2
火葬場で火葬炉の担当をする知人が言っていた「人間が骨になるほどの炎で焼いても、棺桶の中で燃えきらなかったものが過去にひとつだけあった。広辞苑だよ」をまた思い出している。肉体と言葉に関する示唆だと、都合よく受け取っておく。
3
ウォーターサーバーの勧誘電話を頂戴し丁重にお断りしたら「現在、お水はお水ですか?」と訊かれて哲学か…??と動揺していたら何事もなかったかのように「現在、お水は水道水を飲まれてますか?」と訊き直されたけど「お水はお水ですか?」が問いとしてのエッジ効きすぎてて今もまだ答えを探してる。
4
取引先の方が「それは違和を感じますね」と『違和感を感じるなどという誤った日本語は決して使うまいとする確固たる意志』を漂わせながら何度も「違和を感じます」を繰り返すので、話の内容がほぼ入ってこなかった。
5
6
カレーの不可逆性はすごい。あらゆる料理をカレーに作り変えるのは容易いことなのに、カレーを他の料理に作り変えようとしても、それは必ず新天地で存在感を発揮し続ける。
7
ボクシングをやっている人から「君はガードが固すぎる!ちょっとは隙を見せないと男はジャブ打てないし、愛をストレートに伝えられない」と言われて、「ガードゆるめてって相手に頼んで試合に勝つボクサーがいるか?地道なボディブローでガード下げさせろ!」とつい言い返して以降、連絡が取れません。
9
「あたしがシュンと二人で遊んでたの知ってあんなに怒った人は誰?」
「その話は今関係ねーだろ」
「あるよ!自分のことは棚に上げて!自己中すぎるのわかんないの!?」
「はいはい俺が悪かったです今回も俺が悪いです全部俺がクズなせいですだから別れて」
「クズじゃないよ…好きだよ…」
ワイ白目
10
「それでもあたしは好き!別れたくない!」
「なんでだよ!意味わかんねーよ!」
「わかんなくていいよ別に!」
「いやわかりたくもねーけどさ、とりあえず別れてくれよ」
「あたしの気持ちは?」
「んなもん知らねーよ!もういい」
「もういいって何?」
「二股する。お前に俺を止める権利ないから」
11
「ねえ何でずっとスマホいじってんの」
「お前が泣いててだるいから」
「は?あたしが悪いの?」
「ちがうけど、俺から話すことはもう何も」
「別れたくないの、あたしは」
「それが意味わかんねーんだよ」
「なんでわかんないの」
「俺は他に好きな人いるから、もうお前とは別れたいっつってんの」
12
カフェにて隣に座るカップルの別れ話が膠着状態に陥りわたしも帰れずにいるんだけど、案外わたしは帰ってもいいのかもしれない。