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縁故疎開した沼津で機銃掃射に合う。垣根に突っ込んだ防空頭巾に鉄の破片が突き刺さっていた。周りに自転車の車輪だけが回っておじさんが倒れていた。血が広がっていった。
「私悪い子だったの。おじさん大丈夫って言って手を貸してあげられなかった」海老名香葉子さん
#ワルイコあつまれ
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この話はしたくはないが伝えなければいけない。大学4年卒業と国試を控え張り詰めた学業の日々相部屋のクラスメイトが統一教会にキャッチされた。提出物を出し終えた土曜日珍しくデパートへ行ったその入り口で素敵な男性に会ったそうだ。不思議でもないことだがそこからが違った。次の日には門限を破→
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った。明け方窓を叩いて「入れて」と笑う目が異様に輝いていていつも不満ばかりの彼女が危ない恋をしたのかと心配した。門限破りは良くないし一つの単位も落とせないことも心配と伝えた。「聖書を学ぶの」と彼女は笑った。私もクリスチャンでそれはいいけれど大丈夫?だが次の週には帰らない日々が始ま
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った。驚いた。昼間に帰って寝ていることがあった。机に手紙を買いておいたが持って行くことなく遂に帰らなくなった。そこから一月もない。彼女は自主退学をした。卒業まで後数ヶ月ご家族も教員も皆で説得したが決意が固かった。汚れた髪と異様な目力、今までの彼女とはすっかり変わってしまっていた。
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その後ろ姿を最後に彼女には会っていない。幸せでいてくれているかな。ご家族はどうしていらっしゃるか。広く人を助ける役割を目指しての就学の最終年。恋心と心の綻びに睡眠不足で掬い取られたような退学劇皆あっけにとられていたところ学内でお知らせ、それが統一教会でした。何もできませんでした。