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フランス人アーティストの通訳が大変な理由のひとつに「常に気の利いた表現を駆使して喋ろうとする」というのがある。仏インテリは「いちばんかっこよく言えた人が優勝」という価値観で生きているし、アーティストなんてその権化だから。すごく勉強になるけど、まあまあ迷惑で、疲れてると殺意が湧く。
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文学作品を翻訳していると心が「無理」で埋め尽くされそうになる。初読時に「読めた」気がしていたのはいったいなんだったのだろう。「どうして柴田さんて翻訳なんてするのといわれて、訳さないとわからないからっていった」という柴田元幸さんの言葉を思い出す。訳して初めて「わからない」がわかる。
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語学って本当は、「いつかできるようになるのか」よりも「いつまでもできるようになれないとしてもやりたいのか」にかかっていると思う。「私にもできたのだから、あなたにもできます」系の物言いは一見すると謙虚なようで、よく聞くと単なる生存バイアスの誇示であることも多い。
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【お知らせ】
「舞台芸術の通訳者とハラスメント」について書いた連載記事が無料公開されました。通訳者と共にお仕事をされる方、舞台芸術の通訳者を志していらっしゃる方はもちろん、舞台の世界に関心を寄せてくださるすべての方に知っていただきたい内容を簡潔にまとめてあります。よろしければ。 twitter.com/alc_ej/status/…
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フリーで働く人が権利の主張をするのって勇気が要るんです。「面倒」「使いづらい」と思われて切られたらおしまいなんだから。それでも言わずにいられないから言う。ただね、主張するフリーランサーを「面倒」と思う感覚はさすがにもう、やばい。やばいです。そういう人に10年後の居場所はないですよ。