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セリフの役割は「事実を知らせる」「人物の心理の表現」「ストーリーを進展させる」の三つです。それぞれのセリフがこれらのひとつ以上の役割を果たさなくてはいけません。人物が会って「よう」と挨拶するだけでも彼らがどんな関係性かという事実を知らせているわけです。
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脚本を学ぶ人がストーリーを面白くするコツのひとつは、何かストーリーを考えたら、最初の3分の1か半分くらいをバッサリ切って途中から入ること。もう何年も勉強している人でも話のスタートを前に遡り過ぎる傾向があります。
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脚本教室の生徒が「この題材では面白くならないのではないか。もっといい題材を探すべきでは」とWHAT(何を書くか)の問題で悩むのは、ほとんどの場合、その題材を面白く料理するHOW(どう書くか)のスキル不足が原因です。「WHATの問題は実は大抵はHOWの問題」だと思っておいて間違いないでしょう。
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脚本は初稿を書いてそれを直すという作業で完成します。だとすると脚本を書くには「初稿を書く」「直す」の二段階の能力が必要と言えます。生徒の中には直しの意見を言うと「それだと初稿と変わってしまいます」と難色を示す人がいますが、これでは直す能力は培われずプロになるのは難しいでしょう。
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脚本の初心者が苦手なことに「物事を最初から描かず途中からポンと入ること」と「裏で進行していることを途中で明かす」の二つがあります。両方、物事は最初から順を追ってきちんと描かなければならないという思い込みが原因です。この二つを克服するだけで作品のレベルがグッと上がると思います。
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すごく細かいト書きの話。「太郎が立っている」と「太郎が誰かを待っている」の違いは何か。「立っている」は見たままですが「誰かを待っている」はどうしてわかるのか。ただ時間をつぶしているのと誰かを待っているのは何が違うのか。このへんを疎かにすると大事なことも見落とす危険があります。
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ト書きは目に見えるものを書くのが基本です。「暗い気持ちで立っている」の場合、「立っている」は見えますが気持ちは見えません。「泣きそうな顔で」とか「落ちている空き缶を蹴る」とか目に見えるものに置き換えるのが重要な作業です。「何に置き換えるか」で作品のクオリティが変わってきます。
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脚本を書くときは「大嘘はついても小嘘はつくな」と言われます。大嘘とは例えばタイムスリップすること。小嘘をつかないというのは、その時代に何があって何がないかなどをちゃんと調べるということ。それによって観客はその大嘘に乗っかることができます。生徒の作品は小嘘の集合体になりがちです。
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新しいドラマが発表されました。松重豊&濱田岳W主演『大川と小川の時短捜査』9月12日夜8時からテレビ東京系で放送。元刑事で今は警察の働き方改革を推進する警務課職員・大川と、若手刑事・小川がひょんなことから一緒に事件の真相に迫る物語です。よろしくお願いします。sirabee.com/2022/08/30/201…