掛け声はもはや歌の一部のようだった。それはアイドルへの精一杯の声援であり、腹の底からかきあつめた愛だった。俺たちがいる限り君は守られるのだ。まるでそう言っているようだった。 ――『オートリバース』高崎卓馬
「ああ、誰でも歓迎。アイドルを守るのが俺たちの仕事さ」 「守る?」 「守って応援してスターにする。それが親衛隊」 ――『オートリバース』高崎卓馬
「ここはさ、努力が報われる場所なんだ」  その言葉に直は胸の真ん中のあたりがくっとなった。学校や家にはまることができない自分たちのような不良品にも居場所はあるのかもしれない。そう思うとここに集まった不良たちがみな仲間に思えてくる。 ――『オートリバース』高崎卓馬
「今日子隊?」 「押忍っ!」 「そうか、俺たちの力で小泉今日子を一位にしような」  三谷が直の手を握った。その手は肉厚で柔らかくてそして、温かかった。 「ありがとうございます!」  思わずお礼を言っていた。 「ここは努力が報われる場所だからな」 ――『オートリバース』高崎卓馬
「私たちってさ、今日子からいろんなものもらってんのよね。好きです! って何にも考えずに叫べる相手がいるって凄くいいことじゃない?」 「……うん。そうかもしれない」 「相手に好きになってもらいたいって思うのって、疲れるもん」 ――『オートリバース』高崎卓馬
「私たちあの子に感謝しなくちゃね」 「してる。尽くしてるよ、みんな」 「そうだね。でも、みんな自分のためにそれやってるでしょ」 「……うん」 「アイドルってさ、勝手に尽くされてさ、大変な仕事だよね。私、無理だなあ」 ――『オートリバース』高崎卓馬
「オートリバースつきだぜ」 「オートリバースってさ、嫌いなんだよ」 「なんで? 便利じゃん」 「嫌いなんだよ」 「なんで?」 「勝手にひっくりかえるから」 「なんだよそれ」 ――『オートリバース』高崎卓馬
「失わずに得る方法を考えたらいいんでしょ」 「……それは無理なんだなあ」 「なんで?」 「駐車場と同じさ。空きが出るから新しいものが入れる。新しいものを入れたかったら、何かを外に出さないといけない。人間ってのはただの器なんだからな」 ――『オートリバース』高崎卓馬