26
恋人の家にお招きされたんだけど、なに着て行ったらいいの?という私の質問に、TLの全裸中年男性フォロワーたちから「スラックスやろうなあ」「スラックス履いてこ」「スラックスに綺麗めのシャツがよい」と次々にアドバイスが届いて、全裸中年男性も恋人の実家に行くときは服を着るんだなあと思った。
27
28
きっと先生方は研究室の鍵を閉めながら、おや先生も国文科の研究室に? ええ、先生もですか。なんでも生ものがあるそうで…。いったい何があるんでしょうなあと、立派なカイゼル髭を触りながらお話なさったに違いありません。しかしあるのはカステラです。
29
挫折に次ぐ挫折の末に弊学へ流れ着いた私は、入学式で大学の名前の入った八つ橋が売られているのを、あんなもの誰が買うのだろうと小馬鹿にしながら眺めていた。けれど、その八つ橋を父が大量に買い込み、職場で「うちの子が大学へ入ったんです」と喜び配っていたという話を聞いて、とっても後悔した。
30
(どうして変わってしまったんでしょう?)もちろんコロナもありますが、やはり能を芸術として観るようになったのが大きいですね。そしてこの風潮は、関西より関東の方が強いです。(歌舞伎でも観劇中に何かを飲むと嫌な顔をする人がいますね)そういう人の方が野暮なんです。
31
古文漢文不要論がTLを賑わすたびに、私はこの話を思い出すよ。エリートとパンピーの分断を生まないためにも、ある程度の教育は必ずあった方がいい。どんな田舎の貧乏人にも「春眠暁を覚えず」を習う機会があって、孟浩然先生に「ほんまそれな!」をすることのできるチャンスは残しておくべきだと思う。
32
恋人、京都の大学に通い始めてもう三年になるのに、コロナ直撃世代だから、祇園祭を一度も見たことがないらしい。私が、食べられない粽の話をしたら「またまた~」という顔をしていたけど、本当だよ。京都の人はケチだから、食えない粽を売ってんの。
33
例年の通り、ヤマタノオロチが酔って寝てしまうと、かぶりつきの私たちは、口々に「寝たらいけんわァ」と声を漏らす。すると今まで筵に背を向けていたスサノオが、ひょいと振り返って「そうじゃなあ、寝ちゃいけんわなァ」という。私たちはおかしくって「そうじゃそうじゃ」と声をかける。
34
その間、切られ役のヘビは、まだ九月の暑い時分というのに、不自由な姿勢のままじっと刀を待っている。いまでこそ歌舞伎を観に行っても、田舎者とバレないようにすまして座っているけれど、いつかあのお神楽の晩のように「封印切ったらいけんわァ」と声に出してみたいなあ思う。
35
父のお供で「シンドラーのリスト」を観てる。毎回、歴史と文学の教師が「私が役に立たない? 間違ってる、君たちは間違っている。私は歴史と文学の教師なんだぞ。それが役に立たない?」といいながら、SSに連行されるシーン(研磨工と偽ることで助かる)で泣いちゃう。
36
知り合いのおねえさんは、京都へ嫁いだ最初の年に、近所から貰った祇園祭の粽を食べようとしたと言っていた。「ひとりで食べようと思って、旦那が寝静まったのを見図らって包を解いたら何も出てこないの。よそ者だからいじめられてるのかなって思った」とのこと。いい話だよね。