プリスティナ・アーマタは非常に興味深いよ。このミミズは2013年に見つかり、その時も別のウツボカズラの捕虫器官の中から見つかったよ。この事は、プリスティナ・アーマタは捕食対象ではなく、むしろ捕虫器官に落ちてきた獲物を横取りする、ウツボカズラに特化した生態を持つとも考えられているよ。
また興味深い事に、いくつかの甲虫の他、チビカ属やアカイエカ属などの蚊の仲間の幼虫、いくつかの線虫の仲間、そして2013年に発見されたばかりの、体長1mm未満の非常に小さなミミズであるプリスティナ・アーマタ (𝑃𝑟𝑖𝑠𝑡𝑖𝑛𝑎 𝑎𝑟𝑚𝑎𝑡𝑎) が6個体見つかったよ。
地下の捕虫器官では、フタフシアリ亜科やササラダニ科の仲間が非常に多く見つかったよ。フタフシアリ亜科は、過去の報告でウツボカズラに関連している事が多いシリアゲアリ属の仲間であると推定されたよ、一方で地上ではそもそも捕獲数が少なく、最も多く見つかったのはトゲアリ属の仲間だったよ。
ネペンテス・プディカの捕虫器官の中身ももちろん調査されたよ。地中の木の根の空洞の中に発達した5つの捕虫器官と、地上2mに生えていた1つの捕虫器官を調査し、40の異なる分類群に属する1785の無脊椎動物を同定する事ができたよ。そして予想通り、地下と地上では捕獲している生物が違ったよ。
ウツボカズラの捕虫器官が葉っぱの変形であるように、他のウツボカズラは多少なりとも緑色を帯びていて、葉緑素を持たない栗色の部分とまだらになっているものが多いよ。ところがネペンテス・プディカは地中に捕虫器官を作るので葉緑素を完全に欠き、外側は栗色、内側は白色をしているよ!
ウツボカズラのような重力式トラップを持つ食虫植物が、このように地中にトラップを作る生態を持つものは初めての発見だよ!研究チームは新種として、名前をラテン語のpudicus (恥ずかしがり屋) を意味する種小名を付け「ネペンテス・プディカ (𝑁𝑒𝑝𝑒𝑛𝑡ℎ𝑒𝑠 𝑝𝑢𝑑𝑖𝑐𝑎)」と記載したよ。
この行動が思わぬ発見に繋がったよ!苔のマットを剥がしたところ、完全に地中に埋まった、最大11cmにもなる捕虫器官がいくつも見つかったんだよ!つまりこのウツボカズラは、栄養不足でも進化でもなく、地中に捕虫器官を発達させるようになった、と言う事だよ!
ところが調査を続けると、こんな風に全体の大きさに対して捕虫器官の数が少ないものが見つかったよ。そこで別の考えとして、食虫植物が食虫を辞める進化をした、とも考えたよ。これは他の食虫植物でも観られる傾向だよ。そこでとりあえず写真を撮る事とし、邪魔な苔のマットを剝がしたよ。
2012年、この地域を調査中に「ウツボカズラ」を見つけたよ。ウツボカズラは葉っぱが変形した、袋状の捕虫器官を持っているよ。内側は滑りやすく、虫などが落ちると這い上がれないよ。中には水が入っているけど、わずかに消化液も含まれていて、溺死した獲物を少しずつ消化するよ。
ウツボカズラの捕虫器官は元が葉っぱである以上、普通は空中に生えるよ。ただ、この調査で発見したウツボカズラは、空中に生えているものが2個、地上付近に数個と、地中に半分埋まっているものが1個あったよ。当初は捕虫器官の数が少ないため、栄養不足で育ちが悪すぎただけの個体と考えられたよ。
パラツキー大学などの研究チームは、この空白地帯に大きく進出した食虫植物を発見したよ!場所はカリマンタン島 (ボルネオ島) のインドネシア側北部地域にある熱帯雨林の、標高1100mから1300mの山岳地域だよ。この場所は調査がほとんど進んでいない一方、伐採や農地開拓で危機的な状況だよ。
フィルコクシア属の捕虫器官は半地下的で、地面から少し露出しており、葉緑素もあるよ。ゲンリセア属とタヌキモ属の捕虫器官は完全に地中にあるものの、捕獲できるのは線虫などの極めて小さいサイズの生物を対象としているよ。やはり地下というのは食虫植物が進出しにくいのかな?
ただ、食虫植物は地表や水域に進出しているものもいる中で、地中に進出した例は非常に数が少ないよ。これまでに確認されているのは「ゲンリセア属 (𝐺𝑒𝑛𝑙𝑖𝑠𝑒𝑎)」、「フィルコクシア属 (𝑃ℎ𝑖𝑙𝑐𝑜𝑥𝑖𝑎)」、「タヌキモ属 (𝑈𝑡𝑟𝑖𝑐𝑢𝑙𝑎𝑟𝑖𝑎)」の仲間だけだよ。
数ある植物の中でも、「食虫植物」はその奇妙さで知られているよね。土壌の栄養素が不足しているなどの理由で、食虫植物は捕虫器官と呼ばれるものを発達させ、昆虫やプランクトン、時には他の小動物すら捕獲し、栄養源とするよ!その捕獲方法や形態は多種多様で、世界中に見られるよ。
[ニュースのポイント] ○食虫植物の中で、地中にトラップを作るのは非常に少なく、昨日も限定されているよ。 ○今回、地中にトラップを作るウツボカズラの新種「ネペンテス・プディカ」が記載されたよ! ○地中に重力式トラップを作り、地中の生物を捕獲している証拠がある初の食虫植物だよ!
[原著論文] Martin Dančák, et al. "First record of functional underground traps in a pitcher plant: 𝑁𝑒𝑝𝑒𝑛𝑡ℎ𝑒𝑠 𝑝𝑢𝑑𝑖𝑐𝑎 (Nepenthaceae), a new species from North Kalimantan, Borneo". PhytoKeys, 2022; 201, 77. DOI: 10.3897/phytokeys.201.82872 phytokeys.pensoft.net/article/82872/…
ウツボカズラの新種「ネペンテス・プディカ」が発見されたよ。普通のウツボカズラとは違い、完全に地中に埋まった捕虫器官を形成するのが特徴で、地中に重力式トラップを作る食虫植物として、また初めて地中の生物を捕食している事が確認された食虫植物だよ!リプで解説するね!
水素とヘリウムの濃い大気を持つ岩石惑星は、恒星の光が無くても地熱と温室効果だけで表面に液体の水を持つ可能性がある事がわかったよ!リプで解説するね! Marit Mol Lous, et al. "Potential long-term habitable conditions on planets with primordial H–He atmospheres". Nat. Astron., 2022.
放線菌を培養し、シクロプロパンを多数含む分子「フューリマイシン」を生合成させることに成功したよ。高性能な燃料を低コストで合成してくれるかもしれないよ!リプで解説するね! Pablo Cruz-Morales, et al. "Biosynthesis of polycyclopropanated high energy biofuels". Joule, 2022.
真核生物の祖先とも言われる「アスガルド古細菌」のゲノム解析で、過去に感染した履歴を示す6つのウイルスゲノムを発見したよ。リプで解説するね! Ian M. Rambo, et al. "Genomes of six viruses that infect Asgard archaea from deep-sea sediments". Nat. Microbiol., 2022; 7, 953-961.
塩 (えん) がVOC (揮発性有機化合物) によって潮解する「有機潮解」という現象が発見されたよ!有害なVOCの回収に応用できるかもだよ。リプで解説するね! Kazuyuki Ishii, et al. "Organic deliquescence: organic vapor-induced dissolution of molecular salts". RSC Adv., 2022;12, 18307-18310.
塩素は常温では気体だけど、加圧すれば簡単に液体になるから、冷やさなくても加圧タンクで運べるのよね。だからタンクが破れれば一気に気化して体積が急膨張、大変な事態に………がヨルダン・アカバ港の事故なんだよ。
塩素は視覚的に見えるから余計に怖いのよ……… twitter.com/ReutersJapan/s…
エヴロン遺跡の石器や骨から、高温に晒された痕跡が深層学習により見つかったよ。もし人類による火の使用なら、80万年前と最も古い記録になるよ!リプで解説するね! Zane Stepka, et al. "Hidden signatures of early fire at Evron Quarry (1.0 to 0.8 Mya)". PNAS, 2022; 119 (25) e2123439119.
【ちょこっと解説】 カメは環境次第で老化が極端に遅くなることが観察されたよ。老化のメカニズム解明のヒントになるかもだよ。 Rita da Silva, et al. "Slow and negligible senescence among testudines challenges evolutionary theories of senescence". Science, 2022; 376 (6660) 1466-1470.