26
とうらぶホラー
それはどう見ても、光輝く白い犬であった。
夜、眠っていたら何だか眩しくて目が覚めたのだ。
明るい方を見ると、発光する大きな犬が座っていた。
『もし、そこの御方』
犬が。
犬が喋った。
「はい……何でしょうか」
俺は、そういう事もあるかと半分夢見心地で答える。
27
とうらぶホラー
私の祖母が亡くなった。
祖母は自分が亡くなるのが分かっていたかのように、身の回りを全てきちんと整理して、誰にどの形見を渡すのかという遺言まで準備してあった。
そして、その遺言通りに、私の元にある一冊のノートが渡されたのだ。
見た目は普通のノートだ。
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とうらぶホラー
うちの桑名は、他の本丸の桑名と同じように農業をこよなく愛している。
私の本丸は畑当番を嫌がる刀剣が多かったが、桑名だけは違った。
畑当番でなくても畑に居たし、畑当番の時は朝から晩まで畑に居るので、私たちは桑名の事を「畑のヌシ」と呼んでいた。
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とうらぶホラー
俺の本丸の今剣は絵を描くのが大好きだ。
暇さえあればクレヨン片手に画用紙に色んな絵を描いている。
しかし、まあ、何と言うか…今剣は独特な感性を持っているので正直言って何を描いているのかパッと見ただけでは分からない。
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とうらぶホラー
審神者になってから数年、私の本丸も刀剣が増え、手狭になってきた。
リフォームも考えたけれど、担当から「丁度いい物件が空いてる」と勧められて、引っ越しする事にしたんだ。
引っ越しした先は、とても広くて綺麗な本丸だったから、皆とても喜んだ。
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とうらぶホラー
俺がまだ審神者になったばかりの事だ。
俺はレア刀にとても憧れがあった。
その中でも、先輩の近侍として控えている静かな佇まいを見て「格好いい!うちにも欲しい!」と思ったのが、粟田口の平野藤四郎だ。
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とうらぶホラー
『三度の畑を見るな』
その言葉を思い出したのは、大掃除中に出てきた昔のアルバムを捲っていた時だった。
幼い頃から審神者をやっていた私に、初期刀の山姥切国広がそう言ったのだ。
写真には、現世の実家の近くにあった神社での夏祭りの様子が写ってる。
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とうらぶホラー
新人審神者の俺にとって、初めての政府からの監査官は則宗さんだった。
ギリギリで『優』の評定を貰い、本丸にやってきた則宗さんは、すぐ他の刀剣とも仲良くなったが、俺は正直、則宗さんが苦手だ。
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とうらぶホラー
うちの初期刀、歌仙は買い物が苦手だ。
お使いを頼むと、一個か二個は違うものを持って帰ってくる。
醤油と酢やネギとニラを間違えたりする。
「歌仙!また違う物買ってきただろ!」
「僕はちゃんと買い物してきたよ」
「じゃあこの白玉粉は何だよ!塩買ってきてって言ったのに!」
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とうらぶホラー
ある日、部屋に鯰尾が飛び込んできた。
「主、主、聞いて下さい…ううっ、ぐすっ、とても悲しい事があったんです。
一兄に叱られた時よりも、俺の育てたヒヤシンスが枯れてしまったことよりも悲しい事なんです。
ポチが……俺の大切な大切な友だちのポチが死んでしまったんです。