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怪異に巻き込まれて、異界の物を食べたり覗いちゃいけない鏡を覗いたりと、全てのタブーを元気いっぱいに破っていく霊感0な五月雨と、お腹を痛めつつ五月雨の後始末をして怪異を倒していく霊感MAXな村雲のとうらぶホラーがここにあるって聞いたんですけど…
ここにあるんだろ?知ってんだぞ!出せ!
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とうらぶホラー
ある日、部屋に鯰尾が飛び込んできた。
「主、主、聞いて下さい…ううっ、ぐすっ、とても悲しい事があったんです。
一兄に叱られた時よりも、俺の育てたヒヤシンスが枯れてしまったことよりも悲しい事なんです。
ポチが……俺の大切な大切な友だちのポチが死んでしまったんです。
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とうらぶホラー
俺の本丸の今剣は絵を描くのが大好きだ。
暇さえあればクレヨン片手に画用紙に色んな絵を描いている。
しかし、まあ、何と言うか…今剣は独特な感性を持っているので正直言って何を描いているのかパッと見ただけでは分からない。
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とうらぶホラー
主がその油絵を怪しげな骨董市で買ってきたのは、五月も終わりの事だった。
「綺麗な絵だろ?一目で気に入ったんだよ」
それは、木々も草も真っ白な林の中を亜麻色の髪を揺らした女神たちが飛んでいる絵であった。
「天国があったらきっとこんな風景なんだろうなぁ」と主は言う。
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刀剣たちを毎日「かわいいね」「かわいい子だね」と言って育てあげた審神者が、ある日本丸で野良猫を見つけ「あ、かわいい!!」と叫んだら、自分が呼ばれたと思って「呼びましたか?」「呼んだ?」とあちこちから集まってくる自己肯定感がやたらと高い刀剣たちの話。
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とうらぶホラー
これは俺が幼い頃の記憶の話だ。
ある日、晴れた本丸の庭でサッカーボールを蹴って遊んでいたらいつの間にか敷地の端まで来てしまった。
ボールが転がっていく先に、戦装束を着た三日月の後ろ姿があったから「みかづき!ボール取って!」と叫んだのだ。
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私は無機物寄りな刀剣男士たちが日々を重ねるごとに人間らしくなるのが大好きなので、鶴丸が顕現当初微動だにせず遺体のように眠っていたのがいつのまにかぐーぐーと寝息をたてて布団をはね除け、同室の光忠を蹴って「これだから鶴さんは!」って怒られているのを見たら尊くて泣いてしまうと思います。
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とうらぶホラー
俺の父は審神者だった。
というか、うちは先祖代々審神者をやっていた。
お祖父ちゃんも、そのまたお祖父ちゃんもだ。
俺は生まれた時から本丸で暮らしている。
父は俺が子供の頃にこう言った。
「うちの本丸には神様が全て揃っているけれど、決して全ては揃わない」
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刀剣が「俺は人の死に慣れすぎているし、人間が死ぬのは世の常なのだから主が死んでも泣くことは無いだろう」と思っていたのに、主が亡くなって、葬儀屋が運んで来た棺を見た瞬間、その棺の無機質さにボロボロ涙が溢れてしまって「いやだ、俺の主をこんな箱に入れないでくれ」って縋り付いて叫ぶ話。
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誉を取った鶴丸が「ドーナツの穴の部分が食べたい」と言う鶴さにが書きたい。
とんちか?と思いながらちっちゃいサーターアンダギー山ほど揚げて「はい、穴の部分」って出したら目をキラキラさせて宝物を貰ったみたいにはしゃいで「これがドーナツの穴か!」って食べる。