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「アレッサンドロ顧問のくれたこの旅行パンフレットによると…上野動物園、だね。ここは。フフ、まさか大のオトナがそろって、動物園観光とは。まあ、こういうのもたまにはいいね、ジャン」
「これが上野動物園か。緑が多くて、気持ちがいいな。都会の真中というのが信じられん。いいところだ」
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「なるほどな。さすが日本通のジュリオだ、おっしゃ。じゃあ、真っ先にパンダ兄貴にご対面しに行こうぜ、おまいら!」
「ああ、待ってくれジャン。そこの窓口で全員分のチケット買ってくる」
「…なあ、さっきから見えているこのタワー…やっぱり、あれじゃないか?東京タワーってやつだぜ、たぶん」
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「ハハッ、気がきいてるぜ東京。動物園見たら、すぐに東京タワーに登れるってか」
「ああ、動物園とタワーのセット券が売ってるな。―すまない、大人5枚で」
「…行きましょう、ジャンさん。パンダが待っています」
「おう。テンションが上ってまいりました!もう今日はチビッコ気分で行こうぜ~」
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「いやあ、すげえな!広いな!この動物園! 全部見てたら一日終わっちまうわコレ。心残りだが、でもまあ、パンダが見られたからよし!とするか」
「…なあ。パンダって、あんなだったっけかな…」
「…あまり動かない動物だったね、ジャン」
「…ずっと木の上で寝てたな、葉っぱ食って」
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「なあ、ジャン。この上に、レストランがあるみたいだぞ。少し遅くなったが、今日の昼食は天空のレストラン、と洒落込んでみないか?」
「いいねえ、いいねえ。ちょうどハラもペコちゃんだったんですわ」
「日本のレストランか、楽しみだねジャン」
「大の男が5人か、予約無しで大丈夫か?」
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「ジャンさん、何か食べたいものがあったら…俺が取ってきます」
「あー、待ってまってジュリオ、ステイ。そんなに食えねえ、盛るな、もーるーなー」
「おっ。このピザ…やるな。うまい。デイバンでもなかなかないモノだぜ」
「…うん。サラダもいい。ここはアタリだ、メインを食わなくてもわかる」
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「あっマジだ、このマカロニうめえ! ウェイトレス=サン、俺はビールね!」
「…日本のビールは美味しいといいますね。あ、甘いものもありますよ」
「このバッファローチキン、まじうめえ。…って思ったら。さっきからイヴァンが静かだと思ったら。先生、イヴァン君が一心不乱にチキン食ってます」
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「いやー、さすがジャポーネだわー。イタ公の俺たちをイタリアごはんでここまでホクホクにさせるとはー。まいりました、もっともっと」
「…まずいな。食いすぎて後で眠くなりそうだよ」
「甘いものを頼みましょうか、ジャンさん」
「いいねえ。…イヴァン。そんなにここのチキン、ツボだったん?」
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「…うん?赤と白…おや?さっき見た時は…たしか…ん?」
「いきなり真下来ちゃったからねえ。遠くから見ると赤白なんじゃね?」
「ジャンさん、そこの公園でなにかショウをやっていますね」
「気持ちのいい風だ。都会の真中とは思えんな」
「んじゃあ。お上りさんらしくここにも登っちうゃぞー」
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「えっ。じゃあアメ横って沢山あるのけ?」
「しかし…広い商店街だな、向こうが見えん」
「…お。あのフライドチキン…気になるな」
「ジャン、すまない…ちょっと、あっちの電気街を見てきてもいいかな…?」
「ベルナルドの目がこんなキラキラしてんの初めて見たかもしれんね。行こういこう!」
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「…って、イヴァンちゃーん。なに、メイドさんからティッシュもらっちゃってますのん」
「な、な…?ワケわからねえ、なんであのメイド、俺にポケットティッシュよこすんだ? …だあああッ! そんな目で俺を見るな!」
「メイドがたくさん、いる…ル・オモの屋敷が近くにあるのかもしれませんね」
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「いやーしっかし。1日じゃ回りきれねえな、これ。モッタイねえ、また来るべ」
「そうだな。なんというか、活気があって…デイバンっぽいな、この街は」
「…ジャン、お楽しみのところすまないが。そろそろ時間だ、移動しよう。ホテルに入る前に…とっておきのサプライズが用意してある、らしいよ」
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「えっ。なになに、なんですのん?」
「そいつは、向こうで…箱を開けての、お楽しみだ」
「じゃあ、タクシー探すか。…向こうの大通りに出たほうがいいな」
「時間が立つのが速いぜ、もう夕方か」
「行きましょう、ジャンさん――」
「おうよ。…さらば、うるわしのアメ横! またくるぜ~」