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これがとても変でいわく言い難く面白い小説だったのですごく印象に残っていて。「はじめて家を建て、庭を作った時の男だから彼には女のようにわすられなかったのである。女でもこうはゆくまいと思われるくらいだ」っていったいわたしこれは何を読んでるんだろう…と思ったんだよね。
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変な話だけどそんなこともあるのかも…と思ったのは、昔室生犀星の「生涯の垣根」という小説を読んだからだ。男が、初めての庭を一緒に造った庭師のことを忘れられず十何年も夢に見て、再会した、もうほとんど廃業していたその庭師に「生涯最後になるであろう垣根」の大仕事を依頼するという話。
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実家は石材業なので、母も善意で石まわりのこと協力したりしていたのが煙たがられるようになったりとか、会話が庭師さんにいかによくしてもらっているかの自慢ばかりになっていくとか、庭に入れ込むと人って庭師を独り占めしたくなるみたいで、なんかちょっとおかしくなるのよ、と。
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母から聞いた庭の話。実家の庭をお願いしている庭師さんが若く熱心で仕事ぶりもよいので、周囲にも紹介すると気に入られて、何軒かではずいぶん熱心に庭造りをするようになったと。それはいいんだけど、庭造りに入れ込むにつれ、知人たちがその庭師さんに対して独占欲みたいなものを示すようになって、
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疲れのせいか何なのか夕飯時から不機嫌極まりなかった四歳児に「ホットミルクかココアを作ろうか。あったかい飲み物には優しい気持ちになれる魔法があるからね」と言ったら、魔法はないと思うけどココアはほしいと言う。
飲んだ後で目を丸くして「ほんとだった。おかあさん、魔法、ほんとだったよ」