、少しでも伝われば幸いです。
後に先生は 「今だったら『このヤギは今、幸せではない。実臨床の現場を想定して、患者さんに少しでも負担のかからない治療環境を整えていくことを念頭に、絶えず努力しないといけない』という答えが用意できる」 と語っています。 (人工臓器47巻1号 2018年)
その後梅津先生は、補助人工心臓の機能評価を動物実験に依存することなく、機械的に血液循環の様子を再現するための装置の研究を開始することになります。 こうして生まれたのが、安久工機が試作開発に携わり、後にBENが見つけることになる当社HPの「機械式血液循環シミュレーター」なのです。
先生は一通り見学が終わると講義室で質問タイムを設けてくれました。 私はBENがこの時のためにたくさんの質問を考えてノートにしたためていたことを知っていたので、さぞかし盛り上がるんじゃなかろうかと勝手な期待をしていました。 しかしなぜかBENは一向に質問をしようとしません。
とかく私たちは「信頼」と「期待」を混同してしまいがちです。 子供を信じているつもりで過大な期待をかけ、彼らの一挙手一投足に一喜一憂し、まるで彼らの人生が自分の人生であるかのように境界を曖昧にしてしまいます。 彼らは言葉にできないまでもその歪みを敏感に感じ取っていると思います。
そんな梅津先生は80年代にヤギを使った補助人工心臓の慢性動物実験を行っていました。 (余談ですが私の父も同じ研究所で一緒でした) 当時「動物実験がうまくいけばそのままヒトに使える」と思っていた先生は、実験が軌道に乗り始めたこともあって「そろそろ患者に使えるのでは」と考えていました。
そして今回ダメ元でお願いしたところ、梅津先生直々に早稲田大学の研究センターをご案内いただけることになりました。 それも、先生からの「Yahooニュース見ました。面白い小学生来るみたいですね。」と頂いたご連絡に乗っかってお願いした結果です。笑 本当にお優しい…頭が上がりません。
世界最先端の医療機器を開発している自負があった先生は、ある日ご自身のお父上を実験現場に招き入れ、「どうだ、これが最先端の医療だ、すごいだろう。もうすぐヒトに使えるようになるんだ。」と自慢したそうです。 多くの失敗を克服してようやく辿り着いた技術に大きな自信を持っていました。
私の祖父である先代が急逝した時も駆けつけてくださいました。 当時高校生だった私は「おじいちゃんは素晴らしい人だったよ」と声をかけられ、その時初めて祖父が早稲田で研究開発を手伝う傍ら、学生たちに図面の書き方などを指導していたこと、その中に梅津先生もいたことを知りました。
「せっかくなんだからシェフに得意のペペロン食べてもらえよ!」「おい何黙ってんだよ!」「こんな機会なかなかないぞ!」 などと言われようものなら、 「うるせぇ!お前のだけ毎回コンソメ入れてんだよ!!頼むから黙ってろこのバカ舌!」とブチギレたくなると思います。(美味いんだけど)
私は料理がささやかな趣味でよく友人を招いては食事を振る舞ったりしています。 そこそこ褒めてもらったりデキに驚かれたりもしてありがたいのですが、 もし悪友の一人が私をLA BETTOLAに連れて行って落合務シェフに無理矢理引き合わせ、 「シェフ!こいつの作るパスタめっちゃ美味いんすよ!」
私が梅津先生に初めて会ったのはおそらく生まれてすぐのことでよく覚えていません。 幼少期、何度か両親に連れられてご自宅にお邪魔しました。 電車好きでおしゃべり好きなたまに会う優しい人という印象で、その時はこの柔和な笑顔のおじさんがどんな方なのか想像もできませんでした。
私にとっても学びの多い二日間になりました。 もし私に子供がいたとして、彼らの興味関心を最大限に引き出すために親としてどう向き合うべきか、という問いに対するヒントのようなものが見えた気がします。 それは「信じること」と「期待しないこと」の二つじゃないかな、と思うのです。
個人やモノづくり初挑戦の方が町工場に見積もりを依頼する時、一番高くなる頼み方と一番安く(適正に)なる頼み方の話です。 町工場の当事者が言うのもどうかな…と悩みますが、モノづくりに関わる全ての方々にハッピーになっていただきたいので。  ※以下、あくまで“傾向”です※
せっかくだし、BENも喜んでくれるといいなぁ。 いろんなものを見て、たくさん吸収して、将来のモノづくりのタネにしてくれたらいいなぁと思います。 何がきっかけになるかなんて誰にも分かりませんからね。 そんなわけでせっせと包囲網を強化しながらBENが来ることを楽しみにしている毎日です。
私の父が50を超えて早稲田の博士課程に入学したのも梅津先生のお勧めがあったからです。 よりによってその年に急逝した祖父に代わって父が社長を継ぎ、なんとか経営と研究を両立できたのも梅津先生のお力添えがあったからに他なりません。 親子どころか私を含めたら三代でお世話になっています。
「いいモノ思いついた!」      ↓ 「売れる気がする!」      ↓ 「試作っていくらだ?」      ↓ 「とりあえず試作屋に聞いてみよう!」 この流れ、危険です。 勢いがあるのもステキですが、モノづくりのステップを知っておくことも重要です! #モノづくりご依頼はじめてガイド
「 こ こ で 働 か せ て く だ さ い ! ! 」 さすがに笑いました。 テンパった私は「そ、それじゃ児童労働になっちゃうよ」などというワケのわからないことを口走っていました。 「今からお前の名前はBENだ!」 と返す余裕はありませんでした。
そんなこんなで中身の濃い1日目を終えました。 安久工機に帰ってきたBENはまだまだ話し足りなかったようでしたが、さすがに社長も疲れていたのでこの日はこれでお開きとなりました。 一応次の日の予定は自由行動としていましたが、BENの強い希望により終日安久工機見学となりました。
さて、今日は「試作製作の見積もり算出までのステップ」についてご紹介します! モノづくりはおおむね、仕様検討-構想設計-基本設計-詳細設計…と進むわけですが、詳細な見積もり金額が判明するのはどうしても『詳細設計が終わった後』になります。 #モノづくりご依頼はじめてガイド