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「やめておけ」と忠告すれば「うるさいわね!」と怒鳴るくせに、勢い余って人を殺めてしまったりしたら夜中だろうが大雨だろうがピンポン鳴らして「やっちゃったわ……」と要らん報告、気付けば男は森で穴を掘っていたのである――みたいな何ともいえない蜜月を感じる2人です。
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冬沢がダークサイドへ傾き始めると「そっちへは行くな」と腕を引き、冬沢が玉座へ駆け上がろうとすれば「堕ちろ」と闇に引きずり込む。化けの皮を剥ぎとってありのままの~♪恐怖氷帝となった冬沢がスタミュの世界の外へ飛び出さないよう、ケレン味あるスタミュ節で冬沢を押したり引いたりした千秋。
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最後、四季を閉じ込めてしまった冬沢は、もはや自分で自分が分からなくなってしまい、フワフワと足場のない場所を彷徨っている状態でした。「四季を閉じ込めてしまった」と口に出してようやく冬沢は現実に戻ることが出来たのだと感じます。
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冬沢にとってそれを打ち明けられる相手は、期待していなくても、気まぐれで鬱陶しくても、千秋しかいなかった。やっぱり最後も千秋が冬沢の腕を引っ張ったのです。四季が来るまで向こうへ行かずここで待てと留めた。肌寒さを感じるけれど、暖かなだいだい色の秋の名に相応しい男。おめでとうでした。
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私は『優男』という表現をよく使うので、この間改めてその意味を調べてみました。『品があり、スマートで優しく、雅やかで、芸術に理解のある男性のこと』だそう。スタミュ界の文句なし優男オブ優男、月皇遥斗の誕生日です。穏やかで人格者な一面は父親譲り、カリスマ故の大胆さは母親譲りでしょうか。
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弟のコンプレックスは焦らず騒がず突かずそっと見守っていた遥斗です。海斗は小さな体に成熟した大人を内包した子供。故に月皇の名の威を借ることを良しとせず、兄へのコンプレックスも言葉に出来ず、劣等感をぶつけることも出来ず、平静を装うことで自分を守っていた。遥斗はそれに気付いていました。
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そういう海斗の自尊心を“自分が”壊してしまわないよう、努めてフラットに接してきたのだと思います。構いすぎず、放置しすぎず、彼の価値観を打ち砕くに相応しい師に、彼が出会えるまで、「自分に見切りをつけるんじゃないぞ」と密かにエールを送り続けてきました。ちゃんと出会えて嬉しそうです。
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繰り返し(まあまあ。はいはい。ごめんごめん。分かってる分かってる等)に並ぶ遥斗構文(?)の笑い声。文字媒体では「あははは」と「あっははは」の使い分けにルールがあります。ほんの小さな「っ」が、生まれた日からプリンスであった彼のひとときの青春が、大いに楽しいものであった証です。
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そんな役を演じた遥斗の現実世界での弟・月皇海斗の誕生日。将来天花寺が伝統芸能の世界を牽引してゆくように、いつしかミュージカル界を牽引してゆくであろう彼。そろそろ社会へ飛び立つ準備を始めなくては。なので今年はちょっと背伸びをさせて、兄貴や師匠と同じように“役者”としての彼の話を。
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情熱的なラブストーリーならば、彼の兄は生まれながらに飼い慣らしたスター性を容赦なく、遠慮なく、躊躇いなくぶん回して、非常にドストレートに、例えばヒロインに向けて愛の歌を歌う時、「この先何が起ころうと、好き好き大好き止まれない」と追いかけ捕まえるように熱く歌い上げる気がします。
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魚住ならば、「この先幸せばかりではないだろう、それでもどんなことがあっても守ってみせる」という誓いを胸に秘め、包み込むように同じ歌を歌うでしょう。月皇はどちらかと言えば――も何もおそらく完全に後者なタイプの気がします。同じ環境同じ両親同じ教育を受けていても、不思議なものです……。
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月皇は自分で把握しているよりずっと感情的で、情熱があり、ナイーブです。逆鱗に触れられて声を荒げてしまう自分、目標に食らいつこうと必死になる自分、傷つきやすい自分、それが嫌いで、封じ込めてしまいたいと思い続けてきた。でも、それらをコントロールできない不器用なところがあるのです。
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コントロール不能な、本人が欠陥だと感じてきた壊れやすいそれこそが、“機微”というものであり、彼の“オリジナリティ”。気付いて良かった。彼はもしかしたら納得していないのかもしれないし、まだ気付いていないのかもしれないけれど、そこが好きで大事だと、思ってくれる友人達に出会って良かった。
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もし彼が、いつかラブストーリーを演じたら、「幸せばかりじゃない。いつかは終わりが来るかもしれない。だけど……そうとは限らない。不確かな未来を憂うことはしない、今だけは……!」と、想いを込めて歌うのではないかと想像します。
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絶望があること、夢ばかりではないことを、月皇は知っています。でも、諦めない強さを、意地を、持つ人間の眩しさも知っています。星谷のように素直に、那雪のように直向きに、天花寺のように堂々と、空閑のように強く、辰己のように広い視野を持ち、申渡のように自分を客観視し、
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鳳のように楽しそうに、魚住のように格好よく、兄のように我が道を突き進む――ほんのひと匙ずつでも、勇気をくれた友人たちの、尊敬する先輩たちの、力を、素直に自分のものに出来たら、その時は、たった一人の月皇海斗になれるはず。聡さと感じやすさ、両方持っているからこそです。
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ちなみにteam鳳で唯一退寮したら一人暮らしをすると明言されている月皇。兄貴は父親が仕事部屋に購入していた部屋を借りているという設定ですが、海斗はしっかり自分で自分に相応な部屋を見つけて暮らしそうなので、そういうところは兄貴より立派だぞ(笑)! おめでとう。
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『スタミュ』FC星箱 書き下ろしSS 来週30日~連載させて頂きます。
ここしばらく高校星メイン話をたくさん書いていたので、インスタライブで予告した通り今回はOB編。『続・仲良しアンシエント編』&『仲良し前・華桜会編』となります。
また少しの間、月曜日はスタミュで宜しくお願い致します☆
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まずは『続・仲良しアンシエント編』。高校星の話じゃないと言っても社会人の話とは言ってない。久々にあそこの時系列から始まります。
宜しくお願い致します!!!!
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新しい挑戦を1ミリも恐れない積極性と前進力を両腕に抱く、私が心から尊敬する男、申渡栄吾の誕生日。以前アニメ雑誌の取材で『team柊で一番お婿さんにおススメなのは誰か』というスタミュにしては珍しい質問を受けたことがありますが、自信を持って申渡と答えました。
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彼は人の話を聞き流すということがありません。どんな些細なお喋りや、どんな場所のお土産話にも興味津々。彼にとっては全く未開の趣味の話でも前のめりに聞いてくれ、果ては「私もご一緒しても?」などと言い出しかねないででしょう(笑)。申渡は受動性と能動性を半分ずつ兼ね備えた人なのです。
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受動性は彼の誠実さ、彼の包容力。能動性は彼の勇ましさ、彼の理知。申渡をよく知る友人たちが彼に一目置くのは、どこかに敵わぬ部分があると認めているからなのかもしれません。2年MS組のメンツでは、例えば月皇と南條などは申渡と同じくチームの参謀的ポジションを担うことが多いキャラですが、
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月皇は、申渡の持つ『包容力』を自分にはないものとして尊敬している気がします。中等部1年の時に辰己に出会い、2年に上がるまでの1年間、申渡なしで辰己と付き合ったからこそ、申渡が現れた時は「なんて大した奴なんだ……!」と思ったことでしょう。
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辰己が輝く場面では彼を立て、辰己が至らない場面ではさりげなく力を添える。中等部時代は特に自分のことで精一杯だった月皇から見ると、申渡は視野が広く余裕のあるちょっと大人な男に見えたのではないでしょうか。『五つの花編』でもありましたが、辰己が暴走すると「申渡!」と言う月皇が好きです。
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南條的には、申渡の『勇ましさ』は自分にないものだと感じていそうです。教師に信頼され同輩たちに一目置かれている境遇は似ていても、リスクを回避し安全圏を保持する主義の自分と、ピンチにも動じず、いざとなれば他者のために真摯に前進していく申渡は、本質的に違うと気付いています。