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ぼんやりスペインのドラマ観てたら「毎日あくせく働いて、年に1度の休暇が楽しみなんて暮らしで、おまえ本当に満足なのか? なんの意味がある? たった1ヶ月の休暇に」て台詞が聞こえてきてうっかり主人公より深傷を負いかけた_(┐「ε:)_
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【お知らせ】
「舞台芸術の通訳者とハラスメント」について書いた連載記事が無料公開されました。通訳者と共にお仕事をされる方、舞台芸術の通訳者を志していらっしゃる方はもちろん、舞台の世界に関心を寄せてくださるすべての方に知っていただきたい内容を簡潔にまとめてあります。よろしければ。 twitter.com/alc_ej/status/…
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70過ぎて渡仏して10年以上帰ってこない後輩とビストロで食事をした。遅くてまずくて高かった。珍しく店選びを外したことを詫びると、「私、今日はほんとに幸せなのよ。エッフェル塔がね、あんなに光ってるんだもの」と笑顔をこぼして言う。自分で自分を幸せにする才能。望んでも得られない本物の宝物。
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今年のゴンクール賞が先ほどBrigitte Giraud « Vivre vite »に決定しましたが、昨年の受賞者ムブガル=サールの本邦初となる訳書『純粋な人間たち』ついに刊行されます!セネガル社会における同性愛タブーを通して人間の尊厳と普遍性の未来を問い直す意欲作。ご予約受付中!
hanmoto.com/bd/isbn/978486…
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フランス人アーティストの通訳が大変な理由のひとつに「常に気の利いた表現を駆使して喋ろうとする」というのがある。仏インテリは「いちばんかっこよく言えた人が優勝」という価値観で生きているし、アーティストなんてその権化だから。すごく勉強になるけど、まあまあ迷惑で、疲れてると殺意が湧く。
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文学作品を翻訳していると心が「無理」で埋め尽くされそうになる。初読時に「読めた」気がしていたのはいったいなんだったのだろう。「どうして柴田さんて翻訳なんてするのといわれて、訳さないとわからないからっていった」という柴田元幸さんの言葉を思い出す。訳して初めて「わからない」がわかる。
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関西人「帯状疱疹になってもうて」
東京人「えっそれはしんどいですね」
関西人「いや、しんどくはないねんけど、とにかく痛いねん」
というやりとりを目撃した!
関西発で全国区になりつつある「しんどい」だが、実は伝播の過程でニュアンスが脱落し、東では単に「辛い」と同義で使われている疑惑!
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語学って本当は、「いつかできるようになるのか」よりも「いつまでもできるようになれないとしてもやりたいのか」にかかっていると思う。「私にもできたのだから、あなたにもできます」系の物言いは一見すると謙虚なようで、よく聞くと単なる生存バイアスの誇示であることも多い。
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DeepL翻訳は異様に自然な訳文を提示してくるが、よく読むとうまく処理しきれなかった箇所を勝手に切り貼りして辻褄を合わせているのがわかる。つまり「正確さ」を犠牲にして「自然」に振る舞っている。このことから、機械翻訳は高い語学力がなければ使いこなせない、という逆説的な真理が導かれる。
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フリーで働く人が権利の主張をするのって勇気が要るんです。「面倒」「使いづらい」と思われて切られたらおしまいなんだから。それでも言わずにいられないから言う。ただね、主張するフリーランサーを「面倒」と思う感覚はさすがにもう、やばい。やばいです。そういう人に10年後の居場所はないですよ。
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アートの世界には性的マイノリティだと公言している人が比較的多いからか、平気で「〇〇さんて男性と女性どっちが好きなんですか?」などと尋ねる人がいる。特殊な業界に身を置いていることでなにかを理解しているつもりならそれは傲りだし、自分は許されるキャラだと思っているのならそれは甘えだよ。
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演出家に「ここは何を意味していると思う?」と問われると、フランスの俳優には自分の考えを述べる人が多いのに対し、日本の俳優には演出家の考えを「当てにいく」人が少なからずいて、考えさせられる。「演出家の考えを「解」として創作することと、演出家を「正解」と位置づけることは同じではない。
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「フランス語なんてやって何になるの?」なんてたぶん100回以上言われてきたけど、「こういう風に役に立つ」とか「将来〇〇に活かせる」とか答えるのは悪手なんですよ。自分の人生で自分がやりたくてやっているんだからそれでいいの。他人を説得する必要はない。むしろその難癖の土俵に乗っちゃダメ。
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駅前で年配の女性二人がぎゅっと手を握り合い「じゃあね、〇〇ちゃん、フランス行こうね」「うん、きっとよ」「ほんとよ」と言っていた。行けるといいな。ほんとうに行けるといい。
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【ご報告】
弱冠31歳でゴンクール賞に輝いたセネガル人作家Mbougar Sarrが話題ですが、実は日本でも以前から彼に注目していた人が…ずばり私です!ていうか実はいま翻訳中です!受賞作のひとつ前の小説『De purs hommes』を!セネガル社会の同性愛タブーを問う衝撃作!版元は英治出版様!お楽しみに! twitter.com/n_a_k_a_m_u_u/…
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そういえば昨日、電車で「実はわたしの親友がジェンダーなんだよね〜」という今年いちばんくらいに破壊力のあるフレーズを耳にして久しぶりに空間がぐにゃりと歪んだ。変容する世界の速度に対応しきれない話者が、既存の語に自分なりの新用法を付与する現象なのだろうけれど……親友がジェンダー……。
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敬老の日らしいので景気のいい話をしておくと同居していた祖母は86歳の時とつぜん「あたしイタリア行くわ!!!」と宣言してトスカーナの山奥に住む伯母宅に身を寄せそのまま103歳で没するまで帰ってこなかったからみんないくつになっても好きに生きろ٩( ᐛ )و
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遅読で苦しんでいらっしゃる方にぜひ推薦したい作品があります。藤野可織さんの『ある遅読症患者の手記』という掌編です。僕はあの作品を読んで、世の中には遅読をこんなにもうつくしく昇華してくれる人がいるのか、と胸を打たれ、なんだかとても救われたことを今も鮮明に覚えています。
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小3の夏休みに「本を40冊読む」と言うと担任から「現実的な目標を立てろ」と叱られ、ムカついて休み明けに45冊分の読書記録を提出。先生は「信じなくて悪かった」と謝り、数年後にも「あの時は君という人間の意志の強さに感服しました」と書いた手紙をくれた。子どもに敬意を抱ける偉い大人だったな。
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戯曲翻訳の特異性のひとつに「俳優にしか気づけない誤訳」がある。俳優という生き物は「他人の言葉」である台詞を言うための回路を全力で探す。しかし時折、どんなに自身の生理を抑圧してもなぜか言えない台詞があり、そういう時は高確率で翻訳が間違っている。今まで俳優に救われたことは数知れない。
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語学の指標として「日常会話レベルなら問題ないです」ってどうなのか……。日常会話って難易度高いですよね。とんでもなくハイコンテクストだし、教科書的な内容を逸脱した語彙や用法がたくさん出てくるし。「専門分野に関する発表ならできても日常会話はままならない」みたいな人、たくさんいるはず。
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「スポーツの持つ力を信じてきた」とかフランス語に訳せる自信ない。いや訳せるけど絶対伝わらない確信がある。「えっ?信じる?力?あっ信仰の関係?違う?団結?勇気?感動?は?」ってなる。絶対なる。あたりまえだ。この国では科学が美学に、哲学はビジネスに回収されてしまいがち。とほほ。
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現在、海外アーティストの来日公演は事実上不可能。先日も「数人の」俳優が今夏の来日を見送りましたが、この「2週間待機」も来日を絶望的にしている重大な要因のひとつです。翻って五輪なら免除されるという。その正当性を明確に示して頂きたいです。
asahi.com/articles/ASP5X… #新型コロナウイルス
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また舞台の仕事がキャンセルに。理由は海外アーティストが来日できないため。無理もありません。今年も5ヶ月近くが過ぎ、実現した来日公演はゼロ。私のような現場スタッフはその分の収入もゼロ。いまだ数人規模の来日公演すら難しいこの国で、再来月には五輪ができるようになるという根拠は一体……?