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『寛平御記』(宇多天皇)
「寛平元年(889)二月六日。
朕閑時述猫消息曰。驪猫一隻。太宰少弐源精秩満来朝所献於先帝。愛其毛色之不類。余猫猫皆浅黒色也。此独深黒如墨。為其形容悪似韓盧。長尺有五寸高六寸許。其屈也。小如秬粒。其伸也。長如張弓。眼精晶熒如針芒之乱眩。耳鋒直竪如匙上之不搖。
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この子に声を掛けるんだ。『ね、心ある生き物なんだから、僕の気持ちを判ってくれるよね?ね?』って。……でもこの子、小っちゃくアクビをして、じっと僕の顔を見上げるだけ。何か言いたげなんだけど、話してはくれないんだ……。
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え?違う違う。この子の才能が素晴らしいからって言うんじゃないよ。ただ、せっかくお父様から頂いたものだから、つまらないヤツだけど、大切にしてるってだけ。(……ぜ、絶対、好きとかじゃないんだからねッ!)
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お父様は、この子が献上されて数日間可愛がったあと、僕にくれたんだ。それから5年、僕が育ててる。毎朝必ずミルク粥を食べさせてるんだよ。
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この子、五禽の動きを真似た健康法、「導引術」が好きみたいで、いつも頭を低くして尾を地面に付けるようにして歩いてる。猫背を伸ばせば2尺くらいの長さにもなるよ。毛色がキレイなのも、その健康法のせいかな。そうそう、他の猫なんかよりも、ずっとずっとネズミをたくさん捕ることが出来るんだよ。
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瞳はキラキラとまぶしいほどに輝き、耳は直立するスプーンみたいで揺れない。丸まったときは、足も尻尾も見えない。お堀の中の黒い宝石みたいなんだ。歩くときは音もなく声も立てない。そう、ちょうど雲の上の黒い龍みたいだな。
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他の猫の毛色は浅い黒だけど、この子は墨みたいに深い黒色。まるで『戦国策』に出てくる伝説の名犬・韓盧みたいな姿をしてる。体長1尺5寸、体高6寸くらい。屈むとキビの小さな粒みたいで、伸びをすると張り切った弓みたいなんだ。
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今日はちょっとヒマなので、ネコのことを語ってみようと思う。まるで黒い名馬「驪」みたいな黒猫一匹。これは大宰少弐の源精が退任する時、お父様(光孝天皇)に献上したものなんだけど、他の猫なんか問題にならない美しい毛色をしているところがラブリー。
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本日は2月22日、ニャンニャンニャンで「猫の日」だそうですね。特に今年は2022年ですから、も一つニャンニャンです。
猫は『枕草子』や『源氏物語』にも愛玩動物として登場しますが、有名なのは宇多天皇の寛平元年(889)二月六日の親ばか日記。興味深いので「なりきり訳」をしてみたい思います。
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海苔は『養老令』にも「紫菜」として登場する日本古来の食材ですが、今話題の鎌倉初期では、源頼朝が朝廷に献上したしたことが『吾妻鏡』に記されています。
『吾妻鏡』
「建久五年正月卅日壬辰。伊豆国甘海苔被進京都。雑色吉野三郎為御使云々。」
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いまやすっかり定着した節分の行事食「恵方巻」は、昭和初期に海苔商が広めたとも言われますので、海苔のお話をしてみました。
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