1
「ねぇママ、“浦島太郎”読んで」
「昔々あるところに、浦島太郎という青年が…」
「もっとニンジャスレイヤーっぽく」
2
タロ・ウラシマは平凡なサラリマンである
趣味の釣りを楽しむ為にオールドトーキョー湾にやってきたが、そこで異様な光景を目にしたのだ
浜辺に打ち上げられたバイオタートルを5人の男たちが囲んで棒で叩いている!サツバツ!なんたるマッポーめいた光景か!
3
もっとも異様なのはその男たちそのものである!
まるで五つ子!同じ顔、同じダークスーツを着込み、同じサイバーサングラス、同じタイミングでタンを吐き、そして同じタイミングで
「「「「ザッケンナコラー!!!」」」」
ヤクザスラングだ!コワイ!
4
もしも読者の中にネオサイタマの裏事情に詳しい人が居ればもうおわかりだろう
彼らこそヨロシサン製薬が非人道的実験の末に生み出されたクローンヤクザなのだ!
もちろんタロ・ウラシマは知る由もなく、近付いていく
「ドーモ。ええと、やめてあげませんか?かわいそうです」
5
「ダッテメーコラー!」「スッゾオラー!」「テメッコラー!」
コワイ!善良なネオサイタマ市民であればしめやかに失禁するであろうマントラめいたコトダマが飛び交い
5人のクローンヤクザが懐からチャカを取り出した!
BLAM!BLAM!BLAM!BLAM!
一糸乱れぬ斉射!
6
ナムアミダブツ!タロ・ウラシマは為す術なくネギトロと化してしまった……
…かに思われた!!!
「「「「「グワーーーーーッッ!!!!」」」」」
クローンヤクザの5つの首がボーリングのピンめいて宙を舞い、緑色のバイオ血液がしぶきをあげる
タロ・ウラシマは?無傷!!!
7
いったい何が起こったというのか!?
ニンジャ動体視力をもつ読者ならばもうおわかりだろう
横殴りの雨のように迫る弾丸を、全て最小限の動きで躱す。まるで弾がすり抜けたように!
そして愛用のチタンカーボン釣り竿による 一 閃 !ワザマエ!
平安時代に生まれた暗殺術、チャドーの動きである!
8
「ドーモ、タロ・ウラシマ=サン。ベッコウです」
周囲にウラシマ以外生きた人間はいない
なんとバイオタートルが喋ったのだ!オバケか!?
「…ドーモ、ベッコウ=サン。タロ・ウラシマです。お前は一体…」
驚くウラシマ。しかし相手が何者だろうとアイサツを返さねばスゴイ・シツレイだ
9
「私は海に隠された楽園都市“リューグー・ステイト”の使者です。リューグーは今ソウカイヤに狙われ危機に瀕しています。貴方こそ我々が求めるソルジャー!どうかリューグーを救ってください!もちろんお礼はします。万札でもコーベインでも、お望みならば高純度メン・タイ(※違法薬物)も用意できます」
10
かつてのタロ・ウラシマはキョートリパブリックを牛耳るザイバツ・シャドーギルドに所属するアサシンであった
戦いの日々に疲れ果てネオサイタマへ亡命したのだが…
「…(インガオホーというものか)」
戦いから逃げても、別の戦いが自分を追い掛けてくる
幾多の命を奪って来た者の運命を悟るウラシマ
11
◆◇◆◇前回までのあらすじ◆◇◆◇
タロ・ウラシマは一時的にメガピーチヤクザクランの首領・モモタロと共同戦線を張り、ヨロシサン製薬傘下のカマボコ工場に潜入
巧妙にカモフラージュされた実験施設を破壊するためだ
しかしそこで驚くべき真実が明らかとなる!!!
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「俺が…ニンジャ…バイオニンジャだと……?」
「フィーヒヒそうだ、解析したそのDNAは間違いない。お前は20年前にこの施設で作られたバイオニンジャ、ソレも失敗作だ!ピーチカプセルに入れタマ・リバーに流して処分したはずだが…まあいい」
「そんな…」
「モモタロ=サン!気をしっかり持て!」
13
「さて廃棄被検体7号、いや今はモモタロ=サンと呼んだ方がいいかな?」
ドクトルオーガはおもむろにタブレット端末を取り出し操作する
「折角20年振りに帰宅したのだ。サンズ・リバーへ送る前にミッションをやろう。タロ・ウラシマを殺せ」
その直後である!
「グワーーーーー!!!!」
14
ウラシマのチタンカーボン釣り竿を用いたイアイドーは長いリーチを活かしてこそ真価を発揮する!
それに対してモモタロのダブルドスダガーカラテはワン・インチ間合いでの“超”近接戦闘に特化した殺人術!
ウラシマにとって相性がとてもうまくない
このままではジリープアー(※徐々に不利)だ!
15
モモタロはウラシマを見据え、右手に“ジンギ”左手に“ニンキョー”2本のドスダガーを構える
既にダブルドスダガーカラテは臨戦態勢だ!
「目を覚ませモモタロ=サン!ヤクザクランの仲間の仇を取るんじゃないのか!」
「ククク、無駄さ。ヤツのニューロンはナノマシンが完全に支配している」
16
モモタロの全身に激痛が奔る!
彼の誕生と同時に植え付けられた血液中のナノマシンが作動し、ニューロンをハックしているのだ!
もはや指1本すら己の意思で動かすことは叶わない
今のモモタロはドクトルオーガのリモートコントロール殺人ジョルリ人形なのだ
「グ…俺から…逃げろ…ウラシマ=サン」
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「イヤーッ!」
右手ジンギによる斬撃!
「ヌゥンッ!」
ウラシマは華麗にブリッジ回避!
「イヤーッ!」
左手ニンキョーよる刺突!
「ヌゥンッ!」
ウラシマは華麗にジャンプ回避!
「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」
「ヌゥンッ!ヌゥンッ!ヌゥンッ!」
斬撃!回避!刺突!回避!斬撃!回避!
18
「イヤーーーッ!」
ゴウランガ!ジンギとニンキョーによるモンゴリアンチョップ斬りだ!
「ヌゥゥゥンッ!」
ワザマエ!ウラシマはチタンカーボン釣り竿で受け止める!
ワン・インチ間合いでの目まぐるしい攻防!これがニンジャのイクサ!!!
勝負はほぼ互角に見えた!
しかし!
19
@mrhwkrh 「ヌゥゥゥンッ!」
ウラシマはチタンカーボン釣り竿で受け止め…否!!!
ウラシマ!それはフェイントだ!
「ィィィイヤーーーッ!!!」
「グワーーーーー!!!」
ローリングヤクザソバットが胴体にクリティカルヒット!
ウラシマは荒野のダンブルウィードめいて高速回転しながら吹き飛ばされる!
20
装甲めいた強靭な皮膚組織を持つタマ・リバー生息のバイオワニでさえダブルドスダガーカラテの前では0コンマ3秒でオサシミボートに乗せられてしまう
卓越した回避能力で凌いでいるが実際危機的状況だ!
「イヤーーーッ!」
ゴウランガ!ジンギとニンキョーによるモンゴリアンチョップ斬りだ!