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家永さんはお腹に子=未来を宿した母の姿を「完璧」と評しましたが、谷垣とインカラマッ、そして両者の子どもを守った彼女の亡骸は、彼女の言う「完璧」に近しい姿でした
牛山もまたアシリパさんという未来を守った今こそが「完璧」なのだろうと思います
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矢筒を奪われたことでアシリパさんは「羆と戦う術」も「権利書」も失ったことになり、言い方は悪いですが付加価値を剥奪された1人の少女となりました
しかし全ての属性を剥ぎ取られても尚彼女が集めた仲間たちは彼女を守るはずで、やや話が飛躍しますがこれは相互理解の結果なのかなとも思います
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「強い奴を倒すときは頭を狙わない」という教訓は、呪いのように尾形について回りますね…
網i走での杉元も今回の羆も(国境での頭巾ちゃんも?)そうですが、考えてみれば勇作殿も尾形に頭を撃たれていました
勇作殿はさながら頭を撃たれた羆のように尾形の内外に存在し続けています
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父の最期と同じ構図を生き残るための足掻きに持ってくる構成の妙
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尾形が言う「道理があれば人は殺せる」と、アシリパさんの「道理があれば杉元と共に地獄へ落ちる」は、同じことを言っているようで根本的には違うようにも個人的には思います
アシリパさんの言う地獄とは、人の命を殺めた罪悪感=殺めた人たちのよすがを背負って生きていく未来のことなのかなと思います
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自分自身に対して見ないふりを続けてきた尾形は、樺i太でアシリパさんと対峙して自己の内面を覗きかけた時に右目を失い、今回とうとう自分自身と真正面から向き合ってしまったことで左目をも失いました
生物の目玉は構造上自分の内部を見ることはできず、それ自体が非常に示唆的だと思います
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先日の最i果先生のコラムで「死を以って罪を贖うことは、自らの命を価値あるものとして認識するということ」という旨のお話があった(と理解している)のですが、尾形は今際の際に「これまで犯してきた罪を贖うに値するだけの自分自身の価値」を見出したのだと思います
それは紛うことなき祝福でしょう
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尾形の死が生育環境の悪さに対する回答かというと、個人的にはそれは違うと思います
「出自ではなく行動によって自己を定義せよ」とは杉元の言ですが、尾形は出自によって自らを定義しその像に沿う行動を選び取っていたこと、そしてその集積がこの状況を産んだのだということにきちんと気付きました
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ふと思ったのですが、尾形の犯してきた殺i人の中で、一番初めの母殺iしだけが異質なものだったのかもしれません
「その命が損なわれたら父が悲しんで会いに来る」程に母には価値があると思っていた
それが否定されてしまったからこそ、尾形は人の命の価値を信じられなくなったのかもしれない
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個人的な感情で恐縮ですが…
「単行本に収録する際に加筆をたくさんするなら本誌に掲載されるものは未完成ということではないか」という旨の批判的なツイートを複数拝見し、胸が痛いです
本当に大好きな漫画なので、先生や関係者の方の目に留まって悲しい思いをされることがないといいなと思っています