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この頃モンスターに追われて家の前に逃げ込んできた外国人を二人ほど匿ってやったりした。門前に死体はちょっと…。家の中で適当に飯を出してやった後で追い出した。めっちゃ話しかけてくるからだ。二度と来るなと念を押したせいか来なかった。
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どうやら異世界転移したらしいことに気付いたのは、塀の向こう側に異形の生き物の姿を確認したからである。流石にベランダに三年ぶりに出たが、なぜか敷地内に入ってこれないようなので放置した。鬱なので。何か行動起こす心の体力がない。
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以来恐る恐る庭に出てぼんやり外を眺めるようになったけれど、塀の先にはなんかモンスターみたいなのがいるっぽい。庭には父が植えていたチューリップとパンジーが咲いている。春が来ていたことに気づくが、いい思い出がない。鬱なので。
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なぜかこの家の敷地の中にいると歳を取っていないかもしれないと気付いたのはデジタルの時計のカレンダーが20年経過したのを示した頃だ。カレンダー壊れたかと思ったけど、パソコン他の時計も同じだ。なにこれ怖い……ようやくちょっと危機感が湧いたものの、家から出る選択肢はない。鬱なので。
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手入れしていないのに父が生きていた頃のように庭は綺麗で花が咲く。向日葵が咲いているのを見て夏なのかとげんなりしたが、あまり暑くはなかった。気候がちょっと違うらしい。
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異世界に実家の家ごと移転した引きこもりの男。独り暮らしで家族はいない。のだがそもそも引きこもりなので転移に気付かないまま半年過ごす。なぜか冷蔵庫の中身も減らないし、電気水道ガスも生きているのだ。おかしいなと思うまでに半年かかりました。鬱なので仕方ないです。