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2004年9月19日、柏の葉で行われた柏レイソル対FC東京戦。前節5失点で敗れたレイソルのサポーターが、選手やフロントを誹謗中傷するダンマクをこれでもかと張り出した。名前や背番号で名指しするものもあった。試合は名指しされた選手のゴールで追いつきドローだった。
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試合後、レイソルの選手たちはゴール裏に挨拶をしなかった。それにサポーターは反発し、会場を出るチームバスを囲んだ。選手とサポーターの信頼関係は、完全に壊れてしまった。選手たちは口々に「あんなのサポーターじゃねえよ」と吐き捨てた。そして翌2005年の12月10日。
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J1残留がかかった入れ替え戦第2戦で、レイソルはぶざまに敗れ初のJ2降格が決まった。試合後、選手はメディアのインタビューに「1年で昇格する」と答えていた。ところがそのオフ、7人がJ1クラブへ移籍した。柏の葉で名指しされた選手は1人を除いて全員移籍していった。そういうことなのだ。
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あれ以来レイソルサポは、ブーイングはたまにあっても選手を誹謗中傷することはなくなった。大敗した選手たちを迎えるときは胸のエンブレムを叩く。「お前らの力はこんなもんじゃないだろ!」と。強烈な体験だったが、あれで学んだ。選手とサポーターの信頼関係がなければ、チームは壊れてしまうと。
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昔話ついでにもう一つ、当時の鹿島アントラーズ牛島社長の言葉。間接的に(当時のレイソル小野寺社長から)聞いた話。
「こんなすごい仕事は他にないぞ。顧客が、声を枯らして社名を叫んでくれるんだ」と。
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感情をたかぶらせるのがクラブの仕事だから、こういうトラブルも往々にしてある。でも裏を返せば、そんなときこそ顧客エンゲージメントを深める絶好の機会。クラブスタッフの皆さんには頑張ってほしい。